た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

残暑一人旅③

2015年08月26日 | essay
 大鹿歌舞伎の舞台となる大碩神社を見る。

 思ったよりもこじんまりした境内に、雨戸をしめ切った舞台があった。

 何となく、これを見たかったのだ。兵どもが夢の跡ではないが、派手な衣装に大見得、喝采、飛び交うおひねり・・・。実際の上演を目にしたことはないが、その盛り上がりと賑わいはニュースなどで聞き知っている。年に一度(もう一度は別な神社を舞台とする)の村人たちの夢の跡の、その日常の姿を見てみたかったのだ。

 屋外に石を敷き並べただけの客席にごろんと横になってみる。大樹を縫って届く風が心地よい。目を閉じれば、雨戸が開き、拍子木が鳴り、人々のざわめきが聞こえ始める。よっ、待ってました! 日本一!────これだ。これを見たかったのだ。

 うつ、としたと思ったら、一時間ばかりが経っていた。背中や尻を払い、神社を後にする。

 『大鹿村騒動記』という映画がある。前々から気になっていたが、ここに来た後に借りて観ようと思っていた。実際そうしようと思う。その楽しみも増えた。

 さて、まだ日は高い。大鹿村もなかなかに暑い。これからどうしよう。

(つづく)
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