経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

国が 及び腰では! : 原発政策 (下)

2024-01-05 07:41:54 | 原発
◇ 理念に欠ける政府の原発政策 = ウクライナ戦争がきっかけとなって、原油など燃料の国際価格が高騰した。このため日本の輸入価格も急騰、たとえば22年の鉱物性燃料の輸入額は33兆5000億円となっている。電気やガス、ガソリンの値段が上がり、個人や企業の負担が増大した。また貿易赤字が20兆円にのぼり、円安が進行。これも物価を押し上げ、個人や企業を苦しめている。

輸入燃料費の増加は、それだけ日本人の購買力が海外に流出したことを意味する。個人や企業が支払った燃料代金は、結局のところ産油国の収入となってしまう。仮に輸入代金が3分の2に減ったとすると、家計や企業の負担は11兆円も軽減される。その分が消費や投資に使われると、成長率がそれだけ上がり、景気がよくなるというわけだ。

輸入燃料費を減らす方法は節約を別とすれば、原子力か再生可能エネルギーを増やすしかない。政府も「30年度に原子力による発電を、全体の20-22%に増加させる」計画を策定している。ところが現在の比率は6.9%に過ぎず、計画の達成はきわめて難しそうだ。そんな状態のなかなので、柏崎刈羽原発6-7号機が動くことの意味は非常に大きい。

政府は原発について「最大限活用する」方針も決定している。だが、その意味は「原発を限りなく増やして行く」ことではなさそうだ。ドイツは原発の稼働をすべて停止したが、日本政府の理念はいま一つはっきりしない。たとえば「将来は原発ゼロを目指すが、いまは33基ある原発を全部動かしたい」とでも言えば、ずいぶん判りやすくなる。再稼働に対する地元民の反対も、かなり少なくなるのではないだろうか。

        ≪4日の日経平均 = 下げ -175.88円≫

        ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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国が 及び腰では! : 原発政策 (上)

2024-01-04 07:35:36 | 原発
◇ 柏崎刈羽原発6-7号機の運転禁止解除 = 原子力規制委員会は年末27日、東京電力の柏崎刈羽原発に対する運転禁止命令を2年8か月ぶりに解除した。この原発は17年12月に6-7号機が安全審査に合格したが、その後IDカードの不正使用や侵入検知に関するトラブルが続発。規制委員会が核燃料の移動を禁止するという形で、事実上の運転禁止命令を出していた。東電側が対策を講じ、今回ようやく運転できることになった。

だが実際に原発を再稼働させるためには、地元の同意が必要。このため東電はこれから地元に説明し、同意を取り付けなければならない。いまのところ柏崎市長と刈羽村長は再稼働に同意しているが、花角新潟県知事は慎重な構え。最終的には「新潟県民の意志を明らかにするため、知事選挙か県民投票が必要になるかもしれない」と述べている。

柏崎刈羽原発6-7号機は、出力が合計270万㌔㍗。東京電力の全出力の約5%を占める。経営的にも大きなプラスとなり、収支を年1200億円ほど改善させる効果がある。したがって東電は懸命に地元を説得することになるが、微妙なことは新潟県が東北電力の管内であり、東京電力とは関係がない点。たとえば原発の効果で東京電力が料金の値下げをしても、その恩恵が及ばない。

ただし、この問題を地元民の意志に委ねていいかどうか。もちろん地元民の意志を尊重することは大事だが、目線をもっと高くすることも重要だ。つまり日本国の将来を左右する、エネルギー計画に直結する問題でもあるわけだ。にもかかわらず、政府はいまのところ静観の構え。じっくり見ているというよりは、面倒な問題には手を出さない。要するに、腰が引けている。

                          (続きは明日)

        ≪4日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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なぜ政府は 静観なのか? : 敦賀原発

2023-04-13 07:48:46 | 原発
◇ 責任の所在を明確にせよ = 原子力規制委員会は5日、日本原子力発電の敦賀原発2号機(福井県)について「安全審査を中断する」と発表した。理由は日本原電が提出した資料に「多数の記載ミスが発見されたため」だという。規制委員会は、提出された書類の一部を8月末までに修正するよう行政指導した。この結果、安全審査はさらに長引き、敦賀原発2号機の再稼働は遠のくことになった。

敦賀原発2号機の安全審査は、原子炉建屋の直下に活断層があるかどうかが焦点。日本原電は15年、再起動に向けた安全審査を規制委員会に申請した。ところが資料の書き換えなどが発覚、21年に審査が中断。昨年12月に審査を再開したが、また資料の不備で中断したことになる。日本原電がケアレス・ミスを続けているのか、正しい資料だと審査に合格しないと考えているのかは判らない。しかし、これがきわめて重大な問題であることは確かだ。

いま日本は、この夏も電力不足の心配がある。ウクライナ戦争の影響を受けて輸入燃料の価格が高騰、貿易赤字は年20兆円を超えた。このため物価が上昇、購買力の流出が大きく景気は低迷している。政府も「原発は最大限活用する」方針を打ち出した。そんなとき敦賀原発2号機が再起動できれば、1兆6000億円分のLNG(液化天然ガス)輸入を減らせる。

もちろん安全でない原発を動かすわけにはいかない。だが、そのための安全審査が資料不備のために遅々として進まないのは大問題だ。それなのに、政府はなぜ静観を決め込んでいるのだろう。安全審査に口を出すわけではない。安全審査を円滑に進めるために、責任の所在を明らかにすることぐらいは実行すべきだと思うのだが。

        ≪12日の日経平均 = 上げ +159.33円≫

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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ドイツとの 大きな差 : 原発政策

2022-10-28 07:34:15 | 原発
◇ 緊急対策は岸田首相が決断を = ドイツ政府は国内に現存する原発3基を「来年4月まで稼働できる状態にする」ことを決めた。東日本大震災を受けて、ドイツは11年に「原発を22年中に無くす」方針を決定したが、これを修正する。ロシアからの天然ガス輸入が不安定さを増し、この冬の電力供給に不安が出たための緊急措置。原発ゼロを公約に掲げる緑の党も反対しなかった。

片や日本。経産省はいま専門家を集めた審議会で「原発の活用を進めるため」の議論を始めた。その内容は明らかでないが、再稼働する原発を増やす。原発の新増設や建て替え、最長60年という規制の見直し、さらに次世代型の開発までが議題となっているようだ。だが、これでは緊急対策と将来計画がごっちゃ混ぜ。この冬のピンチに間に合うのだろうか。

原発を将来どうするかは大問題。いまの計画では30年に25基程度の稼働を目標としている。しかし地元の同意が得られるかは、全く不明。新増設や建て替え、次世代型の開発については、放射性廃棄物の最終処理問題を含めてじっくりと検討する必要がある。その一方で、すでに地元の同意を得ている14基の原発を再稼働させることは、緊急を要する問題だ。

いま現在、日本の原発は4基しか動いていない。これを14基動かせば、発電量は940万㌔㍗増える。実現できれば、冬の電力不足はなくなるだろう。また原油の輸入量もその分だけ減るから、光熱費の上昇もいくぶんは抑えられる。政府は緊急対策と将来計画を分離し、岸田首相は「原発14基を24年春まで稼働させる」緊急措置を自ら決断し、号令すべきである。

        ≪27日の日経平均 = 下げ -86.60円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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真剣味に欠けた 新・原発政策 (下)

2022-08-31 07:39:50 | 原発
◇ 首相は脱炭素の問題にも触れなかった = いま日本には33基の原発が存在する。そのうち原子力規制委員会の安全審査を通過したのが17基。うち10基が地元の同意を取り付け、7基が再稼働している。地元の同意が得られず稼働できない7基を、来年夏以降をメドに稼働させたいと考えているのが経産省。だが、これまで地元の同意取り付けは電力会社と地方自治体頼み。岸田首相は会見で「政府も真剣に取り組む」と言うべきだったろう。

また原発の新増設や建て替えに関して、避けて通れないのは放射性廃棄物、いわゆる核のゴミをどう処理するかの問題だ。これについても、首相は言及しなかった。政府がこの問題に真剣に取り組まないと、原発に対する反対論はなかなか収まらない。さらにいちばん重大なのは、首相が脱炭素との関連性に触れなかった点だろう。

新増設や建て替え、また次世代型原子炉を推進した場合、石炭火力はどうするのか。いまの段階で具体的な数値を挙げるのはムリだとしても「石炭火力は出来るだけ縮小する」程度の発言はあってしかるべきだった。要するに首相の頭のなかには、日本のエネルギー計画が存在しないとみられても仕方がない。

とにかく首相が原発に対する方針の大転換を表明したことは確か。これを受けて経産省の審議会が、これから具体策を検討することになる。だが地元同意の取り付けから脱炭素の問題まで、審議会で結論が出せるのかどうか。年末までに結論が出せないと、日本のエネルギー対応はまたまた遅れてしまう。

 ≪30日の日経平均 = 上げ +316.62円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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