新しい仕事場のペンキ塗りをする。人に頼む余裕がないから自分でペンキを買って塗る。ペンキ塗りは自分で言うのもなんだが相当に下手くそである。小中学校の水彩画のころから、自分は塗るという作業が救いようもなく下手なのだなあと思っていた。ムラが出るのである。線描はそこそこ自信があるだけに、いつも彩色の段階で絵を駄目にするのが悔しかった。
それでも今回は、わが仕事場でありわが城となる場所のペンキ塗りなのだから、気合が入った。わずか壁一面分を、三時間ばかりかけて、何度も何度も塗り直した。塗り下手自認派が初めて挑戦した壁塗りにしては、そこそこの仕上がりだと満足している。
新しく何か歩み始めるときは、新しい呼吸の仕方をしなくてはいけない。何となくそう思う。深く、しっかり、息を吸い込まないといけない。そう思いながら、『八時だよ全員集合』の終盤並みにどたばたした日常の中で(懐かしいなあ)、息継ぐ間もなく日々を過ごしていた。ローラーを置き、そこそこ綺麗になった壁と、まだ何も備品の入っていないがらんどうの空間を眺め回しながら、私はようやくまだ浅めではあるが長い吐息を一つ吐いた。
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