経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

ちっちゃいなあ! 所得倍増計画

2022-09-30 07:30:35 | なし
◇ 岸田さん、NISAの恒久化だけですか? = 岸田首相は先週、ニューヨーク証券取引所で講演。そのなかで「11月には外国人観光客のビザなし入国を認める」「NISA(少額投資非課税制度)の恒久化を検討する」の2点を挙げ、「確信をもって日本に投資してほしい」と力説した。しかし水際対策の撤廃は欧米諸国が先行しているから当然のこと、NISAの恒久化は話が小さすぎ。アメリカの投資家たちは、ほとんど聞き流してしまったようだ。

NISAというのは、個人の貯蓄を投資に向けさせるため14年に創設された優遇制度。しかし限度額や期限などが複雑になって、利用しにくくなったという声が強い。ことし3月末時点で1700万件、金額にして27兆円の投資額だ。この期限を取り払い制度を恒久化するというのが、岸田首相の発想。そのこと自体は、歓迎すべきだろう。

日銀の集計によると、個人の金融資産は6月末時点で2007兆円。そのうち現金・預金は1102兆円で、全体の55%を占める。株式投資は投資信託を含めても280兆円に満たない。NISAの恒久化はいいことに違いないが、これで個人の投資がいくら増えるのだろう。どうもケタが違うようだ。岸田首相が言い出した‟所得倍増計画”とは、こんなものなのですかと言いたくなる。

ニューヨークでの演説で、岸田首相は‟新しい資本主義”についても触れている。だが、この程度の説明で理解できた聴衆がいたとは思えない。岸田さんは来週4日で、就任1年を迎える。しかし‟新しい資本主義”は、この1年間言いっ放し。全く進展がなかった。国民は「スローガンだけで中身がない人」だと思い始めている。それが内閣支持率を下げている最大の原因だ、と知るべし。

        ≪29日の日経平均 = 上げ +248.07円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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物価が上がると 極右が伸びる

2022-09-29 08:00:39 | 政治
◇ イタリアで女性の‟自国優先”首相が誕生へ = イタリアの総選挙で、極右政党のFDI(イタリアの同胞)が圧勝。保守系の2党と連立して、FDI党首のジョルジャ・メローニさんが初の女性首相に選出される見通しとなった。FDIはムッソリーニの流れをくむ超保守政党。EUに対しては懐疑的な姿勢で、移民の受け入れには反対、同性愛も認めない。ロシアに対する制裁やEUの財政・金融政策に関して、波乱要因となる可能性も心配されている。

メローニ女史は1977年、ローマ生まれ。学生時代から、極右の政治活動に没頭した。しかし選挙中は、そのイメージを薄めようと努力している。またイタリアでは親EU派のマッタレッラ大統領が閣僚任命の拒否権を持っているので、政権が極右一色になる可能性は小さい。しかしメローニ内閣が‟自国優先”を主張することは必至で、イタリアでは「女トランプが出現した」と囁かれている。

前回18年の選挙では4%の得票率だったFDIが、今回は26%の票を獲得した。メローニ女史は選挙中、小規模事業者への減税・最低賃金の引き上げ・保育所の無償化・子ども手当の増額などを公約。これが選挙民の心を捉えたと考えられる。しかし、その背景には8%を超える物価高と経済の現状に対する国民の不満の鬱積があった。

ヨーロッパでは11日のスウェーデン選挙で、極右の民主党が第2党に躍進した。また6月のフランス選挙では、ルペン党首の極右政党が第3党に進出。スペインでも極右政党が票を集めた。いずれも現政権に対する批判の裏返し。その最大の原因は、インフレによる生活苦だと分析されている。物価が上がれば現政権の支持率が下がり、ポピュリズムの極右政党が勝つ。世界的な政治の法則となりつつあるようだ。

        ≪28日の日経平均 = 下げ -397.89円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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錆びた 宝刀 : 政府の為替介入 (下)

2022-09-28 07:48:40 | 円相場
◇ 政府側の最大の弱点は論理的な矛盾 = いまアメリカはインフレ退治に懸命となっている。このためドル安を志向する協調介入はできず、日本政府の単独介入になってしまった。これでは伝家の宝刀も、切れ味は鈍る。さらに介入の原資となる外貨準備の大半はアメリカ国債。これを売ればアメリカの金利が上がってしまうから、売るわけにはいかない。すぐに転用できるのは、外貨預金など1400億ドル程度に限られる。

BIS(国際決済銀行)の調査によると、東京外国為替市場では1日平均3800億ドル程度の取り引きが行われている。取り引きの大半は貿易や投資に伴う実需だが、そこに投機筋の円売りが乗っかってくる。投機筋の出方にもよるが、ここでドルを売って相場を動かすのには相当のドル資金が必要なことは明らかだ。

日本政府にとって最大の弱点は、介入が抱える論理的な矛盾だろう。円安の進行は許容できないから、介入する。だが円安そのものを許容しているのは、日銀のゼロ金利政策である。政府・日銀は「急激な円安は許せない」と弁明するが、緩やかな円安なら認めるのか。どうしても論理に矛盾がある。投機筋が頼りにしているのも、この矛盾の論理崩壊だ。

円相場が145円に近づくと、政府は再び宝刀を振りかざす。投機筋はいったん退いて、また攻め戻す。こんな展開が数週間は続くのではないか。そのうちに介入の原資が枯渇するか、それとも投機筋が諦めるか。結果を予測することは不可能だ。それにしても、日銀がゼロ金利政策への固執を止めれば、問題はすぐに解決するのだが。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +140.32円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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錆びた 宝刀 : 政府の為替介入 (上)

2022-09-27 07:43:38 | 円相場
◇ 群がる投機筋をぶった切れるのか = 政府は先週22日の夕方、円買い・ドル売りの為替介入を断行した。FRBが政策金利の引き上げを決めたために日米間の金利差が拡大、円の対ドル相場が146円前後にまで下落したためである。為替介入は1998年以来24年ぶりのこと。市場では円相場が、すぐに5円ほど上昇した。鈴木財務相は「投機による過度な変動は見逃せない」と説明している。

一部のマスコミは「政府が伝家の宝刀を抜いた」と書いているが、鈴木財務相も言うようにその相手は投機筋。これからしばらくは、切るか切られるかの死闘が続く。ひとくちに投機筋と言っても、その内容は千差万別。一日で何十億ドルを使うファンドもあれば、円を売ってドル預金に乗り換える日本の主婦もいる。だから、これらの投機筋が結集すると、資金力は膨大なものとなりかねない。

為替介入は政府が決定し、日銀が実際の売買を行う。ドル売りの原資は外貨準備だが、すぐに使える外貨預金は1361億ドル(19兆円)しかない。これで投機筋の円売り・ドル買いに立ち向かえるのか、いささか心許ない。しかも世界中を探しても、ゼロ金利政策に固執しているのは日本だけ。投機筋は、それだけマトを絞りやすくなっている。

その一方、介入に踏み切った政府の側には弱点も多い。まずアメリカとの協調介入ができなかったこと。アメリカはドル安になれば、インフレの促進要因になってしまうからだ。これで宝刀の切れ味は、半分以下に落ちてしまった。言うなれば、錆び付いた宝刀である。それでも振り上げられれば怖いから、円相場はいったん上昇した。だが投機筋もすぐに気を取り直し、今週明けには144円前後にまで売り返している。

                     (続きは明日)

        ≪26日の日経平均 = 下げ -722.28円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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今週のポイント

2022-09-26 07:47:30 | 株価
◇ ダウ平均はついに3万ドル割れ = ウオール街には夏の終わりどころか、一気に冬がやってきた。ダウ平均は先週1232ドルの値下がり。終り値は3か月ぶりに3万ドルを割り込んだ。年初からは6700ドルも下落したことになる。FRBが政策金利の0.75%引き上げを決定したことで、景気の先行きに対する警戒感が急激に拡大した。市場では「ことしはクリスマスも祝えそうにない」という悲観的な声も出始めている。

日経平均は先週414円の値下がり。この2週間の下げ幅は1000円を超えた。ただ終り値は2万7000円台をなんとか維持。年初来の下げ幅も1600円ほどにとどまっている。まだ出遅れ株に対する買い意欲が残っているようだ。しかし取り引きが終了した22日の夕方、政府はドル売り・円買いの為替介入に踏み切った。今週の市場は、これをどう評価するのか。

ニューヨーク市場は、政策金利の0.75%引き上げは十分に織り込んでいた。ところがパウエル議長は会見のなかで「軟着陸の可能性は小さい。景気後退がいつ始まり、どの程度の深さになるかは予測できない」と説明。この発言が冷水となったようだ。景気後退は必至と受け取られたわけで、この影響は尾を引くだろう。

今週は27日に、8月の企業向けサービス価格。30日に、8月の労働力調査、鉱工業生産、商業動態統計、住宅着工戸数、9月の消費動向調査。アメリカでは27日に、7月のFHFA住宅価格指数、8月の新築住宅販売、9月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。28日に、8月の中古住宅販売。29日に、4-6月期のGDP改定値。また中国が30日に、9月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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