た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

小雨(二杯目)

2005年10月04日 | 寄席
 また景気の悪い名前をつけたもんだと思いながら、ちょうど小雨の降る晩ってこともありましたし、何やら心ひかれて、冒険嫌いの私が冒険心を起こして、店のドアを押したんでございます。へへ、私事で恐縮ですが、ちょうど女房と私のやりくりのことで大喧嘩して、まあ私の酒が過ぎるだの、月給を考えて飲めだの、あんまりうるさいんで私が灰皿を叩き割ってやったら女房のやつ、泣きながら離縁の話を持ち出しやがって、それで余計に頭に来て私から家を飛び出したと、まあ打ち明けちまえばそういう晩でしたんで、それも私を大胆にした遠因だったんでしょうなあ。へへ。性の悪い日にゃ性の悪いことが起こります。
 樫かなんかでできてんのか、やたら重い木造りのドアを押し開けますてぇと、中には四十代くらいの細面の綺麗なママさんが一人でいらっしゃいました。「小雨」さんです。ええ、「小雨」ってのはママさんの名前だったんでございますよ。(つづく)
 
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