経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

「金利のある時代」が やってきた!

2024-01-30 07:48:10 | 金融
◇ 日銀はまだマイナス金利に固執しているが = 日銀は先週23日に開いた政策決定会合で「大規模金融緩和政策の維持」を決めた。相変わらずの現状維持である。植田総裁は記者会見で「賃金上昇を伴う持続的、安定的な物価上昇を実現する見通しの確度は少しずつ高まっている」としながらも「どの程度高まったかの判断、定量的な把握は非常に難しい」と説明した。要するに年が明けても変化はなし。日銀は石橋を叩いても渡らない。

ところが市場では、日銀が上半期中にもマイナス金利の解除に動くという観測が急激に広まっている。たとえばQUICKが外国為替市場を対象に実施した調査では、1-3月中が36%、4-6月中が43%という結果。石橋を叩いている日銀の尻を、民間が後押ししている格好だ。これはさすがの日銀も、そう長くは持ち切れないだろうという予想。それに金融環境を早く正常化してほしいという市場の要望を反映した動きに違いない。

そして実際に「金利のある時代」が、出現し始めた。たとえば三井住友信託銀行は、5年もの定期預金に0.6%、2年もの定期に0.4%の金利を付けると発表。またauじぶん銀行が1年もの定期に0.35%の金利を付与するなど、いくつかの銀行が定期預金の金利を大幅に引き上げた。この結果、銀行全体の預金残高は1年以上の定期預金が減少、1年未満の定期預金が急速に増えている。

これは今後さらに金利が上昇する場合に備えて、おカネを動きやすくしておく措置。預金者はすでに、金利はもっと上がると考えているわけだ。金利が上がれば預金者は喜ぶが、借金をしている企業や個人は負担が増す。いずれにしても金利の変動を予知して、行動することが大切になってくる。日銀が重い腰を上げたあとでは遅い、と考えるべきだろう。

        ≪30日の日経平均 = 上げ +38.92円≫

        ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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今週のポイント

2024-01-29 07:29:28 | 株価
◇ 史上最高値圏での綱引き = ダウ平均は先週246ドルの値上がり。3週間の連騰で、終り値は3万8109ドル。また史上最高値を更新した。月曜日にいきなり3万8000ドル台に乗せ、その後は反落したが週末に再び盛り返した。半導体・ハイテクから保険・製薬まで幅広い銘柄が買われている。昨年12月13日に3万7000ドル乗せだったから、40日間で1000ドル上げたことになる。だが過熱感はなく、利益確定売りをこなして着実に上げた。

日経平均は先週212円の値下がり。終り値は3万6000円を割り込んだ。月曜日にはニューヨークの流れを受けて大きく上げたが、火曜日に日銀が大規模緩和政策の継続を決めると、あとは軟調に。訪日外国人観光客の復活や時価総額10兆円を超す銘柄が15に増えたなどのニュースも伝えられたが、株価は冴えなかった。自民党の裏金問題が、なんとなく市場の空気を重くしているのだろうか。

アメリカではGDP速報や小売り売上高など、景気の堅調を示す指標が続出している。その一方で、物価は上昇率が縮小。このため景気後退なしでインフレが収束する‟軟着陸”への期待が高まった。これが株高の大きな原因。ただFRBによる利下げも遠のいたという見方もあって、これが売り要因となっている。ただこの綱引き、いまのところは強気の方が優勢。しかし株価が上がれば、弱気も次第に増えて行く。

今週は30日に、12月の労働力調査。31日に、12月の鉱工業生産、商業動態統計。1日に、1月の新車販売。アメリカでは30日に、11月のFAFH住宅価格指数。1日に、1月のISM製造業景況指数。2日に、1月の雇用統計。また中国が31日に、1月の製造業と非製造業のPMIを発表する。なお31日には、パウエルFRB議長の記者会見。

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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大いなる矛盾!? 年金2.7%上げ

2024-01-27 07:47:19 | 年金
◇ 実質収入を下げていいのか = 厚生労働省は、24年度の公的年金支給額を「前年度比で2.7%引き上げる」と発表した。この引き上げ率は32年ぶりの大きさ。ただ本来なら3.1%の増額になるべきところが、マクロ経済スライドの適用によって0.4ポイント減額された。このため年金の増加率は物価の上昇率に及ばず、実質収入はマイナスになる。年金生活者の生活は、それだけ苦しくなるわけだ。

マクロ経済スライドは、年金の増加率を物価や賃金の上昇率より低く抑える措置。将来世代の負担が重くなりすぎないように、04年の年金改革で導入された。これによって、24年度は国民年金で年3100円、厚生年金は年1万1500円程度の目減りが生じる。だが将来世代の負担を考えると、この措置は仕方がないのかもしれない。

しかし少し目線を変えてみよう。政府は「物価の上昇を上回る賃上げによって、経済の好循環が生じること」を熱望している。岸田首相は22日に開いた政労使会議でも「昨年を上回る水準の賃上げをお願いする」と要望した。この観点からすると、年金生活者が実質的な減収となるのは歓迎できないのではないか。なにしろ公的年金の受給者は4000万人以上もいる。0.4%の目減りにしても、その影響はきわめて大きい。

仮に大企業の賃金引き上げ率が、ことしは5%に達したとしよう。だが雇用の7割を支える中小企業の賃上げが1%だったら、全体の賃上げ率が物価上昇率を超えることは難しくなるかもしれない。そのうえに年金受給者の実質所得マイナスが加わったら。こう考えると、経済の好循環など起こりえないのではないか。きわめて単純な疑問だが、政府や日銀の考え方を聞いてみたい。

        ≪26日の日経平均 = 下げ -485.40円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】     
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危うし! 日本の自動車産業 (Ⅳ)

2024-01-26 07:28:25 | 自動車
◇ 車載電池が最後の決戦場 = 日本自動車工業会の集計によると、23年の新車販売台数は477万9080台。前年比14%の増加だった。このうちEVは8万8535台、前年比50%も伸びた。しかし全販売台数に占める割合はまだ2.22%に過ぎず、海外に比べると極端に低い。EVに関する限り、日本は後進国だ。トヨタの販売台数が昨年も世界一になるなど、日本のメーカーは不祥事を起こしたダイハツを除けば、好調を維持している。だが今後も伸び率が高いとみられるEVでは、明らかに周回遅れ。この点がどうしても気になってしまう。

言うまでもなく、自動車は日本の基幹産業。部品などの周辺企業を含めれば、製造業のおよそ2割。550万人の雇用を造り出している。近年では、ハイブリッド車(ガソリンと電気の供用)の技術で世界を圧倒してきた。日本メーカーがこの優位性に安心し、EV開発に全力を挙げなかったことは否定できない。同時に日本では、アメリカのテスラや中国のBYDのように、自動車以外の産業からEVメーカーが誕生することもなかった。

いま日本メーカーは、後れを取り戻そうと必死になっている。だが海外市場では、すでにEVも供給過剰状態に。激しい値下げ競争さえ起こっている。そこへ参入するのは容易なことではない。しかし日本の自動車産業が、起死回生の大きなチャンスをつかむ可能性もないではない。それはEVに搭載する全個体電池の究極的な開発だ。

EVの性能は、搭載する電池が左右する。これまではリチウムイオン電池が主流だったが、これからは全固定電池の時代に入る。全固定電池は安全で長持ちし、しかも軽い。だからいま各国は、その製造コストの引き下げに躍起となっている。幸いなことに、この分野での日本の技術水準はきわめて高い。だから官民学が力を合わせて、全固定電池の性能向上と価格の引き下げに全力を挙げるべきである。政府はもっと補助金を出していい。ただ、その目標は優秀な電池を積んだ日本車の販売増加というより、日本製電池を世界各国に供給することを目指すべきだろう。

        ≪25日の日経平均 = 上げ +9.99円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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危うし! 日本の自動車産業 (Ⅲ)

2024-01-25 07:27:14 | 自動車
◇ 中国製EVに警戒強める欧米諸国 = 欧州自動車工業会の集計によると、ユーロ圏18か国の23年の新車販売台数は1284万台。前年比14%の増加だった。このうちEVは201万台、28%も増加している。脱炭素に厳しいEUだけに、EVの普及は順調。新車販売全体に占める比率はドイツが18%、イギリスとフランスは17%に上昇した。ここでも中国製EVの伸びが突出、価格の安さが強力な武器となっている。

ところが、この価格の安さは中国政府の手厚い補助金によるところが大きい。欧州委員会はこれを問題視、不当な補助金かどうかを調査することになった。ことし中に結論を出すが、もし不当と判定されれば、相殺関税がかけられることになる。EU側は、中国製EVが火力による発電で製造されていることも問題視する模様。中国メーカーは現地生産を増やして乗り切ろうとしているが、見通しはまだ藪の中だ。

アメリカは、中国製EVを完全に締め出している。マークラインズ社の集計によると、23年の新車販売台数は1550万台。前年比12%の増加だった。このうちEVは322万7000台、前年比8.1%の増加だった。新車販売に占める比率は8%で、ヨーロッパ諸国の半分にも満たない。EVの6割はテスラだが、最近は人件費の上昇で大幅な減益。GMやフォードも投資計画の縮小を発表した。

政府の政策はきわめて保守的。原則として北米産の部品を使い、北米で組み立てた車にしか補助金を出さない。特に中国製の部品には厳しく、中国製電池を搭載した車はアウト。この結果、最大7500ドル(106万円)の補助金を受けられるのは、現在8車種に限られてしまった。一般にEVに対する関心は薄く、関心のある人はもう購入してしまったという分析さえ飛び出している。

                   (続きは明日)

        ≪24日の日経平均 = 下げ -291.09円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
  
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