経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

まず洪水を 防ごう (下)

2019-10-31 07:47:54 | なし
◇ 膨大すぎるインフラの更新費 = 今回の災害に対する補償・復旧費用は、予備費と補正予算で賄うことになる。だが将来の災害を防止するための費用は、本予算の公共事業費から支出することになる。大地震や津波、河川の氾濫、山崩れなど、対応すべき問題はきわめて多い。また橋や堤防などインフラの老朽化についても、早急に手を打たなければならない。

一般にインフラは建設後50年を経過すると、劣化が激しくなるといわれる。土木学会の調査によると、23年時点で建設後50年を超えるインフラは、道路橋が全体の39%、トンネルが27%、堤防など河川管理施設が42%に達する。このうち5年以内に修理が必要な個所は、8万件にのぼるという。

こうしたインフラの維持管理・更新にかかる費用は、今後30年間で194兆円に達すると試算されている。一方、たとえば19年度予算に計上されている公共事業費は7兆円に満たない。要するに、現在のインフラを維持するだけで手いっぱい。新幹線や高速道路の建設などは出来ないし、防災のための新たなインフラの構築も難しい。

公共事業費は98年の15兆円をピークに、大きく減少してきた。当時は新幹線や高速道路の建設ラッシュ。政治家はその誘致で、選挙の票を集められた時代だった。いまは考え方を180度変えるべきとき。公共事業は防災に集中し、優先度をつけながら執行する。たとえば「早急に河川の氾濫をなくす」と公約する政治家に、票が集まるような世の中にしたいものだ。

       ≪30日の日経平均 = 下げ -131.01円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

まず洪水を 防ごう (上)

2019-10-30 07:55:17 | なし
◇ 大きすぎた河川氾濫の被害 = 「100年に1度」の自然災害が、年に何度も起きるようになった。特に河川の氾濫による洪水の被害が甚大だ。異常な大雨の原因が地球温暖化にあるとしたら、こうした自然現象が異常でなくなってしまう可能性も大きい。政府や地方自治体もこの問題を最優先課題として取り上げ、全力をあげて対策を急ぐべきである。

自民・公明の両党は先週23日、幹事長・国会対策委員長が会談。防災・減災と国家強靭化に関する合意文書をまとめた。政府に対して、中長期の新たなインフラ整備計画を作成し、その財源を確保するよう求める内容になっている。時宜に適した判断であり、応援して行きたい。だが、この種の政治的行動は往々にして「予算獲得の手段」としてだけに使われやすい。今後の展開をじっくり注視する必要がある。

政府は昨年12月、国家強靭化に関する3か年計画を策定。たとえば2340にのぼる河川の掘削や堤防補強などを、緊急に実施することを決めた。しかし、ことしの台風にはほとんど間に合っていない。国土交通省がまとめた資料によると、河川の洪水に対する整備率は国の管理分野が17年で72.2%、県の分野で55.8%。それが20年でも、それぞれ76%と60%にしか整備されない。この整備率をもっと大幅に引き上げなければ、またどこかで大洪水が起こってしまう。

国土交通省はことし6月、国土強靭化に関する年次計画をまとめて発表した。河川の氾濫による洪水はもちろん、大地震や津波、橋やトンネルの老朽化など、ありとあらゆる災害の可能性を網羅し、その対策を列挙している。ただ、そこには優先順位が全く付けられていない。また財源についても、全く触れていない。これでは国民の不安は、少しも解消しないのではないか。

                            (続きは明日)

       ≪29日の日経平均 = 上げ +106.86円≫

       ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

利下げするしかない FRBの苦悩

2019-10-29 07:59:35 | アメリカ
◇ 市場の期待度は9割超す = アメリカの中央銀行であるFRBは今週29-30日にFOMC(公開市場委員会)を開いて、当面の金融政策を決定する。アメリカの景気は米中経済戦争の影響を受けて、特に製造業の状態が悪化している。ISM(供給管理協会)が発表した9月の製造業景況指数は、前月に続いて好不況の境目とされる50を割り込んだ。7-9月期の企業業績も、3期連続の減益となる見通し。このため株式市場の内部では、利下げを見込む確率が9割を超えている。

FRBはことし7月と9月に、政策金利を0.25%ずつ引き下げた。現在の水準は2.00%。これをまた引き下げれば、4か月間に3回も利下げすることになり、きわめて異常。このためFRB内部にも「引き下げ反対」の声があるという。だが市場がほぼ完全に織り込んでしまったから、FRBとしては引き下げるしかなさそうだ。もし下げなければ、株価が暴落する恐れさえあるからだ。

悩ましいのは、アメリカでは30日に7-9月期のGDP速報、1日には10月の雇用統計が発表されることだ。仮にこれらの統計が景気の堅調を示すことになれば、FRBは「早まった」と言われかねない。特に雇用統計で時給の上昇率が高くなれば、利下げが「インフレの加速に手を貸した」と批判されるだろう。だがパウエル議長は、こうしたリスクを冒してでも利下げを決断することになりそうだ。

日銀も30-31日には、政策決定会合を開く。アメリカが利下げすれば、ヨーロッパ諸国や新興国の金利も下げの方向へ動く。また円相場には上昇圧力がかかる。日銀としてはそれを抑えるため、金利を下げたいところだ。しかし日本の場合、これ以上の金利低下は大きな副作用を伴うから、結局は座視するしかないだろう。

       ≪28日の日経平均 = 上げ +67.46円≫

       ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2019-10-28 07:58:40 | 株価
◇ アメリカの景気見通しが焦点に = 日経平均は先週307円の値上がり。3週間の続伸で、5日続けて年初来高値を更新した。日本株の出遅れ感に注目した、外国人投資家の買いが目立つ。決算発表で好業績の銘柄に買いが集中する一方で、業績不振の銘柄に対する売りは比較的少なかった。このため出来高は薄く、10月に入ってからの17営業日中10営業日で売買代金が2兆円に達していない。

ダウ平均は先週188ドルの値上がり。主要500社の7-9月期の業績は、純利益で前年比5.3%の減益になる見通し。しかし市場はFRBによる利下げを織り込み、10月以降の回復を期待して株価は下げなかった。ペンス副大統領が中国に対して厳しい姿勢を表明したが、米中経済戦争の早期決着にも意欲をみせたため、株価に対する影響は中立的だった。

東京市場については、外国人投資家の買いが今週も続くかどうかが焦点。日経平均は3週間の続伸で1400円近く上げており、東証1部上場企業のPER(株価収益率)14.59倍にまで上昇している。ニューヨーク市場については、今週7-9月期のGDP速報と10月の雇用統計が発表される。焦点はアメリカの景気見通しに移るだろう。なお31日はイギリスのEU離脱期限だが、どうやらまた延期されそうだ。

今週は28日に、8月の企業向けサービス価格。30日に、9月の商業動態統計。31日に、9月の鉱工業生産と住宅着工戸数、10月の消費動向指数。1日に、9月の労働力調査と10月の新車販売。アメリカでは29日に、9月の中古住宅販売と10月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。30日に7-9月期のGDP速報。1日に、10月の雇用統計とISM製造業景況指数。またEUが31日に、7-9月期のGDP速報。中国が31日に、10月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

ラグビー と EU離脱問題

2019-10-26 08:20:57 | イギリス
◇ 理解しにくいイギリス人の二面性 = イギリスはラグビー・ワールドカップに、イングランド・ウエールズ・スコットランドの3チームを出してきた。アイルランドは北アイルランドとの混成チームだから、全国の地域がすべて出場したことになる。そしてイングランドとウエールズが、まだ4強に残っている。さすがにラグビー発祥の国だけのことはある。そのラグビーは、大英帝国の価値観を体現したもの。規則・公正・忍耐・団結を最重要視すると聞いた。

そのイギリスは、いまEUからの離脱を巡って大混乱のさなかにある。“秩序のある離脱”を目指したメイ首相が退陣。合意がなくても離脱すると息巻くジョンソン首相に変わったが、事態は一向に進展しない。10月31日の離脱期限を目前にしながら、議会は関連法案には賛成する一方で、審議を促進する動議は否決している。

ジョンソン首相はやむなくEUに対して3度目の期限延期を申し出たが、その手紙には署名がなかったというから驚く。そしてEUが延期を決めれば、解散・総選挙に打って出る方針だという。もし選挙に勝てば、強硬離脱に。負ければ、残留ということになるのだろうか。もちろん、議員の一人一人は信念を持って行動しているのだろうが、遠くから見ていると全体が空回りばかりしているように思えてならない。

そもそもは16年6月の国民投票で、離脱票が残留票をわずかに上回ったことから始まった。僅差ではあっても国民の意志が示されたわけだから、その時点でノー・サイドというわけにはいかなかったのか。仮に総選挙で残留派が勝つようなことがあれば、「イギリスはこの3年半、何をしてきたのか」と問われることになってしまう。いまのイギリス議会に求められるのは、崇高なラグビー精神なのではあるまいか。

       ≪25日の日経平均 = 上げ +49.21円≫

       【今週の日経平均予想 = 2勝2敗】    

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