経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

‟負け組”になった 日本株

2021-12-31 07:45:44 | 株価
◇ 日経平均は年間1347円の上昇だった = 日経平均は今週9円の値上がり。海外投資家はお休みムード、薄商いのなか21年の商いを終えた。終り値は2万8792円。年間1347円の値上がりで、上昇率は4.9%だった。世界の株式市場を眺めてみると、29日の時点でダウ平均の年初来上昇率は19.99%、ドイツのDAX指数は15.55%、中国の上海総合指数は6.18%。こうした比較からみて、日本株は‟独り負け”ではないにしても、‟負け組”に入ったと言えるだろう。

‟一人勝ち”の様相を呈したのはアメリカ株。ダウ平均・SP500・ナスダックともに、史上最高値を更新した。強大な資金吸収力を発揮して、コロナやFRBによる金融緩和政策の縮小、さらには米中間の経済摩擦、エネルギー価格の高騰、異常気象などの障害を乗り越えて続伸した。悪材料が出て株価が下がっても、すぐに大量の買いが入って大幅に上げる。そんな繰り返しの1年だった。

日経平均も何回か3万円の大台に乗せている。特に9月中旬には3万0670円まで上昇した。しかし、その後は力強さに欠け、最後は2万9000円を割り込んで終わった。アメリカに比べると、日本のコロナ禍ははるかに軽微だと言えるだろう。にもかかわらず、株価の上昇率は小さかった。岸田新内閣の大型財政支出が実現しても、株価は上がらなかった。なぜだろう。

少子高齢化ガ進み、人口が減る。日本の潜在成長力が低下しつつあることは確かだ。しかし、そうしたなかで日本がどのようにして成長率を高めようとしているのか。日本経済の将来像を、どのように描いているのか。そこが判然としない。いま日本株の7割近くは、外国人投資家が買っている。その不安が、海外投資家の日本株離れを惹き起こしているのではないか。

       ≪30日の日経平均 = 下げ -115.17円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝0敗】     


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川上はインフレ、川下はまだデフレ

2021-12-30 07:52:32 | 小売り
◇ 価格転嫁できない企業も多い = 総務省の発表によると、11月の消費者物価は生鮮食品を除いた総合指数で前年比0.5%の上昇だった。この上昇幅は1年9か月ぶりの大きさ。ガソリンの小売価格が27.1%、電気料金が10.7%上昇したほか、生鮮食品を除いた食料も1.1%上昇した。ただ携帯電話の通信料が53.6%も下がっており、この影響を取り除くと物価の上昇率は2%をやや超える。

日銀の集計によると、11月の企業物価は前年比9.0%の上昇だった。この上昇率は、石油ショック後の1980年12月以来41年ぶりの大きさ。企業物価というのは、企業の間で取引されるモノの価格。ことし3月から9か月連続して上昇しており、この数字からみる限り企業段階ではインフレ状態に入ったと言えるだろう。

消費者物価も企業物価も、上昇した主たる原因は、輸入品の価格高騰。エネルギーの国際価格が急騰したことと円安の進行で、輸入品の価格が上昇した。11月の輸入物価は前年比44.3%も上昇している。たとえば石油・石炭・天然ガスは128.4%、木材・木製品・林産物は81,4%の上昇だった。したがって企業段階を襲った価格高騰は、輸入インフレと断定できる。性格的には、あの狂乱物価を惹き起こした石油ショックと同じだ。

当時と違うのは、価格高騰の程度が小さいこと。それに小売り段階への波及が遅れていることだろう。11月の数字をみても、企業物価は9%も上昇しているのに、消費者物価は0.5%しか上昇していない。これは最終段階での消費需要が弱いため。小売り業は値上げすると売り上げが落ちる心配があるので、なかなか価格転嫁に踏み切れずにいるわけだ。ただし生活に絶対必要なガソリン、電気代、食料品の一部などは、転嫁に成功している。
 
        ≪29日の日経平均 = 下げ -162.28円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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史上最大107兆円予算案の 弱点 (下)

2021-12-29 08:16:15 | 予算
◇ 税収見積もりと国債費にも危うさ = 22年度予算案で、政府は税収総額を65兆2350億円と見積もった。21年度当初予算の見積もりより7兆7870億円も多い。コロナ収束後の景気回復と大型の財政支出で、達成は可能だと説明している。また、その理論的根拠として、来年度の名目成長率が3.6%になるという試算を公表した。しかし日本はこの10年間、そんなに高い成長を遂げたことはない。本当に大丈夫なのだろうか。

成長する項目として、政府は個人消費が4.0%、企業の設備投資が5.1%増加すると試算した。だが、その大前提はコロナが収束することにある。また1人10万円などの支給金が、貯蓄に回らず消費に使われなければならない。その実現性は危ういのではないか。むしろ目いっぱいの税収が見込めるように、成長率を無理して高く見積もった感じさえする。

22年度予算では、新規国債を36兆9260億円発行する。国債発行残高は来年3月末には990兆円になる見込み。したがって発行残高は、間もなく1000兆円を突破する。その利子を支払うため、予算案では24兆3393億円もの国債費を計上した。だが、これは金利水準が大幅に上昇しないことを前提としている。

アメリカの中央銀行であるFRBは、来年4月には政策金利の引き上げを開始する予定だ。日本では日銀が国債を買い続ければ、金利の上昇を抑えられるかもしれない。しかし、その場合は円安が進行する。日本でも金利が上がれば、国債の利子負担が増大することは避けられない。仮に金利が1%上がれば、利子負担は10兆円も増加する。国債費が不足する可能性は大きく、ここにも危うさが存在する。

        ≪28日の日経平均 = 上げ +392.70円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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史上最大107兆円予算案の 弱点 (上)

2021-12-28 07:49:24 | 予算
◇ 経済成長を促す火種が見当たらない = 来年度予算の歳出規模は107兆5964億円、本年度の当初予算より1兆円ほど膨れ上がった。もちろん過去最大の金額。しかし予算案の内容をみると、いくつかの弱点が見付かる。その1つは、日本経済が長期的に元気を取り戻すための施策が見当たらないこと。たしかにコロナ対策など当面の施策も重要だが、これでは日本経済の将来像が少しも描けない。

予算案を費目別にみると、最も金額が大きいのは社会保障費で36兆2735億円。本年度より4400億円増えた。次は国債費で24兆3393億円、本年度より5808億円増えている。この2費目だけで約60兆円、全体の57%を占めた。あとは地方交付税交付金が15兆8825億円、公共事業費が6兆0575億円、文教・科学振興費が5兆3901億円、防衛費が5兆3687億円。それにコロナ対策の予備費として5兆円が計上された。

問題は科学振興費1兆3788億円の内容。新規事業分は4300億円程度しかなく、たとえば5Gの研究開発には100億円、デジタル田園都市構想には1000億円という具合で、みな小粒。脱炭素に向けた再生可能エネルギーや原発はどうなるのか、EV(電気自動車)やFCV(水素燃料電池車)の開発・普及は。半導体やロボットの研究開発は・・・何もわからない。

社会保障費の自然増などで、予算編成に余裕がないことは確かだ。しかし、これだけの財政支出をして、来年度の経済成長率が多少上向くだけというのでは、夢がなさすぎる。たとえば再生可能エネルギーを普及させるための電池、EV用の電池、FCV用の水素燃料電池・・・あらゆる電池の研究開発費に3兆円を使うという項目があれば、日本は電池の分野で世界一を目指す姿勢が明示される。こうした目標が示されれば、国民も夢を持てただろう。

                           (続きは明日)

        ≪27日の日経平均 = 下げ -106.13円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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今週のポイント

2021-12-27 08:06:22 | 株価
◇ 市場は早々に休みムード = ダウ平均は先週585ドルの値上がり。中国が利下げしたというニュースで、週初は400ドル以上の下げ。しかし、あくる日には500ドル以上も反発した。なにしろニューヨーク市場の待機資金であるMMFは4兆6360億ドル(530兆円)もあるから、株価が下がればすぐ出動する。ただし株価の乱高下はここまでで、市場は週の後半から休みムードに入ったようだ。

日経平均は先週237円の値上がり。ニューヨークと同様、月曜日は600円以上下げたが、火曜日は600円近く戻している。その後はやはり休みムード、出来高もぐっと縮小した。そのせいか、総額107兆円を超える来年度予算案が編成されても、来年度の予想成長率が3.2%に上方修正されても、株価は反応しなかった。

ウオール街では、新年の株高スタートを期待する声も強い。多くのファンドが戦略を見直し、株を買ってくるというのが根拠のようだ。しかし世界にオミクロン株が拡大し、各国政府は新年早々にも規制を強化することになりそうだ。そういう状況で、積極的に買えるかどうか。投資家は正月休みのうちに、じっくり考えることになるだろう。

今週は27日に、11月の商業動態統計。28日に、11月の労働力調査と鉱工業生産。アメリカでは28日に、10月のFHFA住宅価格。29日に、11月の中古住宅販売。また中国が31日に、12月の製造業と非製造業のPMIを発表する。なお30日は大納会。1月1日には、RCEP(東アジア地域包括経済連携協定)が発効する。

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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