経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

読者を惑わす 企業業績の新聞記事

2023-02-17 08:17:54 | 利益
◇ 日経は大幅減益、読売は最高益 = 日経新聞は11日付けの朝刊(東京版)で「上場企業、純利益25%減」という記事を掲載した。昨年10-12月期の決算発表がほぼ終了したため、東証プライム市場に上場する1035社の決算を集計。その結果は、純利益が前年同期比で25%の減少になったという内容だ。企業の利益が4分の1も減ったというのだから、これは大変なニュースである。

ところが、読売新聞は14日の朝刊(東京版)で「上場企業 最高益35兆円」という記事を載せた。こちらは上場企業の3月期決算を予測したSMBC日興証券の調査を報道したもの。それによると、昨年4-12月期の決算を発表した1163社の最終利益は、前年同期比で3.3%の増加。それに1-3月期の予想を加えると、全1314社の3月期の最終利益は0.1%増加して過去最高を更新するという内容だ。

この2つの調査は、対象とした企業の数が違うし、集計した時点も異なる。だから必ずしも、結果が一致するとは限らない。しかし「大幅減益」と「史上最高益」の記事が、整合することはありえない。たとえば読売新聞の場合、ことし1-3月期の結果が極端に悪化すれば、「最高益の更新」は難しくなるのかもしれない。

ただし日経新聞の記事にも、やや違和感がある。10-12月期の決算内容を精査したにもかかわらず、製造業と非製造業の集計結果については全く報道していない。ふつうなら「海外の景気鈍化で製造業はXX%の減益となったが、非製造業はコロナ規制の緩和でXX%の増益だった」などの解説を加えるはず。それがないから、この記事には何となく‟稚拙さ”が感じられる。はたして真実は、どちらの新聞が伝えているのだろうか。

        ≪16日の日経平均 = 上げ +194.58円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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増益なの? 減益なの? : 4-6月期・決算

2022-08-17 07:40:14 | 利益
◇ ソフトバンクが大混乱要因に = 上場企業の4-6月期決算がほぼ出そろった。ところが集計したSMBC日興証券は「純利益が18%の増加」と発表。日経新聞は「26%の減益」と報じている。SMBCは旧東証1部の1237社、日経は東証プライムの1160社を対象にしているが、なんで正反対の結果が出たのか。答えはソフトバンクが異常に大きな損失を計上したためである。

SMBCによると、製造業の利益は前年比で横ばい。非製造業はコロナ規制の解除で、49.7%の増益だった。また22年度の通期としては、世界経済の停滞により横ばいになるとみている。一方、日経は自動車・電機・食品が減益。商社・石油・鉄鋼が増益。通期では4%の増益になると予想した。そして最大の違いは、SMBCがソフトバンクを集計から除外、日経は算入していることだ。

ソフトバンクは3兆1627億円の損失を計上した。保有する株価の値下がりが主な原因。とにかく四半期の赤字がこんなに巨大になったことは、初めての経験だ。これを全体の集計から除外した方がいいのか。それとも算入すべきなのか。物価高や経済の正常化が企業業績に与えた影響をみるには、ソフトバンクを除いた方がいいかもしれない。だがソフトバンクも上場企業の1員であることに違いはない。

この問題は、あとあとまで尾を引く。たとえば7-9月期の決算が増益になったとしよう。この場合「2期連続の増益」とは書きにくい。しかし「一転して増益」でもなさそうだ。さらに来年の4-6月期についても、全く同様の事態が発生する。その結果、「ソフトバンクを入れたら増益、入れないと減益」なんて判りにくい発表になりませんように。

        ≪16日の日経平均 = 下げ -2.87円≫

        ≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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企業業績の先行きに 黒雲 (上)

2022-04-05 07:39:02 | 利益
◇ 物価と人件費の上昇でコストが増大 = 間もなく3月期決算の発表が始まるが、企業の業績予想は世界的に右肩下がり。欧米の先進国をはじめ中国や新興諸国、それに日本の企業も、増益率の低下や減益に落ち込む見通しが増えている。コロナの影響もあるが、主たる原因はエネルギーや資源価格の急騰。それに人件費の上昇が重なって、コストが増大しているためだ。ウクライナ紛争の影響が大きいと言えるだろう。

アメリカの情報会社リフィニティブがアナリストの予想を集計したところによると、SP500を構成する企業の1-3月期の純利益は前期比6%の増益だった。これまでの2ケタ増益から半減する。しかも原油の高騰で大幅な増益となったエネルギー業を除くと、純利益は1%の増益にとどまるという。なかでも物価上昇の直撃をうけた一般消費財業は、12%の減益になる見込みだ。

ヨーロッパの事情も同じ。シティ・グループが発表したイギリスを除くヨーロッパ企業に関する予測では、22年の1株当たり利益増加率は3%。前回の予測8%を大きく下方修正した。ユーロ圏の消費者物価は3月に7.5%まで上昇しており、やはり消費関連企業の落ち込みが著しい。ロシアからのLNG(液化天然ガス)供給不安が、心理的にきわめて大きい。

中国でも3月のPMI(購買担当者景況指数)が、製造業も非製造業も50を割り込んだ。ウクライナ紛争で原材料価格が高騰したところへ、コロナによる都市封鎖が重なった。恒大グループ関連の倒産も多発。企業業績に関する予測はまだないが、先行きは決して明るくない。また多くの新興諸国が自国通貨を防衛するために、政策金利を引き上げた。景気が悪化し、企業業績が低下することは避けられない。そして日本は?

                       (続きは明日)

        ≪4日の日経平均 = 上げ +70.49円≫

        ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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難解! 3月期決算の読み方

2021-05-25 07:59:20 | 利益
◇ ソフトバンクの巨大利益が波紋 = 超金融緩和時代が終わりに近づき、株価は企業の決算をより重視せざるをえなくなった。そんなとき東証1部上場会社の3月期決算がほぼ出そろい、SMBC日興証券が集計している。それによると、1329社の純利益は前期比28.1%の増加。内訳では製造業が35.6%の増益、非製造業も20.8%の増益だった。コロナ不況にもかかわらず、非常に好調な業績であり「結構、結構」と言えるだろう。

だが非製造業に属するある1社を除くと、様相は一変する。非製造業全体の純利益は、前期比36.3%の減益に急降下。要するに製造業は好調だが、コロナの影響で非製造業は絶不調という現状を反映した結果となる。非製造業が大幅な減益となるため、1329社全体の利益も2.6%の減少となってしまう。「結構」どころの話ではない。

その1社とは、ソフトバンク・グループ。なんと4兆9879億円の純利益を計上した。トヨタの利益は2兆2452億円だったから、その2倍以上の利益を上げたことになる。ソフトバンクの巨大利益は、その大半が海外での投資会社の株高による含み益。したがって、これまでのところでは日本経済の成長に全く貢献していない。

これまで株価は、中央銀行による超金融緩和政策を頼りに上昇してきた。だが今後はもっと企業業績を土台にしなければならないだろう。そこでは株価と利益の関係、たとえばPER(株価利益率)などの指標が重視される。ところがソフトバンクを含めると、PERが低く出過ぎてしまう。テレビで専門家は「SB抜きの数字」を使って解説するのだろうか。

       ≪24日の日経平均 = 上げ +46.78円≫

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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コロナが分断した 企業業績

2021-02-24 07:48:50 | 利益
◇ 3月期決算の最終見通し = 日経新聞が上場企業3月期決算の最終見通しを集計した。それによると、全産業1553社の純利益は前年度比19.0%の減少になる。利益の水準はピークだった18年3月期の4割程度だという。このうち製造業は5.7%の増益になるが、非製造業は44.4%の大幅な減益。コロナがはっきりと、勝ち組と負け組を分断した。

製造業は3年ぶりの増益。3か月前の予想では19%の減益だったが、一転して増益になる。業種としては非鉄と電機、自動車の業績が好転した。ただ自動車・同部品は、3か月前の57%減益予想から21.7%減益に改善したものの、まだ減益から抜け出せない。鉄鋼も縮小はしたが、まだ赤字。電機と自動車は、“巣ごもり”効果が大きかった。

非製造業は、土砂降りの雨中。業種別にみても黒字は皆無。すべてが減益で、鉄道・バス、空運は赤字に転落する。小売り業は通販などが伸びたが、全体では5.7%の減益。サービス業は19.8%の減益となる見込みだ。こうしたなかで陸運・海運は、製造業の復活を反映して業績を改善している。

大手証券会社の予測によると、21年度の純利益は48-71%の増益になる。ただ、その前提としてワクチンの接種でコロナの勢いが止まること。またオリンピックが開催できることを挙げている。しかし、このニ大前提が不透明だから、予測自体も不確かと言わざるをえない。ここでもコロナが、すべてを握っている。

       ≪22日の日経平均 = 上げ +138.11円≫

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

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