経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

個人消費が落ち込む : GDP速報

2024-05-18 07:35:30 | 景気
◇ 物価の上昇で節約ムード広がる = 内閣府は16日、ことし1-3月期のGDP速報を発表した。それによると、名目経済成長率は年率換算でプラス0.4%、実質成長率はマイナス2.0%だった。不正認証問題で自動車の生産が減少、消費や輸出にも悪影響が及んだ。しかし名目成長率はプラスを維持。物価が3.6%上昇したために、実質成長率はマイナスに沈んでいる。こうしたなかで特に注目されたのが、個人消費の落ち込み。これで4四半期連続のマイナスとなった。

各項目を年率換算の数値でみると、個人消費はマイナス2.8%。また企業の設備投資はマイナス3.2%、住宅投資はマイナス9.8%、輸出はマイナス18.7%と振るわなかった。なかでもGDPの約6割を占める個人消費の低迷は大きい。物価高で個人が節約志向を高めたことが原因だと解析されている。自動車の不正認証問題は一過性だが、節約志向は物価高が続く限り消滅しないかもしれない。

物価高による実質値の低下現象は、雇用者報酬の数字にも明確に表われている。1-3月期の雇用者報酬は名目では0.7%の増加だったが、実質では0.4%の減少になった。ちなみに23年度をみると、名目がプラス1.8%、実質はマイナス1.6%となっている。受け取る賃金の金額は増えたが、使い出は前年を下回る。だから節約という筋道だ。

岸田首相は「物価高を上回る賃上げを実現し、経済の好循環が始まることを期待する」と、何度も発言している。しかし実態は、まだそうならない。企業は賃上げに努力しているが、物価が下がらないので追い付かない。政府は補助金による見せかけの物価対策は止めて、基本的な物価対策を講じるべきだ。そうでないと、いつまでたっても実質成長率のマイナスが続いてしまう。

        ≪17日の日経平均 = 下げ -132.88円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     

財源と実効性が 弱点 : 新経済対策

2023-09-29 07:46:32 | 景気
◇ 成長政策を挙げたのは進歩だが = 岸田首相は26日の閣議で「新たな経済対策を10月末までにまとめるよう」関係閣僚に指示した。対策では①物価高対策②持続的な賃上げと地方の成長③国内投資の促進④人口減少を乗り越える社会変革⑤国民の安心・安全の確保--の5本柱を軸とする方針。物価対策などのバラマキだけでなく、投資の促進など成長戦略にも力を入れる点は一つの進歩。だが脱炭素に向けた項目がないのは、どういう訳だろうか。

物価高対策は、ガソリンや電気・ガス代の高騰を抑える補助金の支給。これまで計9兆3000億円の予算を組んだが、これをどこまで延長するのか。また賃上げ支援は、賃上げした企業への減税を考えているようだが、税金を払っていない企業をどうするのか。さらに人口減少を乗り越える変革に、少子化対策を含めるのか。含めるとしたら巨額の財源が必要になってくる。こうした問題点が数多い。

最大の問題は財源。具体策が固まっていないから算定できないが、過去の経験からすると少なくとも20兆円は必要だろう。政府は予備費の使い残しや税収増で、その半分ぐらいは埋めるつもり。あとはまた国債の増発に頼ることになる。いずれにしても、選挙を控えて物価対策などのバラマキは止められない。困ったことである。

国内投資の促進では、半導体や蓄電池あるいはバイオ関連を対象に、企業のコストを削減するための投資減税を考えているようだ。まずはこの部門に、いくらの財源が割り当てられるかに注目。それによって政府の真剣度が見えてくる。ただ半導体にしてもバイオにしても範囲は広い。どこに集中して支援するか。そこをはっきり決めないと、この分野でもバラマキが起こってしまう。要は実効性である。

        ≪28日の日経平均 = 下げ -499.38円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

「軟着陸」どころか「無着陸」? アメリカ経済

2023-07-25 07:16:44 | 景気
◇ NY市場の夢は膨らむばかり = 物価はこのまま落ち着いて行く。来年には2%程度の上昇率になる見通し。だからFRBは今週の利上げを最後として、9月は金利を据え置く。その結果、景気は下降するが、その程度はきわめて軽い。景気後退にはならないだろう。--これがニューヨーク市場で広まった「軟着陸」説である。ダウ平均株価を大幅に押し上げた最大の原動力となった。

最近のニューヨーク市場には、もっと極端な楽観説が出現した。物価は間もなく沈静化し、FRBは早めに金融政策を緩和へと転換する。このため景気はほとんど下降しない。つまり「軟着陸」説では飛行機のタイヤが滑走路に触れるが、「無着陸」説ではタイヤが地面に触れることなく再上昇するというシナリオだ。この超楽観説を受けて、株価はさらに上昇した。

たしかにアメリカのインフレは、順調に終息しつつある。6月の消費者物価は前年比3.0%の上昇。2年3か月ぶりに4%を下回った。小売り売上高は1.5%の増加だったが、物価上昇分を差し引いた実質値では減少している。また6月の平均時給は前年比4.4%の増加で、前月と変わらなかった。中古住宅の価格も、5か月連続で下落している。

こうした状況のもとで、FRBはきょうとあす金融政策決定会合を開く。そこでは0.25%の利上げを決めると思われるが、パウエル議長が「9月以降は利上げしない」と示唆する公算はきわめて小さい。相変わらず「経済データしだい」と、はぐらかすのではないか。むしろ「無着陸」説まで飛び出した市場の超楽観派にお灸を据えるため、「9月にも利上げはありうる」と言う可能性がある。そのとき市場の「軟着陸」「無着陸」派は、どんな反応を示すのだろうか。

        ≪24日の日経平均 = 上げ +396.69円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

ハシゴがはずれて 倒産が続出? (下)

2023-07-21 07:26:26 | 景気
◇ “ゾンビ企業”が19万社もある現実 = 経営破綻の状態でも、借り換えや補助金によって倒産しない会社。こうした企業を“ゾンビ企業”と呼んでいる。BIS(国際決済銀行)はその定義をきっちり決めているが、おおざっぱに言えば「債務の返済額が利益を上回る状態」だ。帝国データバンクの集計によると、この“ゾンビ企業”は約19万社。コロナ前に比べると、3割ほど増えた。この増加分のほとんどが、ゼロゼロ融資による延命の結果だとみられている。

この7月以降、ゼロゼロ融資の本格的な返済が始まる。その結果は倒産する企業が増えるだけでなく、“ゾンビ企業”も増やすことになるだろう。こういう状態は、金融機関の経営にも重大な影響を及ぼす。金融庁によると、金融機関が抱える灰色債権はリーマン・ショック後の70兆円に近付きつつある。灰色債権とは、返済条件の変更や元利払いの猶予が必要となった貸付金。もし融資先が倒産してしまえば、金融機関の損失になる。

さらに近い将来、日銀が実質的な利上げに踏み切る可能性がある。仮にそうなれば、灰色債権の借り換え作業はきわめて困難になり、企業の倒産を加速させる危険がある。ゼロゼロ融資の返済は、このように多方面にわたって大きな影響を及ぼす。このため政府も対策を考えているようだが、またまた補助金のようなバラマキなら事態を先延ばしするだけ。

42兆円もの税金を使ったゼロゼロ融資。金融機関は全くリスクなしで、利子収入を手にすることができた。このため形ばかりの審査で貸し出したケースが多い。いちばん肝心な「ゼロゼロ資金で、その企業をどう立て直すか」を考えなかった金融機関が少なくなかった。政府や自治体の監督も不行き届きだった、と言わざるをえない。

        ≪20日の日経平均 = 下げ -405.51円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

足踏み状態の 景気回復

2023-07-12 07:59:36 | 景気
◇ 意外に悪かった景気ウオッチャー調査 = 内閣府は10日、6月末に実施した景気ウオッチャー調査の結果を発表した。それによると、全体の現状判断指数は53.6で前月より1.4ポイント悪化した。内訳をみると、家計関連、企業関連、雇用関連の全部門で悪化している。家計関連では飲食・小売りが悪化、企業関連では製造業も非製造業も悪化した。また人手不足なのに、雇用関連も悪化している。

この調査はタクシー・ドライバーやレストランの経営者など、街で実際に働いている2050人を対象に、内閣府が毎月実施している。回答を「いい」から「悪い」の5段階に分けて指数化しており、指数の低下は「悪い」の回答が多かったことを示す。コロナ規制の解除で人出も増えている状況からみて、今回の結果はやや意外だったと言えるだろう。

ことし1月の指数は48.1。そこから5月の55.0まで順調に上昇してきた。それが先行き判断指数も52.8で、今回を1.6ポイント下回っている。景気回復はこの調査からみる限りは、足踏み状態だと考えられる。しかし内閣府は「景気は穏やかな回復を続けている。先行きも穏やかな回復が続く」と相変わらずだ。

なぜ足踏みし始めたのだろう。1つはコロナ規制の解除による景気の回復が、一巡したこと。ここ半年ほど続いた回復感が薄れたことは確かだろう。もう1つは、経済そのものの動きの反映。たとえば5月の実質賃金は1.2%の減少、消費支出は4.0%の減少。こうした基本的な経済の弱さが、街角の経済感覚にも表れたのではないか。

        ≪11日の日経平均 = 上げ +13.84円≫

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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