た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

地平線

2005年08月20日 | Weblog
その地平線は光でできていた。

目もくらむほどの。

大地も 空も 透明の冷たく青い闇であった。

ただ地平線だけが。

遥かに、くっきりと、次なる時代のように眩しく。

───何事モ一見ヲ以ッテ信ジテハナラナイ。

私は目を凝らした。

光と思ったものは豚であった。

豚であった。

光る豚が長い隊列を成して行進していた。地平線は無数の豚であった。

「あの涯に」

先生は渋茶を啜った。「解決されない明治がある」

哄笑! 哄笑! 私は哄笑し、ちぎれるほどに下唇を噛んだ。

誤解していたのだ。ずっと。私は。

箸の持ち方さえ覚えれば
何でも食べられるのだと
誤解していたあの頃のように。

コメント (2)
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