今ひとつ覚えの悪い映画好きのBが、ミシュランがどう
のこうのというので、貧乏人には関係ないことだから
どうでも良いことであろう、と私は言った。
Bは素直に納得した。
しかし、こんなところでも話題となるミシュランとは、
一体何者か。
と、そんなことはもうすでに充分知られている事なの
で、もう良いが、このところ好きな女性ヴォーカルの
話題で私的に盛り上がっているところなので、Bにも
聞いてみることにした。
「そうですね...」(B)
「...が長いよ、だから誰?」(私)
「そう言えば、僕も、ハスキー系が好きかも知れない
です」(B)
「かもしれないって、自分の事だろう、だから誰よ?」(私)
「ええとですね、まず<スザンヌ.ベガ>?」(B)
「?はいらないだろう、他は?」(私)
「<シャーデー>?も好きです」(B)
「だから、?はいらないよ、自分の好みなんだから自信
を持って言えば良いじゃないの」(私)
「どうも馬鹿にされるんじゃないかと、それを恐れて
いるんですよ」(B)
「確かに、馬鹿にするのは悪い癖ではあるが、これは
好みの話だから、こっちだって<キキ.ディー>とか
挙げてるわけだし」(私)
「その点は渋谷陽一を参考にしてるので、ある程度は
確かなものとは思ってたんですがね」(B)
「じゃあ、尚更自信を持てばいいことだろう」(私)
「では、自信を持って<ジョニ.ミッチェル>も」(B)
「ふむふむ、全体的に言って、こっちの<キキ.ディー>
より本格的な感じだね、渋いよ」(私)
「それと一番好きなのは<リッキー.リー.ジョーンズ>
です」(B)
「名前だけは知ってるけど、そもそも<リッキー.リー.
ジョーンズ>って女性なの?」(私)
「そうですよ、知らなかったんですか?」(B)
「ずっと男で、しかもロックンロールかなにかをやっ
てる人だと思ってたよ」(私)
「そんなのも知らなかったんですか」(B)
「いやあ、これじゃあこっちが馬鹿にされる番だわ」(私)
「全体では、ハスキー系でちょっと影がある、といった
ところか」(私)
「でも、あの目が見えなくなる歌手は好きではないです
よ」(B)
「えっ...、ああアイスランドの歌姫、子供の時に
日本人ってあだ名がついた、ええっと名前が出てこな
い、映画で目が見えなくなるやつね、監督が<ラースフォ
ン.トリアー>で、駄目だ映画のタイトルも出てこな
い」(私)
「何て言いましたっけ」(B)
最近、頻繁に起こるケース。
当然のこと、今ひとつ物覚えの悪いBは思い出せない。
仕方ないので、監督で調べ、映画のタイトルは「ダンサー.
イン.ザ.ダーク」で、歌手は「ビヨーク」である事が
判明した。
「そうそう<ビヨーク>ですよ」(B)
「あそこまで重いと駄目ってことか?」(私)
「そうなんですよ」(B)
「まあ、それも判る気はするが」(私)