経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

「廃炉から国民を守る党」は いかが?

2019-08-31 07:37:45 | 原発
◇ 電気料金への上乗せを拒否しよう = 東京電力が福島第2原発1-4号機を、すべて廃炉にすることを正式に決めた。事故で放射能まみれになった第1原発1-6号機はすでに決定済みなので、これで福島県の原発は完全に姿を消すことになった。ただ廃炉の完了までには、40年以上の歳月を要する見込み。また第2原発4基の廃炉にかかる費用は、合計4100億円にのぼると試算されている。

東日本大震災が起こる前、日本では54基の原発が稼働していた。そのうち福島第2原発を入れて、これまでに廃炉と決まった原発は24基。残る30基のうち、原子力規制委員会の審査を受けて合格したのは9基だけ。あとの21基は審査待ちとなっているが、そのうちの半数ぐらいは老朽化のために廃炉となる可能性が高い。

東京電力は廃炉のための費用を積み立ててきたが、まだ1900億円以上が不足。これを10年にわたって分割、償却する方針だ。しかし財源を捻出できず、結局は電気料金に上乗せすることになるとみられている。廃炉費用が見積もりを上回れば、その分も上乗せされるだろう。こうした状況は、廃炉にする原発を抱えた他の電力会社でも同じ。

「原発は安い電源」と宣伝し、大いに儲けてきた電力会社。それが「後始末のための費用は、消費者にお願いします」というのは、あまりにも身勝手だ。ここは一つ「NHKから国民を守る党」ではないが、「廃炉から国民を守る党」でも作ってもらいたいもの。そうでもしないと、燃料棒から放射性廃棄物の処理費まで、国民にツケが回ってきてしまう。

       ≪30日の日経平均 = 上げ +243.44円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   
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日米交渉は アメリカの判定勝ち

2019-08-30 07:13:12 | トランプ
◇ “奥の手”を温存したトランプ大統領 = 日米2国間の貿易交渉が、大筋で合意した。9月末までの署名・成立を目指す。注目された日本側の農産物輸入は、すべてTPP(環太平洋経済連携協定)並みに自由化。たとえば牛肉は、現在38.5%の関税率が33年には9%にまで段階的に引き下げられる。すでにTPPでは26.6%に下げられているので、アメリカ産についても協定が発効すれば、即時この水準が適用される。

一方、アメリカ側は広範囲の工業製品について関税を撤廃する。ただ乗用車にかかる2.5%、ピックアップ・トラックにかかる25%という関税は変更なし。また大統領権限で実施できる輸入自動車に対する追加関税や数量制限についても、日本に対して適用しないという約束はしなかった。トランプ大統領は“奥の手”を温存したわけである。

日本側は9月の署名に向けて、こうした大統領権限を日本には適用しない確約を取り付けたい方針。だが、その望みは全くムリだろう。現にトランプ氏は「現時点では考えていないが、あとになってやるかもしれない」と、脅しともとれる発言をしている。ここまでが精一杯と言ってしまえばそれまでだが、“奥の手”を封じられなかったことで、日本側は判定負けになった形だ。

最後に日本側は、アメリカ産のトウモロコシ250万トンを購入することになった。日本国内で害虫の被害が広がり、飼料用のトウモロコシが不足するからだという。だが、これはトランプ大統領の票田であるアイオワ州が中国向けに売れず、苦境に陥っていることへの支援。こんなお土産まで付けても、トランプさんは隙をみせなかった。

       ≪29日の日経平均 = 下げ -18.49円≫

       ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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我慢比べなら 負けない? 中国 (下)

2019-08-29 08:01:11 | 中国
◇ 勝負を決める最大のポイントは? = 中国では最近、現政権の幹部と過去に政権を担った長老による秘密会議が開かれた。内容はいっさい公開されていないが、米中経済戦争についても議論されたことは確かだろう。その結果、習主席は①社会主義経済政策の根幹である「中国2025」に関しては全く譲歩しない②アメリカの関税引き上げに対しては報復し、徹底抗戦する③結果として成長目標を達成できなくても我慢する――ことで、合意を取り付けたのではないだろうか。

これで共産党内部の意思統一は完了した。習政権としては、あとは持久戦に持ち込み、トランプ大統領の再選阻止に全力を挙げる。そのためには関税引き上げ競争が激化し、アメリカ国民の不満が高まった方が望ましいとさえ考えているのではないだろうか。その習主席にとって最大のリスクは、経済成長率が下がり過ぎること。特に企業の脱出が進行して成長率が5%に近づくようだと、やはり指導力を疑われることになりかねない。

トランプ大統領にとっても、最大のリスクは景気の悪化である。不況になれば、来年の大統領選挙に悪影響を及ぼすことは必至。だからFRBを責め立てて、大幅な利下げを断行させようとしている。ところが関税引き上げで物価が上昇すれば、利下げはしにくくなってしまう。自らが播いたタネではあるが、苦しいところに違いない。

関税引き上げに対する批判も、選挙には影響してくる。すでに小売業協会をはじめ、自動車・石油・衣料品・靴・家電・大豆などの業界団体が、反対や批判の態度を表明した。こうした動きを抑え込み、トランプ氏が再選を果たすための方策は何か。それは「いま中国を叩いておかないと、経済だけでなく、軍事や宇宙の面でも負けてしまう」という持論を、有権者の過半数に納得してもらえるかどうか。その一点にかかってくるだろう。

       ≪28日の日経平均 = 上げ +23.34円≫

       ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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我慢比べなら 負けない? 中国 (中)

2019-08-28 08:34:03 | 中国
◇ 持久戦になる公算が大 = 米中経済戦争は長引き、我慢比べになりそうだ。その場合、双方のアキレス腱は何だろう。まずアメリカのとっての問題点は、物価が上昇しやすくなること。たとえばスマホは、流通する9割が中国製。関税分だけ値上がりする可能性は大きい。こうして物価が上昇すれば、人々は支出を抑制する。すると、経済はインフレと不況が共存するスタグフレーションに陥りやすい。

アメリカの景気は、すでにピークを過ぎたのかもしれない。4-6月期の実質成長率は2.1%だったが、企業の設備投資は3年ぶりのマイナスとなっている。製造業の景況感指数は6月、2年9か月ぶりの低水準に落ちた。そこへ中国製品の取扱量が減少すれば、関連する企業の業績は下向きとなり、失業者も増加しかねない。選挙を控えて、トランプ大統領としては最も避けたいところである。

中国の場合は、アメリカ製品が高くなれば他の国から代替輸入しやすい。だから物価の上昇や関連企業の業績悪化は、アメリカほど心配する必要はない。しかし怖ろしいのは、企業活動が国外に移転してしまうこと。すでに外国企業だけではなく、中国の民間企業の一部が、タイやベトナムなどに脱出し始めている。

この傾向が強まれば、景気は悪化し失業者も増大する。そうなれば中国の成長率は、政府が目標とする6%を割り込むことは必至だろう。所得の向上や経済構造の改革など、基本的な政策にも狂いが生じ、国民の不満が高まることも心配になってくる。習近平主席としては、最も避けたいところだ。

                              (続きは明日)

       ≪27日の日経平均 = 上げ +195.04円≫

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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我慢比べなら 負けない? 中国 (上)

2019-08-27 07:50:35 | 中国
◇ 泥沼に落ち込んだ米中経済戦争 = 中国政府は先週23日、アメリカ製品5078品目・750億ドル分について5-10%の関税を上乗せすると発表した。アメリカの関税引き上げ第4弾に対する報復措置で、9月と12月とに分けて実施する。中国はすでにアメリカ製品1100億ドル分に高関税をかけており、これでアメリカからの輸入品のほぼすべてに報復関税がかけられることになった。

これに対してトランプ大統領は直ちに反撃。第1-3弾で中国製品2500億ドル分に課した25%の関税を30%に引き上げるほか、9月から実施する第4弾の関税率を予定していた10%ではなく15%にする方針を打ち出した。米中経済戦争はついに泥沼に陥り、さらに数量制限や通貨面での争いに発展する危険性も出てきている。

中国がアメリカから輸入している主な品目は、農水産物・冷凍食品・日用品・医薬品・工業原料・自動車・原油など。その多くはアメリカ以外の国から代替輸入することが可能だ。これまではアメリカに対する貿易黒字を拡大させすぎないために、輸入しているという面もあった。だからアメリカ製品が高くなっても、それほどの問題はないと思われる。

アメリカが第1-3弾の関税引き上げで対象としたのは、半導体・光ファイバー・家具・家電・果物など。しかし第4弾では、スマホ・パソコン・ゲーム機などの消費財が多い。しかも、ほとんどが代替輸入が難しいという。だから物価は上がりやすくなり、消費者の不満も出やすくなる。つまりモノの流通という面からだけみると、中国の方が我慢しやすいと言えるだろう。

                            (続きは明日)

       ≪26日の日経平均 = 下げ -449.87円≫

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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