た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

小雨《10月6日改訂版》(一杯目)

2005年10月04日 | 寄席
 えー、お耳汚しな身上話ってところを一席。
 「雨の日は雨を楽しむ簾かな」ってな句をどなたさんかお作りなすったのを拝見したことがございますが、いい句でございますね、あの晩は珍しい小雨の晩でして、何しろ年中乾燥したこの街には小雨も慈雨と思えるわけでして、ひょいと時間のできたのを幸い、傘も差さずに街をぶらついたわけでございます。
 秋口でしたから、秋雨、といったところだったんでしょうなあ、しばらくひと気のない交差点でじっとたたずまないと、降ってる雨脚にも気づかないような、そんな気持ちのよい霧雨でございました。
 元来が私は、冒険てなもんにおくてな方でありまして、とくに金のかかる冒険には金をかけたくないという根っからの貧乏根性でありまして、スナックなんぞというお絞り突き出し付き一杯何千円という所にはもう、会社の金か取引先の金でない限り足を踏み入れたことがなかったんでございますが、ちょうどその晩、小雨の降る夜の街の橋のたもとで、私は見つけたんでございます。「小雨」という名の看板を上げたスナックを。(つづく)
 
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 小雨(二杯目) | トップ | 鳥と雲と夕暮れ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

寄席」カテゴリの最新記事