経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

アジアに伝染した 通貨不安 (下)

2018-09-20 06:58:22 | アジア
◇ 中国への依存度を高めた東南アジア = ASEAN(東南アジア諸国連合)の発表によると、17年の加盟国による対中貿易額は4368億ドル(49兆円)だった。前年比で19%伸びており、10年前に比べると2.2倍に拡大している。輸出は25%増加したが、なかでもベトナムは60%の伸び。携帯電話部品は8.8倍も増えている。マレーシアやフィリピンからの電子部品輸出も大幅に増大した。

このように東南アジア諸国の多くが、いまや中国の部品生産工場になっている。このことが各国経済の基盤強化に貢献したことは確かだが、同時に中国経済の動向に左右される度合いも大きくなった。中国の国内需要が鈍化すれば、直ちに輸出は抑制される。また米中貿易戦争で、東南アジアの部品⇒中国での組み立て⇒アメリカへの輸出という道も閉ざされかねない。

その中国経済は、いま鈍化の傾向にある。1-8月間の固定資産投資額は前年比5.3%増加にまで縮小した。これは過去最低の伸び率である。その一方で小売り売上高は9%程度の伸び率を維持しているから、GDPが急減することは免れている。しかし成長率が低下しつつあることは否定できない。政府は景気対策を講じているが、効果が出るまでには時間がかかる。

アルゼンチンやブラジル、南アフリカなどの通貨不安は、アメリカの高金利によって惹き起こされた。しかし東南アジアの場合は、それに加えて中国の影が色濃く覆いかぶさる。そんなときトランプ大統領は、中国に対する制裁関税の第3弾を発表した。東南アジアにとっては、極端に悪いニュースだろう。

       ≪19日の日経平均 = 上げ +251.98円≫

       ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ

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アジアに伝染した 通貨不安 (上)

2018-09-19 07:27:28 | アジア
◇ インドネシア、フィリピンなどが苦境に = アメリカの長期金利が3%を超えると、新興国からの資金流出が一気に激しさを増した。アメリカの株式や債券が、安全に利回りを稼げる投資対象になったからである。資金が流出すると、その国の通貨は下落する。通貨が下落すると、輸入物価が上昇してインフレになりやすい。また対外債務の実質的な負担が増大する。そこで政府は金利を上げて通貨の下落を防ごうとするが、国内の景気は悪くなってしまう。

各国通貨の対ドル相場を年初比でみると、アルゼンチン・ペソが50%の下落で最も大きい。政策金利は60%に引き上げられ、IMF(国際通貨基金)にも2度目の支援を申し込んだ。次いでトルコ・リラが40%の下落。先週になってやっと金利を24%に上げ、現在は小康状態。あとブラジルや南アフリカ、それにロシアの通貨も大きく売られている。ロシアも先週、金利を7.5%に引き上げた。

こうした新興国の“通貨不安病”は、9月に入るとアジア地域にも伝染し始めた。インドネシア・ルピアは1998年以来、またフィリピン・ペソも05年以来の安値に落ち込んでいる。インド・ルピーは年初来11%の下落となった。ただ今回の“通貨不安病”を診断してみると、2つの大きな特徴を発見できる。

アジア諸国は10年前にも“通貨不安病”に感染した。だが当時に比べると各国の経済は抵抗力を増しており、たとえばタイやマレーシア、シンガポールなどはほとんど動揺していない。これが特徴の1つ。もう1つはアメリカの金利高がきっかけとなったことは確かだが、それ以上に中国経済の成長鈍化が強く影響していること。その意味では米中貿易戦争の行くえが、アジア諸国の将来を左右すると言えるだろう。

                             (続きは明日)

      ≪18日の日経平均 = 上げ +325.87円≫

      ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ≫             
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波状攻撃を受ける アジア経済 (下)

2018-07-11 07:54:27 | アジア
◇ 第2波、第3波が襲来する恐れ = 貿易戦争の影響を受けるのは、アジア諸国だけではない。だが、その影響度には格差がある。たとえばアメリカは、まだ実質的な影響を受けていない。景気の順調な拡大が続き、新興国からの逆流で資金も豊富だ。日本にも大きな影響は及んでいないが、アジア諸国との関係が深いだけに、警戒感はアメリカよりも強い。その結果は「ダウは強含み、日経平均は弱含み」と、市場にも表われている。

数か月もすると、アメリカや中国の貿易に変化が現われるだろう。輸出が減少して景気の足を引っ張るようになると、こんどは日本やアジア諸国の対米・対中輸出が伸び悩む。こうしてアジア経済には、悪影響の第2波が到達する。その段階では、日本も波をかぶることは避けられない。

さらにトランプ大統領は、中国からの輸入品160億ドル分に追加の高関税を発動するかもしれない。そうなれば中国も同等の報復関税をかけるだろう。そのうえトランプ大統領は、自動車の輸入関税を引き上げると示唆している。仮にそうなれば、アジア経済は第3波、第4波の悪影響を被ることになるわけだ。

トランプ大統領には「最初は強気に出て、あとは柔軟に対処するクセ」があるように見受けられる。だから貿易戦争も、早い時期に和解が成立しる可能性もないではない。ただ、そのチャンスは160億ドル分の追加関税を発動する前に限られるだろう。そうなることがきわめて望ましいが、その実現性は神のみぞ知る。

       ≪10日の日経平均 = 上げ +144.71円≫

       ≪11日の日経平均は? 予想 = 下げ

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波状攻撃を受ける アジア経済 (上)

2018-07-10 08:00:43 | アジア
◇ 第1波はダブル・パンチ = アジア経済が悲鳴を上げ始めた。アメリカの金利上昇と米中貿易戦争。このダブル・パンチを喰らって、ほとんどの国が通貨を防衛するため何回も利上げした。その結果、こんどは景気の下降と物価の上昇に警戒信号が点滅している。まだアルゼンチンのように債務不履行に陥った国はない。しかし時間の経過とともに、世界経済全体の停滞という第2波が襲ってくる可能性は否定できない。

アメリカの長期金利が3%に達したころから、新興国へ投資されていた資金がアメリカへ還流し始めた。特に直撃を受けたのは、銀行業や不動産業。それにドル建て債務が大きい企業だった。そこへ米中貿易戦争の打撃が加わる。主としてアメリカ向け輸出の比重が大きい中国企業、中国向け輸出の比重が大きいアジア各国の企業が影響を受けた。

日経新聞の調査によると、アジア各国に上場する主要325社のうち、株価が年初より下げたのは215社。たとえばアメリカ市場への参入を目指してきた中国の大手自動車メーカー、広州汽車集団は年初比4割を超す下落となっている。また世界最大の豚肉加工業の万州国際。アメリカ向け輸出が多い台湾の鴻海精密工業、韓国の現代自動車、インドのタタ自動車。それにドル債務が大きいマレーシアのエアアジアなどの株価も大幅に下げている。

実は2013年にも、アジア諸国は経済危機に見舞われた。中国の人民元切り下げとアメリカの利上げが、原因となっている。しかし、その当時と比べアジア各国の経済は格段に成長し、抵抗力も増大した。このため現状は、まだ耐え抜いていると言えるだろう。しかし世界経済全体の停滞という第2波、さらにトランプ大統領がちらつかせている自動車の輸入制限という第3波がやってきたとき、どういうことになるか。その予測は不明である。

                             (続きは明日)

       ≪9日の日経平均 = 上げ +264.04円≫

       ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ

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