経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

コロナと物価高で 傷む家計

2022-09-07 07:27:01 | 家計
◇ 実質賃金は4か月連続で減少 = 厚生労働省は6日、7月の毎月勤労統計を発表した。それによると、労働者1人当たりの現金給与総額は37万7809円で、前年比1.8%の増加だった。増加は7か月連続。しかし物価の上昇が大きかったため、実質賃金は1.3%減少した.。減少は4か月連続。賃上げはそこそこ実現したが、物価の騰貴で目減りする現象が続いている。

現金給与総額を就業形態別にみると、正社員は50万0828円で前年比1.7%の増加。パート労働者は10万6167円で3.0%の増加だった。コロナによる行動規制が解除されたため、飲食サービス業が13.0%、生活関連サービスが5.7%増加するなど、サービス関係の賃金増加が目立っている。パートの時給も1241円で、前年を1.9%上回った。

コロナ前19年7月の数字と比べてみよう。まず現金給与総額は、19年7月が37万4609円だった。したがって、この3年間で3200円しか増えていない。このうち正社員は2571円の増加、パート労働者は2334円の増加だった。コロナ禍で経済活動が抑制された結果だったと考えられる。だが規制が解除されると、こんどは物価高によって実質賃金が減少傾向に陥った。

総務省は6日、7月の家計調査を発表した。それによると、2人以上世帯の消費支出は28万5313円だった。前年比では3.4%も伸びている。やはり規制解除の影響で、旅行や外食関係の部門が大きく増加した。実質収入が減っても、巣籠もりで貯めたおカネを支出したのだろう。だが実質賃金の目減りが続けば、こうした貯金の取り崩しも長続きはしない。

        ≪6日の日経平均 = 上げ +6.90円≫

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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1400兆円にのぼる 巨大な‟死に金”

2022-04-01 08:03:38 | 家計
◇ 資金循環統計が示す不条理 = 日銀が発表した資金循環統計によると、家計の金融資産は昨年12月末時点で2023兆円となった。前年比4.5%の増加で、初めて2000兆円を突破した。1992年に1000兆円に達しているから、ちょうど30年で2倍になったことになる。このうち現金・預金は、前年より3.3%増えて1092兆円だった。金融資産全体の54%を占めている。株式は212兆円、投資信託は94兆円を保有している。

アメリカの場合、家計の金融資産に占める現金・預金の割合は1割程度。ユーロ圏でも3割ほどだ。日本の54%という割合は異常に高い。さらに企業の金融資産は1279兆円だが、ここでも現金・預金は319兆円もある。家計と企業を合わせると、現金・預金の総額は1411兆円にも達する。しかも金融機関は預かった預金の58%しか貸し出していない。残りは国債などの購入に充てている。

つまり1400兆円という膨大なおカネが有効に使われず、その大半が‟死に金”となっている。これはどう考えても異常であり、これでは経済の発展は望めない。では、なぜこのような不条理がまかり通るのだろうか。その大きな原因は、日銀のゼロ金利政策に求められる。預金をしても金利が付かない。貸し出しをしても利益が出ない。これでは、おカネは回らない。

日銀はゼロ金利にこだわり、最近は10年もの国債に指し値オペまで実施している。このため海外との金利差が拡大、円安が進行し物価を上げる。逆に少しでも金利を上げれば、家計は利子所得が入るから消費を増やせる。金融機関も貸し出しに努力するようになる。円安が抑えられて、物価も上がりにくくなる。日銀は発想を転換すべきである。

        ≪31日の日経平均 = 下げ -205.82円≫

        ≪1日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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2000兆円の 光と影 : 個人の金融資産

2022-01-06 07:42:25 | 家計
◇ 貧富の格差は広がるばかり = 日銀の集計によると、個人の金融資産は昨年9月末で1999兆8311億円になった。前年より5.3%増え、過去最大を更新した。金融資産は1990年に1000兆円を超えたから、30年間で2倍になった計算。株価上昇の影響が最も大きく、円安によるドル資産の評価高も貢献した。アメリカの個人金融資産114兆ドル(1京2900兆円)には遠く及ばないが、それでも世界第2位の大金持ちとなっている。

資産の内容をみると、現金・預金が相変わらず多く、総額は1072兆円。前年より3.7%の増加だった。このうち現金の保有額は102兆円、預金は969兆円となっている。コロナ禍による消費の抑制も、現金・預金の保有額を増やしたと考えられる。株式の保有時価総額は218兆円で、前年より28.6%の増加。投資信託も90兆円で、24.0%増加した。

家計部門が豊かさを増していることは、喜ぶべきだろう。しかし、その影の部分もしだいに濃くなってきた。影というのは、貧富の差である。大量の株式を購入した人は、株価の上昇で大いに儲かった。この人たちの所得増が、金融資産の総額を押し上げている。だがその一方で、株を買う余裕のない人も少なくない。20年の家計調査によると、貯蓄が300万円未満の家庭は全体の25%を超えている。

個人の預金は1000兆円に近い。その多くは高齢者による預金で、老後の生活のために蓄えている。だから消費には回らない。もし、この預金に年1%の利子が付いたらどうだろう。年間10兆円の利子収入があれば、その半分ぐらいは消費に回るのではないか。日銀の超金融緩和政策は株価を押し上げ、一部の金持ちの資産を増大した。その一方で多くの人々の金利収入を奪ってきたと言えるだろう。

        ≪5日の日経平均 = 上げ +30.37円≫

        ≪6日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

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36兆円の 使い道は? : 家計の資金余剰

2021-09-24 07:33:30 | 家計
◇ 金融資産は2000兆円に接近 = 日銀の集計によると、6月末時点で家計の金融資産は1992兆円。この1年間で6.3%増加した。株価の上昇によるところが大きい。またコロナの影響で、支出が異常に抑えられ貯蓄が増加した。4-6月期だけをみると、コロナの影響による貯蓄の増加額は26兆円に達している。

金融資産の内訳をみると、株式は210兆円で前年比30%の増加。投資信託は89兆円で29%の増加だった。また現金・預金の合計額は1072兆円で過去最大。前年より4.0%増加している。このうち現金は102兆円、預金は970兆円だった。手元に現金を置いておく傾向は、いぜんとして強い。仮に預貯金に2%の金利が付くとすれば、個人の利子収入は年間20兆円に。ゼロ金利政策で、個人はそれだけ損をしていることになる。

2000兆円という金融資産の額は、日本のGDPの約4倍。大変な金額であることに違いはない。ところがアメリカの個人金融資産は、なんと109兆ドル、日本円で約1京2000兆円という大きさだ。アメリカでも株価の上昇が、金融資産を増やす原動力。ただコロナによる影響は、それほど大きくはない。アメリカ人はコロナ禍でもおカネを貯め込まず、消費に使っているようだ。

日本の場合、コロナの影響が出始めた昨年3月末の現金・預金額はちょうど1000兆円。したがって、その後の15か月で72兆円増加したことになる。こうしたおカネが、コロナの収束後は一気に消費に向かうと期待されているわけだ。特にこれまで抑制されていた飲食・旅行業は、その一点に賭けていると言ってもいい。貯め込まれた金額の半分が使われるとすると、消費支出の増加は36兆円。ただしコロナの先行きが不透明だと、おカネの使われ方は小さくなってしまう。

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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上場会社を 全部買える

2020-12-25 07:41:42 | 家計
◇ 個人が保有する現金・預金は1034兆円 = 日銀が21日発表した資金循環統計によると、9月末時点で家計部門が保有する金融資産の総額は1901兆円だった。この1年間で2.7%増えている。その内容は現金が97兆4000億円で、前年比5.8%の増加。預金は937兆円で4.8%の増加だった。また株式は181兆円で1.8%の減少、投資信託は72兆円で1.6%の増加となっている。

現金と預金の合計額は1034兆円。特に現金、つまりタンス預金の増加が著しい。コロナ対策で1人一律10万円を支給したことが、大きく影響したと考えられる。しかし、この統計は資金の流れだけを捉えており、一律給付がどれだけ現金保有の増加に寄与したかは判らない。それでも相当の部分が現金で保有されたとすれば、一律給付が本当にコロナ対策に役立ったのか。疑問が残る。

それにしても、1034兆円という金額は驚くべき大きさだ。たとえば政府が編成した来年度予算案は106兆円、比べてみればとても小さく見える。また日本のGDPはおよそ500兆円。さらに東証1部に上場している2160社の時価総額は670兆円。すべての株を購入しても、十分にお釣りがくる。

政府はこれまで個人が保有する現金・預金を、株式などの投資に向けさせようとする政策を講じてきた。しかし個人が保有する巨額の現金・預金は増え続けているから、政策が奏功したとは言い切れない。投資に向けさせようとするだけではなく、なぜ個人が現金・預金を増やし続けるのか。その原因を究明する必要があるのではないか。

       ≪24日の日経平均 = 上げ +143.56円≫

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 
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