経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

評判が悪すぎる 定額減税

2024-06-14 07:21:04 | 税金
◇ 岸田首相の大いなる誤算 = 所得税と住民税の定額減税が6月から実施された。原則として1人当たり所得税が3万円、住民税が1万円の減税となる。したがって夫婦と子ども2人の世帯では、16万円の減税となる計算。ただ納税者が年収2000万円以上の場合は対象外、減税の対象者は9500万人になる模様。岸田首相は「この措置によって家計の収入増が物価高を上回り、経済の好循環が始まる」と胸を張った。

だが評判は、すこぶる悪い。新聞・テレビ・研究所などが一斉に世論調査を実施したが、その結果は「ほとんど6割以上が評価しない」と答えている。たとえば朝日新聞の例をみると「評価しない」が68%、単なる「人気取り政策」と答えた人が76%にものぼった。減税は誰にも喜ばれる。だから内閣支持率も上向くに違いない。岸田首相のこうした期待は、あっけなく吹き飛んでしまった。なぜだろう。

給与の明細表に減税額の記載を義務付けるなど、企業側の負担が増大した。電気やガスに対する補助金を停止するから、せっかくの減税が相殺されてしまう。今回の定額減税に関しては、理解に苦しむ点も少なくない。だが国民の最大の不満は、減税が一時的な措置で将来への希望につながらないことにある。要するに傷口に膏薬を貼るだけの、バラマキでしかない。

岸田首相は「これで経済の好循環が始まる」と期待するが、国民の多くはそう考えない。そこに悲劇的とも言える、考え方のギャップがある。だから内閣支持率は上がらない。更生保護に関する文献を読んでいたら「真の慈善は水を与えることではなく、井戸を掘ることだ」という言葉に出会った。いま岸田首相には、この言葉を贈りたい。でも、もう遅いか。

        ≪14日の日経平均 = 上げ +94.09円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】
 
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「減税⇒選挙⇒増税」は 困ります!

2023-10-11 07:21:39 | 税金
◇ 減税論が飛び交う永田町 = コトの発端は9月26日の閣議。岸田首相は新経済対策の作成を指示したが、この席で「税や社会負担の軽減など、あらゆる手法を動員する」「成長の成果である税収増を国民に適切に還元すべきだ」と強調した。所得税か法人税か消費税か? 永田町ではその日から、減税論が飛び交っている。自民・公明党が減税に傾いたため、野党はお株を盗られた形で意気消沈することとなった。

岸田首相はしばしば「賃上げや半導体などの戦略投資を後押しするための企業減税」が必要だと述べている。したがって、この種の減税が実施されることは、まず確実。さらに一般国民に対しても「成果を還元する」と明言しているので、所得減税も実施されそうだ。ただ消費税は混乱が起きる可能性があり、減税は難しそう。結局は所得税と租税特別措置法による法人減税が行われる公算が強い。

ただ、その規模はまだ不明。22年度は税の自然増収が約6兆円。これにコロナ予備費の使い残しなどを加えると、10兆円あまりの財源は確保できる。しかし減税規模は、もっと大きくなるに違いない。そのうえガソリン・電気・ガス代の補助、少子化対策、防衛費の大幅増、脱炭素政策費など、兆円単位の支出がずらりと並ぶ。いったい、どこからおカネが出てくるのだろう。

いま自民・公明の与党議員が減税議論に夢中なのも、これが選挙戦での票集めに抜群の効果を発揮するからだ。だから減税は多岐にわたり、額は多ければ多いほどよい。しかし選挙の前の大判振る舞いが、選挙後には増税となって返って来る可能性は決して小さくない。財源を明示しない減税論は、要注意なのである。

        ≪10日の日経平均 = 上げ +751.86円≫

        ≪11日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
   
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あめ玉 ⇒ 統一地方選 ⇒ 増税? (下)

2023-03-24 07:30:39 | 税金
◇ 増税ラッシュはお断わり = 政府は物価対策でも、新たな施策を積み上げることになった。その中核は地方創生臨時交付金に1兆2000億円を追加、自治体が物価対策を充実できるようにする。LPガスに対する補助金や、低所得世帯へ一律3万円、子ども1人に5万円の支給など。この費用は22年度の予備費から2兆円を支出する。予備費を使い残さないようにするためだ。さらに自民党内では、出産費用や小中学校の給食を無償化する案も検討されている。

この4月には、統一地方選挙と衆参両院の補欠選挙が実施される。少子化対策や物価対策の拡充は、有権者にとっても心地いい話。これをお土産にすれば、与党の候補者は票を集めやすい。だから、そのあめ玉をいま大量生産しているのではないか。もちろん政治家が有権者の求める施策を実施することに、なんら問題はない。ただし財源の問題に触れないことは、大問題だ。

政府が財政支出を増やす場合、その財源を賄う方法は3つある。①他の項目で支出を削減する②国債を発行する③増税する--の3つだ。このうち支出の削減は出来そうもないし、やる気もなさそうだ。また国債はこの3月末で、発行残高が確実に1000兆円を突破する。GDP比も先進国では最悪だから、そんなに多くは頼れない。

すると残るは、増税や社会保険料の引き上げ。所得税や法人税、消費税や酒税の増税。それに医療費や介護費の引き上げが目標になるだろう。ある自民党の幹部は「財源は異次元の方法で見つける」と言ったそうだが、そんなものは見つかるわけがない。そして当分は選挙もないので、結局は増税へ。そんな結末は、願い下げにしたいものだ。

        ≪23日の日経平均 = 下げ -47.00円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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あめ玉 ⇒ 統一地方選 ⇒ 増税? (上)

2023-03-23 07:23:33 | 税金
◇ 財源なしで議論が進む不思議 = 岸田首相は先週17日夜の記者会見で、少子化対策の具体案を発表した。そのなかで最も力を入れて説明したのが、育児休暇中の所得補償。現行の給付率67%を80%に引き上げ、社会保険料を免除することで実質100%の給付率にするという。また児童手当の拡充、高等教育費の負担軽減、住居支援。さらに幼児保育の強化、所得が106万円・130万円になると保険料や税金の負担で収入が減ってしまう制度の改善にまで言及した。

自民党内でも、具体案の作成作業が進んでいる。特に活発に議論されているのは、児童手当の問題。現在は中学生までとなっている支給対象を18歳にまで延長。現行は月1万ー1万5000円の支給額を「第1子は1万5000円、第2子は3万円、第3子以上は6万円」に増額する方向だ。ただ1200万円までとしている現在の所得制限を撤廃するかどうかは、決着がついていない。

年間の出生数が80万人を割り込むなど、日本の少子化は加速している。岸田首相も会見で「このまま推移すると経済が縮小し、社会保障制度や地域社会の維持が難しくなる」と述べ、「これから6-7年が少子化傾向を反転できるかどうかのラスト・チャンスだ」と力説した。このことは正論であり、誰も反対はできないだろう。

しかし、きわめて重大な問題が1つ。それは岸田首相も自民党も、財源については全く触れていないことだ。おそらく議論されている具体策のすべてを実現するには、少なく見積もっても年間10兆円以上の財源が必要だと考えられる。だが不思議なことに、財源についての議論は聞こえてこない。いったい財源抜きの議論に意味はあるのだろうか。真偽のほどは不明だが、政府・自民党内では「選挙の前には財源の話をするな」というお触れが出ているという噂さえ流れている。

                   (続きは明日)

        ≪22日の日経平均 = 上げ +520.94円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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景気低迷で 税収も不足

2019-11-20 07:53:59 | 税金
◇ 赤字国債の増発は必至 = 財務省の集計によると、4-9月期の国税収入は16兆7000億円だった。この金額は、前年の実績を4.6%下回っている。内訳をみると、所得税が6.3%、法人税が9.1%、消費税が3.8%の減少。いずれも景気の低迷を反映したもので、特に法人税収が1割近くも減少したのは企業業績が悪化した結果である。貿易の縮小で、関税収入も8.1%減った。

ふつう上半期の税収は、年度全体の約3割に過ぎない。したがって勝負はこれからということになるが、下半期に景気が急上昇する見込みは全くない。消費税の引き上げは寄与するが、軽減税率を実施したこともあって10-3月期の増加分は1兆3000億円にとどまるものと試算されている。法人税や所得税は、さらに減少幅が大きくなる可能性が強い。

19年度の当初予算では、一般会計の税収を62兆5000億円と見積もっている。しかし、この調子では2兆円に近い税収不足が発生しそうだ。場合によっては、18年度の実績60兆4000億円を割り込む事態になるかもしれない。その一方で、政府はいま台風などによる災害復旧と将来の防災に向けたインフラ強化の予算を組もうとしている。その規模は、おそらく10兆円前後に達するだろう。

すると必然的に財源が足りなくなる。このところ発行額を減らし続けてきた赤字国債だが、来年度は増発が避けられそうにない。その赤字国債の一部を19年度の補正予算に組み込んでしまおうという構想もあるようだが、これは全く蛇道と言うべきだろう。堂々と20年度の本予算に計上してもらいたい。また、その前に政府はいぜんとして固執している「景気は緩やかに回復中」という公式見解を引っ込めるべきだろう。

       ≪19日の日経平均 = 下げ -124.11円≫

       ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 
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