経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

問題は 非正規雇用者の賃上げ率

2024-02-02 07:03:10 | 賃金
◇ 人手不足で上がりそうだが・・・ = 総務省は30日、昨年12月の労働力調査を発表した。それによると、就業者数は6754万人で前年比38万人の増加。これで増加は17か月間も続いている。コロナ規制の解除で仕事が増え、人手不足で賃金が上昇した結果だろう。失業者は156万人で、前年比2万人の減少。完全失業率は2.4%で、前月より0.1ポイント低下した。雇用面からみた経済の状態は、まずまず順調だと言っていい。

雇用の変化を業種別にみると、最も雇用が増えたのは製造業で前年比28万人の増加。次いで宿泊・飲食サービス業が21万人、情報・通信業が19万人など。製造業は半導体など部品不足が解消、また宿泊・飲食サービス業はコロナ規制の解除で経済が正常化したことが大きい。一方、雇用が減少したのは金融・保険の24万人減、卸・小売り業が3万人の減少だった。                     

雇用の状態をみると、正規の職員・従業員は3592万人。前年より21万人増えた。ところが女性が24万人増加したのに対し、男性は3万人減少した。これはどうしてだろう。一方。非正規職員・従業員は2173万人で、前年比39万人の増加。非正規雇用者の増大傾向は、いぜんとして続いている。なかでもバイトが23万人も増加した。

大企業のことしの賃上げ率は、昨年を上回りそうである。そこで全体として賃上げ率が物価上昇率を上回るためには、中小企業やサービス業の賃上げ率が重要になってくる。その賃上げが十分でないと、経済の好循環は生じない。ところが、その賃上げが大きすぎると、中小企業やサービス業は値上げをしなければやって行かれない。すると物価が上がり、好循環は現われにくくなってしまう。そこのところが難しい。

        ≪1日の日経平均 = 下げ -275.25円≫

        ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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「賃上げ>物価高」の好循環は 影もなし

2023-09-06 07:31:22 | 賃金
◇ 家計調査が語る市民生活の実態 = 総務省は5日、7月の家計調査を発表した。それによると、2人以上世帯の消費支出は28万1736円。前年比は名目でも1.3%の減少、物価上昇を勘案した実質では5.0%の大幅な減少となった。この実質値は昨年11月から、ことし2月を除いて前年比マイナスが続いている。政府は「物価上昇率を上回る賃上げが実現することで、経済に好循環が起こる」ことを期待しているが、この家計調査からみる限り、そんな兆候は全く見られない。

消費支出の調査は10項目に分かれているが、そのうち7項目で減少した。増加したのは光熱・水道、家具・家事用品、被服・履物の3項目だけ。家具・家事用品は7か月ぶり、被服・履物は4か月ぶりの増加。これに対して光熱・水道は8か月連続の増加となっている。人々は多くの項目で節約を志向しているが、光熱・水道は値上がりが大きく、支出を減らせなかったようだ。

一方、勤労者世帯の実収入は63万7866円。前年比は名目で3.0%、実質では6.6%の大幅な減少だった。昨年10月から、前年比マイナスが続いている。税金などを差し引いた可処分所得は51万3069円。実質値は前年比6.4%の減少。消費支出は30万6293円で、前年比7.2%の大幅な減少だった。勤労者世帯はやはり節約に徹し、貯蓄に努めているようだ。

2年前の21年7月、2人以上世帯の消費支出は27万6710円だった。したがって、この2年間で5000円ほど増えている。ところが内訳をみると、食料品への支出が8万0313円から8万7528円に増えている。こうした統計から言えることは、まず節約にもかかわらず食料品と光熱・水道に対する支出が、家計を大きく圧迫している。さらに大企業の段階で賃上げがあっても、経済全体では好循環など起こらないということか。

       ≪5日の日経平均 = 上げ +97.58円≫
   
       ≪6日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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物価高を上回る制度作りを : 最低賃金 (下)

2023-08-03 07:33:00 | 賃金
◇ 低賃金国に成り下がったニッポン = 最低賃金が時給1000円を超えたからといって、安心している場合ではない。これでも日本は、まだまだ低賃金国だからだ。たとえばイギリスの最低賃金は時給1700円。ドイツは1749円、フランスは1678円、アメリカのカリフォルニア州は2200円といったぐあい。韓国も先月19日、24年の最低賃金を時給1080円にすることを決めた。東南アジアの若者たちにとって日本は「望ましい出稼ぎ先」ではなく、優秀な人はみな日本を敬遠してしまう。

国内では‟年収のカベ”問題が解決されていない。これは年収が106万円あるいは130万円に達すると税金や社会保険料を支払う負担が発生、手取りが減ってしまう問題。最低賃金を引き上げれば、このカベにぶつかる人が多くなる。時給は上がっても、労働時間を短くして負担増を回避しようとする人が増えるだろう。しかし政府は、まだ解決策を見出せずにいる。

さらに最大の問題は、中小・零細企業の経営。人件費が上がると、経営が苦しくなる企業も少なくない。政府は「賃上げ分は転嫁を」などとのんきなことを言っているが、実際はかなり難しい。補助金説もあるが、それではまた‟ゾンビ企業”を増やすだけ。この際は政府が主導し自治体と金融機関が協力して、中小・零細企業の大々的な生産性向上運動を展開すべきだ。

岸田首相が強調した「時給1000円」は達成された。だが来年も再来年も時給を上げて行かなければ、日本は低賃金国から抜け出せない。それには‟年収のカベ”や中小・零細企業の経営問題にも、真剣に取り組む必要がある。しかし政府部内には、そんな意気込みは感じられない。岸田首相は「1000円以降」について、語るべきである。

        ≪2日の日経平均 = 下げ -768.89円≫

        ≪3日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
 
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物価高を上回る制度作りを : 最低賃金 (上)

2023-08-02 08:04:41 | 賃金
◇ 「1002円」をその第1歩にしよう = 中央最低賃金審議会は先週28日、23年度の最低賃金の目安を全国平均で時給1002円とすることを決めた。現在の961円から41円、率にして4.3%の引き上げとなる。この引き上げ幅は過去最大。各都道府県の審議会がこれを目安に実額を決定、10月ごろから順次適用される。中央審議会では労働者側が47円、使用者側は20円の引き上げを主張していた。

最低賃金引き上げの目安は、地域によって引き上げ額が①東京・大阪など6都府県は41円②北海道・京都など28道府県は40円③青森・沖縄など13県は39円--となっている。すでに東京・大阪・神奈川の最低賃金は1000円を超えているが、今回の引き上げで東京・神奈川は1100円を超す。また新たに埼玉・千葉・愛知・京都・兵庫の5府県が1000円を超えることになる見込み。

大幅な引き上げとなったのは、言うまでもなく物価高。大企業の賃上げ率が3.58%だったこと。それに岸田首相が強力に「1000円」を推奨したことも影響した。決められた最低賃金の額は、あらゆる形態の労働者すべてに適用される。そして押し上げ効果も含めて実際に賃金が上がる労働者の数は2500万人にのぼると試算されているから、その影響はきわめて大きい。

ところが、これで実質賃金は上昇するかと言えば、必ずしもそうとは言えない。たとえば6月の消費者物価上昇率3.3%と比べれば、賃金が物価を上回った。しかし昨年10月-ことし6月のインフレ率と比べれば、ほぼ同じ。こんな状態だから、来年度以降も物価を上回る最低賃金の引き上げが絶対に必要だ。政府は1000円を超えたからと言って安心せず、物価高を上回る賃金引き上げの仕組みを考えるべきだろう。

                   (続きは明日)

        ≪1日の日経平均 = 上げ +304.36円≫

        ≪2日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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賃上げ>物価高 は実現するのか (下)

2023-07-07 07:27:34 | 賃金
◇ 非正規社員、税金・保険料まで考慮すると = 総務省の労働力調査によると、22年の正規社員は3597万人。非正規社員は2101万人だった。このように非正規社員は、働く人全体の36.9%もいる。ところが賃上げ率が31年ぶりの大きさになったとかいう話は、あくまで正社員だけの統計だ。非正規社員の賃金は、原則的に国が定める最低賃金によって決まる。いまの最低賃金は全国平均で時給961円。これを来年は1000円に引き上げようとしているが、もしそうなれば4.0%の賃上げということになる。

名目賃金から物価上昇率を差し引いたものが実質賃金。これが消費者の真の購買力を表わすと言われるが、実際には税金や社会保険料の増加分も考慮しなければいけない。日経新聞によると、この税金と社会保険料の合計は、過去20年間に1.4倍となっている。ことしも政府は年末までに防衛費や少子化対策費の財源を確定しなければならず、税金や社会保険料の引き上げは不可避だとみられている。このように考えると、働く人すべての賃金が3%以上も上がることはありえない。

一方の物価。値上げが一巡して上昇率が鈍化する可能性はないでもない。しかし物価上昇の基本的な原因であるウクライナ戦争の将来は、全く予測不能。また原油など輸入燃料の価格も、いつ上昇に転じるか。もし輸入価格が上昇すれば、物価はさらに上昇する可能性は大きい。したがって下半期に物価が落ち着くという観測は、期待が大きすぎるだろう。

大企業の正社員を中心に、「賃上げ>物価高」は実現するかもしれない。それは結構なことであり、その領域だけをみれば経済の好循環が起きるかもしれない。しかし、その他のより広い領域では、いぜんとして実質賃金は低下する。こうした状態では、日本経済全体の好循環は起こりにくい。大幅な賃上げは一歩前進だが、大企業中心の数字だけをみていると、判断を誤ることになりかねない。

        ≪6日の日経平均 = 下げ -565.68円≫

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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