経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

今週のポイント

2020-08-31 07:54:04 | 株価
◇ 安倍退陣のショックは一過性 = ウオール街は活況に沸いている。ダウ平均は先週724ドルの値上がり。半年ぶりに2万8000ドル台を回復、さらに年初来高値も更新した。ナスダック指数は史上最高値を更新中。トランプ政権がコロナ回復者の血液を治療に使える決定をしたことが、主な上げ材料となっている。これで経済再生が早まるというわけだが、期待が先走りしている感じは否定できない。

日経平均は先週38円の値下がり。ニューヨーク市場の活況に引きずられて、週初は上げていた。しかし金曜日には「安倍退陣」のニュースが午後2時すぎに舞い込み、大きく下落した。一時は600円以上も売り込まれたが、終り値では326円安まで戻している。投資家も安倍首相の突然の辞任にはびっくりしたが、経済への悪影響はほとんどないと判断した結果だろう。

市場の関心は一気に、9月半ばに開く自民党の総裁選へと移行した。ただ誰が次期首相に選出されるとしても、政策が大きく変わる可能性は全くない。したがって安倍退陣のショックは一過性で、経済に対する悪影響もないと考えられるわけだ。この点に関して唯一の注意点は、選挙のあと自民党内の結束が乱れないかどうかだろう。

今週は31日に、7月の鉱工業生産、商業動態統計、8月の消費動向調査。1日に、4-6月期の法人企業統計、7月の労働力調査、8月の新車販売。アメリカでは1日に、8月のISM製造業景況指数。2日に、7月の貿易統計、8月のISM非製造業景況指数。4日に、8月の雇用統計。また中国が31日に、8月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

死者が語る コロナ肺炎の危険度 (25)

2020-08-29 07:35:08 | なし
◇ 泥沼のアメリカ・ブラジル・インド = 日本時間28日午前0時の集計。いぜんとして、アメリカ・ブラジル・インドの状態が最悪だ。この3か国の死亡者数はいずれも、1週間で6500人以上の増加。アメリカは18万人、ブラジルは12万人に接近、インドは6万人を超えた。あとはイギリスが4万人台、イタリアとフランスが3万人台、スペインとイランが2万人台、ロシアと南アフリカが1万人台で続いている。

3か月前の数値と比べると、まず感染者数はアメリカが412万人の増加。ブラジルは330万人、インドは315万人の増加だった。死亡者数はアメリカが7万9000人、ブラジルが9万2000人、インドが5万6000人の増加となっている。とにかく、この3か国の感染者と死亡者の増え方は尋常ではない。

この3か国で共通しているのは、やはり徹底的なコロナ対策を講じられない点だろう。アメリカでは経済再生を重視する州が多い。ブラジルは、大統領が最初からコロナ対策を無視してきた。インドも経済を封鎖すると、生活できなくなる人が多い。対照的にヨーロッパ諸国では、徹底した外出禁止が実施された。

日本の感染者数は6万5757人、死亡者数は1254人になった。3か月前に比べると、感染者数は4万9000人、死亡者数は358人増えている。この数値をどう評価するかは、なかなか難しい。日本でも規制緩和を求める声は強く、政府はGO TO トラベルに東京を含める方向で検討しているようだ。ただ死亡者数が2週連続して80人を超えたことは、やはり心配である。

       ≪28日の日経平均 = 下げ -326.21円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】    

病院にも 耐震化マークを

2020-08-28 08:08:43 | 耐震
◇ 全国246病院が倒壊の危険性大 = 「近ごろは薬をもらいに来るのも、おっかないよ」「クラスターなんかも出るしね」--病院の待合所で、お年寄り同士がこんな話をしていた。たしかにコロナ騒ぎが始まってからは、病院を訪れるにも少々の覚悟がいる。困ったものだと思っていたら、病院の安全性に関するもう一つの新たな数字が明らかにされた。

厚生労働省は、昨年9月に実施した病院の耐震化調査の結果を発表した。全国8311の病院を対象にしたが、耐震性が確保されている病院は全体の76.0%だった。あとの24%は全体に耐震性がない、一部に耐震性がない、不明である、という回答。特に注目されたのは、震度6強程度の地震で倒壊する危険が高い病院が246にものぼったことだ。

それでも1995年の調査では、病院の耐震化率は36.4%に過ぎなかった。それに比べれば、かなり改善されたとは言える。しかし最近の1年間をみると、この比率は1.5ポイントしか上昇していない。遅々たる歩みである。しかもコロナ患者の収容で、病院の経営は苦しくなっているところが多い。この際は国が無利子で全額を融資し、すべての病院を耐震化してもらいたい。

当面は全国の安全な病院に、大きな耐震化マークを付けさせる。これで病院を訪れる人も、少しは安心できるだろう。現在の状況では、76%の病院が大丈夫だと言われても、一般の人にはどの病院が安全なのか判らない。マークが見えれば、その不安は解消される。危険性が高い病院も、耐震工事を進める引き金になるのではないか。

       ≪27日の日経平均 = 下げ -82.00円≫

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

ワクチンしかない コロナ対策 (下)

2020-08-27 07:04:25 | なし
◇ 間に合いそうにないオリンピック = ワクチンを使ってコロナ・ウイルスを撲滅するまでには、いくつもの大きな関門がある。その第1は、有効性の問題。ワクチンの製造法は、大別するだけでもウイルスの毒性を薄める、毒性をなくす、DNAを使うなど、いろいろ。さらに、その先はそれこそ企業秘密で、製品の内容は千差万別だ。どのワクチンがどれほど効くのか、全く分からない。ウイルスの方も変異するから、ヨーロッパでは効いてもアジアでは無力なワクチンという事態も起こりうる。

第2の関門は、副作用の問題。副作用を起こさないためには、通常3年ぐらいの臨床実験が必要といわれる。しかし今回は急を要するので、各社とも臨床実験を最小限度で済まそうとしている。それだけ副作用が出る確率は、高くなるわけだ。このため各国政府は、仮に重大な副作用が出た場合、製薬会社の損害賠償責任は問わず、国が賠償に応じる制度を作ろうとしている。日本も国会に法案を提出する予定だ。

第3の関門は、実用化される時期。数社は来年早々からと言っているが、トランプ大統領は選挙を前に得点を挙げるため、10月にも実用化を目指しているとも伝えられる。だが投入が早ければ早いほど、そのワクチンの有効性や副作用の問題は大きくなるだろう。また早い段階で、どれだけの量が供給されるかも不鮮明だ。

常識的に考えると、大量のワクチンが実際に投入されるのは、早くても来春だろう。それが副作用もなく、大きな効果を挙げれば、先進国のコロナ禍は鎮静するかもしれない。ただし、そうなるのには相当な幸運が必要だ。しかも先進国がワクチンを奪取してしまったから、新興国にはなかなか行き渡らない。そんな状態で、オリンピックの開催はムリと考えざるをえない。

       ≪26日の日経平均 = 下げ -5.91円≫

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

ワクチンしかない コロナ対策 (上)

2020-08-26 08:13:30 | なし
◇ 行動規制では終息できない = 世界の先進国が、コロナ・ワクチンの争奪戦を展開している。WHO(世界保健機関)の調査によると、7月末の時点でワクチンの臨床実験が行われた事例は26件。このうちの数例は、最終段階の実験に入っている。このため各国政府は複数の製薬会社・研究所との間で、成功した暁には巨額の対価を支払ってワクチンを入手する契約を続々と結んでいる。いわば、ワクチンの“青田買い”だ。

たとえばアメリカは、英アストラゼネカ社や仏サノフィ社など数社と契約。これまでに15億回分のワクチンを確保、100億ドルの支出を決めている。またイギリスは2億5000万回分を契約。EUも独キュアバク社などから9億回分を入手、さらに米J&J社など複数社と交渉中だという。中国とロシアは外国に頼らず、自国での製造を支援する姿勢のようだ。

日本も負けてはいない。すでに英アストラゼネカ社と1億2000万回分、米ファイザー社と6000万回分の購入契約を結んだ。さらに国内の新興企業アンジェスや塩野義製薬を含む6社には、補助金を出して開発を援助する。このように各国が自国民の人数以上にワクチンを入手しようとしているのは、接種が1人2回必要なこと。またワクチンの有効性が不確かなため、何種類かのワクチンを用意したいと考えているからだ。

各国がワクチンの獲得競争に乗り出した理由。それは人々の外出規制や店舗の閉鎖など、経済活動を規制すればコロナ感染者は減少する。しかし規制を緩めれば、感染者は再び増加してしまう。この繰り返しを続けていたのでは、コロナを終息させられない。とすれば、やはりワクチンの力に頼るしかないのではないか。こうした考え方が強まり、ワクチンの争奪戦が始まった。ところがワクチンが入手できたとしても、それで万々歳というわけにはいかない。

                             (続きは明日)

       ≪25日の日経平均 = 上げ +311.26円≫

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

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