経済なんでも研究会

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切れたアキレス腱 : 中国の不動産業

2024-06-22 07:35:11 | 中国
◇ 主要68都市で住宅価格が下がる = 中国の不動産不況は、なかなか改善しない。改善どころか、やや悪化している面さえ見受けられる。たとえば政府の発表によると、この5月に新築住宅の価格が下落したのは主要70都市のうち68都市。3月の57都市、4月の64都市よりも拡大した。統計局の発表によると、5月の鉱工業生産は前年比5.6%増、小売り売上高は3.7%増と底入れの形。しかし新築住宅の面積は24%の減少で、景気の足を大きく引っ張っている。

政府も不動産対策には、かなり力を入れてきた。ことし2月には1兆元の財政支出、住宅ローン金利も引き下げた。また5月には、地方政府が売れ残った住宅を買い取るという思い切った対策も打ち出している。だが効果はあまりない。建設会社の倒産は防げたが、住宅の需給関係は少しも改善されなかったからである。新築住宅の在庫面積は、5月末で前年比25%の増加だった。

中国の不動産業は、GDPの2割以上を占める。鉄鋼や建築材料、セメントなど関連する産業も幅広い。いま中国では、こうした産業が厳しい状態に置かれている。また地方銀行の不動産融資にからんだ不良債権も、急増しているとみられている。習近平政権が最も心配しているのは、失業者の増大。とくに若者の失業者が多く、政府は若年層の失業率の発表を停止したほどだ。

自動車や太陽光パネル、電子製品や鉄鋼。こうした産業も増産していないと、失業者が増えてしまう。そして過剰に生産した製品を安値で輸出。中国の過剰生産が、G7(主要7か国)会議でも問題になった。だが、その中国も不動産だけは輸出できない。そのため中国経済のアキレス腱となっている。7月に開く中央委員会で、中国は中長期的な経済政策を決定する予定だが、不動産不況に対して新しい手を打ち出すのかどうか。

        ≪21日の日経平均 = 下げ -36.55円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】 

中国の安売り輸出が 大問題に (下)

2024-05-24 07:35:34 | 中国
◇ 補助金→生産増→安売り→輸出増 = いま中国は不動産不況に悩んでいるが、鉱工業生産だけは順調に増加している。だが主要製品の生産は過剰で、価格が下がっていることも事実。たとえば4月の卸売り物価でみると、鉄鋼の価格は前年比8.1%の下落。4月の消費者物価でみると、自動車は4.3%、スマホは2.9%の下落となっている。しかし価格が下落しても、生産は衰えない。政府が補助金を出して、増産を奨励しているからである。

国内で余った生産物は、輸出に出口を求める。たとえばEV・太陽光発電・リチウムイオン電池の3月の輸出額は106億ドル、3年前の2倍以上になった。自動車の4月の輸出は90万4000台、前年比34%の増加だった。自動車について言えば、23年は491万台を輸出、日本を抜いて世界首位になった。さらに業界は25年に3600万台の生産を計画しているが、国内での販売は1700万台にとどまると推計している。半分以上が輸出に回ることになる。

習近平政権は経済政策の基本に、生産力の増強を挙げている。この目的のため、09-22年の間に、総計1700億ドル(約255兆円)の補助金を支出した。これで主力製品を増産、輸出に安売り攻勢をかけるという構図が定着しつつある。もちろんEVだけではない。たとえば太陽光発電パネルは、IEA(国際エネルギー機構)によると、ことし中に供給量が需要量の3倍に達する見通し。その原因は中国の生産過剰だという。

日本に対する影響も、きわめて大きい。まずEVや太陽光パネルなどが、安値で入ってくる。日本のメーカーは防戦に必死となるだろう。また東南アジアや中南米などの市場でも、安い中国製と闘わなければならない。自動車の状況をみると、すでにタイでは中国製EVに日本車が食われ始めている。日本政府は傍観していていいのだろうか。

        ≪23日の日経平均 = 上げ +486.12円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

中国の安売り輸出が 大問題に (上)

2024-05-23 07:22:45 | 中国
◇ 米政府が中国製EVに関税100% = バイデン政権は先週14日、主要な中国製品に対する制裁関税の大幅な強化を発表した。EV(電気自動車)については25%だった制裁関税を100%に。また自動車などに使用する旧世代の半導体については25%を50%に。車載用リチウムイオン電池は3倍の25%に。太陽電池は2倍の50%に。さらに鉄鋼とアルミは3倍の25%に引き上げる。通商法301条に基づく措置で、「安価な製品の流入を防ぎ、国内産業と雇用を守るため」と説明した。

当然ながら、中国政府は猛烈に反発。WTO(世界貿易機構)に提訴すると息巻いている。米中間の経済紛争は、たしかにいっそう悪化した。ただし、すべてを額面通り受け取るわけにはいかない。たとえばすでに25%の関税をかけられている中国製EVは、アメリカではほとんど売れていない。したがって関税を100%に引き上げても、意味はないことになる。

にもかかわらずバイデン政権が関税を大幅に引き上げたのは、大統領選挙のため。自動車や鉄鋼産業の支持を獲得するための対策だ。トランプ前大統領は「すべての中国製品に60%以上の関税をかける」と宣言しているから、中国政府にとっては「それよりはマシなバイデン政策だ」と言えないこともない。この辺の状況は、習近平政権も十分に理解しているはずだ。

バイデン政権の関税引き上げは、むしろアメリカ以外の各地域に大きな影響を及ぼしそうだ。アメリカ市場から締め出された中国メーカーは、いまブラジルとタイでEVの安売りを始めている。たとえばブラジルで1-4月に売ったEVは4万8000台、前年の8倍に達した。ブラジルとタイを拠点に、中南米と東南アジアに進出する計画だ。このとばっちりもあって、アメリカのテスラはことしに入ってから売れ行きが不振、人員の10%削減を発表している。

                      (続きは明日)

        ≪22日の日経平均 = 下げ -329.83円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ≫   

成長率5.2%の 真偽 / 中国

2024-01-19 07:54:06 | 中国
◇ あまりにも座り心地のいい数字 = 中国の統計局は17日、23年のGDP速報を発表した。それによると、実質経済成長率は5.2%。習近平政権が目標として掲げた「5%前後」を達成した。ただ22年はゼロ・コロナ政策で都市閉鎖などが断行され、成長率は3.0%にまで落ち込んでいた。その反動で5%を超えたのだと、専門家は解説している。また名目成長率は4.6%で、22年の4.8%を下回った。これは物価が下落し、経済がデフレ状態に陥っていることを示している。

同時に発表された主要な経済指標をみると、鉱工業生産は前年比4.6%の増加。小売り売上高は7.2%の増加、固定資産投資額は3.0%の増加だった。ただ不動産開発投資は9.6%の減少と、深刻な不動産不況は継続中。輸出も4.6%減少しており、経済は低迷状態から抜け出せない。そんななかで前年の反動とは言え、生産や小売りがよく伸びたという感じがしないでもない。

不思議に思うことは、GDP速報の発表の早さだ。アメリカでも23年の速報値は1月25日に発表される予定。日本は2月15日が予定日だ。中国は面積も広いし、人口も極端に多い。しかも正月休みを考慮すれば、半月足らずで集計したことになる。結果の正確性はどうなのだろう。目標の「5%前後」に対して、「4.9%」でも「5.0%」でもない。「5.2%」という結果は、全く座り心地のいい数字だ。最初から「5.2%ありき」ではないかと、勘繰りたくなってしまう。

統計局は同日、人口統計も発表した。それによると、23年末の総人口は14億0967万人で前年より208万人減少した。これで2年連続の減少。中国もいよいよ本格的な人口減少局面に突入した。言うまでもなく、人口の減少は経済成長のマイナス要因になる。中国はいま直面している不動産不況と、長期的な人口減少にどう対応して行くのか。習政権が「24年の成長目標」をいくらにするのか、きわめて注目される。

        ≪18日の日経平均 = 下げ -11.58円≫

        ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

浮き上がれない 中国経済 (下)

2024-01-12 07:28:44 | 中国
◇ 長期停滞の危険性も = 中国政府も、景気対策を打ち出している。10月に開いた全国人民代表大会では、国債1兆元(約20.5兆円)の追加発行を承認。また12月中旬に開いた中央経済工作会議では「積極的な財政政策と柔軟な金融政策」の実施を確認した。しかし、その効果はまだ現われていない。対策の規模が不十分という批判も出ているが、すでに財政赤字のGDP比は3.8%に達しており、共産党が認める限度3%を大きく超えている。

これまで中国の景気対策は、中央政府の指示により主として地方政府がインフラ投資という形で実施してきた。ところが不動産不況で土地の使用権が売れず、財源がない。IMF(国際通貨基金)の発表によると、地方政府の‟隠れ債務”は71兆元(約1400兆円)に達しているという。要するに中央政府も地方政府も財政難で、かつてのように大規模な景気対策が打てなくなっている。

恒大産業などいくつもの大手ゼネコンが経営不振に陥り、建設素材メーカーや家具などの周辺メーカーにも不況の波が及んでいる。さらに住宅価格の低落で、消費者が財布のひもを締め始めた。しかし中央政府も地方政府も、十分な対策を打ち出せない。その結果、最近では失業者の増大が目立ってきた。特に若年層の失業率は20%を超え、政府はその発表を停止してしまったほどである。

そのうえ人口の減少という、構造的な問題も進み始めた。22年の出生数は960万人だったが、23年は900万人を割り込んだ模様。政府は定年延長を考えているが、労働力の不足は避けられそうにない。さらにウクライナ戦争を巡って、欧米諸国の制裁措置も続く。こうしたことから、専門家の間では「中国経済が正常化するには時間がかかる」「場合によっては、長期的な停滞状態に入るかもしれない」という予測さえ現われている。

        ≪11日の日経平均 = 上げ +608.14円≫

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
   

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