ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

三丁目の夕日

2007年11月24日 | 映画


映画「三丁目の夕日」は人気ある。
撮った監督は知らなかったが、地元の番組に出ていて、
同じ長野県の出身だということを初めて知った。
年代的にはこの監督が、映画の中の時代を体験してい
るわけではないが、あの時代の雰囲気を良くつかんで
いる、ということなのであろう。
リアルタイムで体験している、所謂団塊世代が、涙を
流し懐かしむのが、あの時代なのだ、多分。

この前テレビでやっていたのをチラッと見たが、個人
的にはこの手の映画は全く興味をもてない。
あの頃は良かったなあ、とどっぷり感傷に更けりたい
ものだが、そうできないから困ったものである。
つくづく損な性格だと思う。
まず映画としてみた場合、こちらの基準でいくと(見
てもないが想像)、ちょっと良い話のほろっとさせる
ハートウォーミングな話のそれ以上でもなくそれ以下
でもないという、その他大勢の映画という評価となる。
全体を、茶色っぽい画面にし、レトロ感を演出してい
るが、それだけなのである。
こういう世界はそもそも受け易い。
失われた共同体(家族、隣近所)に対しては、誰もが
惹かれるものだ。
郷愁を誘う典型的映画。
貧しくても、心は豊かだった、と。
実際は、貧しい故に、心が歪んでいたとしてもだ。

全ては過去のもので、理想化されるのがこの手のもの。
基本的に記憶は美化される(厭なことは忘れるので)。
人間というのは、ユートピアがあったかのような錯覚
を持ちたいものなのか。
過去の共同体は、平均的に貧しかったので、自然と助
け合う気持ちも醸成された。
今でも海外の貧しい地域に日本のその頃が残っていた
りして、旅行者が、ここには日本が忘れた大事なもの
があるなどという感想を持つ。
旅の魅力か。
確かにその通りだと思うが、その平均的貧しさの均衡
が崩れると、嫉妬などの感情も生まれ、共同体そのも
のもが変質するのは、これまた普通に見られることだ。
そして大体そういう方向に向かう。
市場原理に基づいて変質していくのが殆どだ。

結局、この映画は、そんな今の世界にちょっと嫌気を
感じる人間の、過去に対する郷愁を心地よく刺激する
良く出来た映画ということになる。
娯楽作品としてはそれで充分とも言えるが、まあ始め
に言ったように、個人的には、どうもねえということ
だなのだ。
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