深夜、何気なくテレビを付けると、いやに深刻そうな
映画をやっていた。
風景も寒そうで、全体のトーンがかなり暗い。
登場人物も、哀しみを湛えてあまり表情がない。
直ぐに「ベルイマン」の映画だとわかった。
そう言えば、NHKで特集していたことを思い出した。
「イングマル.ベルイマン」、正直なところ、ちょっと
深刻すぎて好きではない。
深夜にこんな映画を見ると、どんどん精神の闇に落ち
ていくのではないかと思えてくる。
つい、今日本で何人がこれを見ているのだろうと想像
してしまった。
「叫びとささやき」という彼の代表作なのだが、同じ
北欧の監督「カウリスマキ」の作品と比べるとトーン
は同じだがテイストは対照的だ。
「カウリスマキ」にはユーモアがあるので、深刻な状
況でもどこかとぼけていて脱力できる。
一方「ベルイマン」は、どこまでも真面目で、息を抜
けない。
しかもテーマがはっきりしていて、「孤独」や「家族の
崩壊」を正面から描く。
計算されつくされた破綻のない映像という感じだ。
そこが魅力でもあるのだろうが、こちらとしては
それこそが面白くない。
少々破綻があった方が、思わぬイメージを想起させた
りして刺激的なのだ。
計算外の出来事の方が、魅力的だ。
そして今回見ていて思ったのは、手法が演劇的である
ということ。
舞台の芝居のような演出が多いのだ。
たとえば、ちょっと大袈裟な身振りなど。
感情表現というものかもしれないが、好きではない。
演劇は好きではないので、結局はその好みが出ただけ
とも言えるが、そういうものだからしょうがない。
見たといっても、実は最後の十五分くらいで、これで
は見たと言えないかもしれないが、こちらにとっては
このくらいがちょうどであった。
過去に三作見ていて、この監督のテイストはわかって
いるつもりだったので。
そういえば、北欧には「イプセン」という作家もいた。
共通の演劇的な土壌というものがあるのだろうか。
あと「叫びとささやき」というタイトルから、ムンク
を連想してしまうのも、ちょっとステレオタイプ的か。