経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

またしても 補助金の線状降水帯

2024-06-25 07:11:19 | 物価
◇ 岸田首相の近視眼は治らない = 岸田首相は21日夜の記者会見で、緊急の物価対策と新たな生活支援対策を実施すると発表した。物価対策としては、電気・ガス料金の追加軽減策を8月から3か月間。ガソリン代の補助も12月まで継続する。また生活支援対策は年金世帯や低所得世帯を対象に、新たな給付金の支給を検討するという内容。わざわざ記者会見で自ら発表したのは、これで内閣支持率を少しでも上げたいという思惑がありあり。しかし、これで人気は上昇するだろうか。

電気・ガス料金の軽減策は、国際的にエネルギー価格が高騰したことを受けて、23年1月から実施された。標準的な家庭で、月3700円程度の負担減になったと試算されている。だが、この軽減策はことし5月の使用分で終了。消費者物価のうちの電気代をみると、5月は14.7%、1年4か月ぶりの上昇となった。軽減策がなければ、今後も上昇は避けられない。そこで、とりあえず猛暑の3か月間だけ軽減策を復活することになった。

ガソリン代金に対する補助金は、22年1月に開始。輸入エネルギーの高騰などでガソリンの小売り価格が1リットル=175円を超えそうになると、政府が元売り会社に補助金を支給して価格を抑える仕組み。何度となく延長されて今日に至っているが、また12月まで延長することになった。すでに6兆円もの税金をつぎ込んでおり、脱炭素の方向とは全く矛盾するという批判も強い。

補助金や給付金は、目の前の物価高や生活苦を軽減させるための一時的な措置にすぎない。ところが岸田首相は、この補助金というバラマキが大好きだ。その半面、将来を見据える目は常にぼやけている。その好例は、同じ日に政府が閣議決定した「骨太の方針」にある「国と地方の基礎的財政収支を25年度に黒字化する」という目標。だれもこんなことが出来るとは思っていない。岸田さんは近くばかり見ていて、遠くが見えない。だから将来に対する国民の不安が消えず、支持率も上がらない。

        ≪25日の日経平均 = 上げ +368.50円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2024-06-24 07:32:58 | 株価
◇ 利下げ期待と‟半導体”で粘る株価 = ダウ平均は先週561ドルの値上がり。4営業日連続の上昇で、終り値は3万9150ドルに。5月の消費者物価と卸売り物価がともに予想を下回る上昇、さらに小売り売上高も伸びが目立って鈍化した。物価高で消費者が節約に走り、小売店は値下げしたところも多く売り上げが減少した。市場では、これで利下げが早まるとの期待が株価を下支え、加えて絶好調の半導体関連銘柄が全体を押し上げた。18日にはSP500とナスダックが、史上最高値を更新している。

日経平均は先週218円の値下がり。終り値は3万8596円に。5月に入ってからは、ほぼ3万8000円台で推移している。17日は一時800円以上も下げた。ヨーロッパの政治情勢を不安視したためと解説されたが、この見方はややうがちすぎ。日銀の金融政策に関する不透明感を嫌気したという説の方が、もっともらしい。いずれにしても、東京市場の弱気ムードを反映している。

ニューヨークの株価は、利下げ期待と半導体で底堅い。しかし物価高→節約志向→値下げ→売り上げ減少の動きが鮮明になってくると、利上げ期待にばかりしがみ付いてもいられない。やはり上値は重たくなってきているのではないか。東京市場は都知事選を皮切りに政治の季節に入る。いつもだと財政支出を期待して株価は上がりやすいが、今回はどうだろう。円相場は160円に達しそうだし、あまり明るい局面がやって来る感じはない。

今週は25日に、5月の企業向けサービス価格。27日に、5月の商業動態統計。28日に、5月の労働力調査、鉱工業生産、6月の東京都区部・消費者物価。アメリカでは25日に、4月のFHFA住宅価格指数、6月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。26日に、5月の新築住宅販売。27日に、1-3月期のGDP確定値、5月の中古住宅販売。28日に、5月の個人消費支出が発表される。

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

切れたアキレス腱 : 中国の不動産業

2024-06-22 07:35:11 | 中国
◇ 主要68都市で住宅価格が下がる = 中国の不動産不況は、なかなか改善しない。改善どころか、やや悪化している面さえ見受けられる。たとえば政府の発表によると、この5月に新築住宅の価格が下落したのは主要70都市のうち68都市。3月の57都市、4月の64都市よりも拡大した。統計局の発表によると、5月の鉱工業生産は前年比5.6%増、小売り売上高は3.7%増と底入れの形。しかし新築住宅の面積は24%の減少で、景気の足を大きく引っ張っている。

政府も不動産対策には、かなり力を入れてきた。ことし2月には1兆元の財政支出、住宅ローン金利も引き下げた。また5月には、地方政府が売れ残った住宅を買い取るという思い切った対策も打ち出している。だが効果はあまりない。建設会社の倒産は防げたが、住宅の需給関係は少しも改善されなかったからである。新築住宅の在庫面積は、5月末で前年比25%の増加だった。

中国の不動産業は、GDPの2割以上を占める。鉄鋼や建築材料、セメントなど関連する産業も幅広い。いま中国では、こうした産業が厳しい状態に置かれている。また地方銀行の不動産融資にからんだ不良債権も、急増しているとみられている。習近平政権が最も心配しているのは、失業者の増大。とくに若者の失業者が多く、政府は若年層の失業率の発表を停止したほどだ。

自動車や太陽光パネル、電子製品や鉄鋼。こうした産業も増産していないと、失業者が増えてしまう。そして過剰に生産した製品を安値で輸出。中国の過剰生産が、G7(主要7か国)会議でも問題になった。だが、その中国も不動産だけは輸出できない。そのため中国経済のアキレス腱となっている。7月に開く中央委員会で、中国は中長期的な経済政策を決定する予定だが、不動産不況に対して新しい手を打ち出すのかどうか。

        ≪21日の日経平均 = 下げ -36.55円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】 

外国人は 働きに来てくれるのか? (下)

2024-06-21 07:32:26 | 人手不足
◇ 韓国や台湾との奪い合いに勝てるか = 厚生労働省の集計によると、23年10月末時点で日本で働く外国人は204万8675人。前年より22万人増えた。出身地をみると、ベトナムが全体の25%を占めて最多。続いて中国、フィリピン、ネパールの順となっている。また働いている分野は製造業が55万人で最多、続いてサービス業、卸・小売業の順となっている。200万人を超えたのだから、ずいぶん多くなったという感じは否定できない。

だが現実問題としてみると、この程度の外国人ではとても足りない。内閣府によると、日本の生産年齢人口(15-64歳)は1995年の8700万人が過去最大だった。それが65年には4500万人にまで減少するという。もちろんIT・ロボット化などによる省力化も進むだろうが、その差を埋めることは容易ではない。計算上から言えば、外国人を1000万人単位で誘致しなければならないだろう。

ところが韓国や台湾、あるいはオーストラリアやシンガポールも、人手不足で苦しんでいる。このため、これらの国・地域は東南アジアの若手労働力を招聘するための対策を講じ始めた。要するに、東南アジアの若手を奪い合う競争が始まったのである。この競争に勝てなければ、日本に来て働いてはくれない。果たして勝ち目はあるのだろうか。

たとえば1人当たりGDPを比べると、日本と韓国、台湾はほぼ一線。また外国人労働者の平均時給をみても、韓国は東京・大阪の最低賃金並み。東南アジアの若者からみれば、甲乙を付けがたい。そんななかで円安は、仕送りの段階で金額が目減りしてしまうから
大きなマイナス要因となっている。あとは賃上げと労働環境の改善などで、日本へ行きたい若者を増やすしかない。

        ≪20日の日経平均 = 上げ +62.26円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

外国人は 働きに来てくれるのか? (上)

2024-06-20 07:22:48 | 人手不足
◇ 受け入れ制度は改善したけれど = 少子高齢化の急速な進行で、日本は恒常的な人手不足の状態に陥る。だから外国人労働力に頼らざるをえない。そこで政府は外国人労働者の受け入れ制度を、大幅に改善した。その目玉は「育成就労制度」の新設。技能を持たない未熟練の外国人でも受け入れて育成し、技能を積めば「特定技能」に移行して最終的には永住できる道も開いた。関連法案が14日の国会で成立、27年までに運用を開始する。

「特定技能」制度についても、内容を拡充した。この制度は、一定の技能を持つ外国人を受け入れる在留資格だ。いま、この資格で働いている外国人は約20万人。これを28年度までに82万人に増大、対象とする分野も12から16に拡大した。未熟練の若い外国人を「育成就労」で受け入れ、3年間の勉強で一定の技能を身に着ける。そこからは「特定技能」で、さらなる定着を目指すコースも提供するわけだ。

日本で働く外国人は08年には50万人足らずだったが、23年には200万人を突破した。その中心となったのは「技能実習制度」による実習生で、ことし3月末には41万2000人を数えている。ただし、この制度は全く評判が悪かった。「日本で習得した技能を母国に持ち帰ること」を目標にしながら、実は単純労働でこき使う。極悪の労働環境から逃れようとしても、転職ができない。だから多くの実習生が逃げ出して、行方不明となった。

この「技能実習制度」を廃止するだけでも、大きな改善と言えるだろう。ただ、これで東南アジアの若者が日本を目指して働きに来るようになるとは限らない。韓国や台湾、さらにオーストラリアやシンガポールなども人手不足で、若い労働力の流入に力を入れ始めたからである。たとえば最低賃金をみても、台湾や韓国は日本の水準をやや上回ってきた。さらに円安が、日本で働くことを不利にしている。見通しは必ずしも明るいとは言えない。

                     (続きは明日)

        ≪19日の日経平均 = 上げ +88.65円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

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