経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

長期金利が 1%を超えた!

2024-05-25 07:33:29 | 金利
◇ なぜ日銀はコソコソ動くのか = 東京債券市場で22日、10年もの国債の流通利回りが一時1%を超えた。13年5月以来11年ぶりのことである。理由は日銀が通常の買い入れオペで、国債の購入額を突如として減らしたからだ。このため国債の流通価格が下がり、利回りが上昇した。2年ものや5年もの国債の利回りも上昇している。市場では「日銀が政策金利の引き上げ準備を始めた」という観測が、一気に広がった。

市場の観測はまだ収斂していないが、政策金利の引き上げは0.25%。時期は7月説がいちばん強い。ほかに9月説、10月説も飛び交っている。企業も利上げに備えるところが出始めた。銀行や海外投資家はまだ国債の価格は下がるとみており、買い入れには慎重。これも国債価格の下落につながってくるだろう。

だが当の日銀がどんな考え方なのかは、全く判らない。たとえば1か月前と比べてみると、1-3月期のGDP成長率がマイナスになるなど、利上げには向かない環境になっている。また物価高が特に進行したわけでもない。さらに政府が実施する減税の効果を、相殺することにもなりかねない。それなのに、なぜ利上げなのか。

植田総裁は先日、官邸に呼ばれて岸田首相と密談した。ここで岸田首相は「物価高の原因となっている円安をなんとかしてほしい」と要請したとも言われている。その結果の政策変更とみられるのはマズイ。そこで市場が利上げさせたように、みせたいのではないか。こんな見方さえ出始めた。日銀はなぜ、もっと自分の‟意志”を市場に示そうとしないのか。

       ≪24日の日経平均 = 下げ -457.11円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国の安売り輸出が 大問題に (下)

2024-05-24 07:35:34 | 中国
◇ 補助金→生産増→安売り→輸出増 = いま中国は不動産不況に悩んでいるが、鉱工業生産だけは順調に増加している。だが主要製品の生産は過剰で、価格が下がっていることも事実。たとえば4月の卸売り物価でみると、鉄鋼の価格は前年比8.1%の下落。4月の消費者物価でみると、自動車は4.3%、スマホは2.9%の下落となっている。しかし価格が下落しても、生産は衰えない。政府が補助金を出して、増産を奨励しているからである。

国内で余った生産物は、輸出に出口を求める。たとえばEV・太陽光発電・リチウムイオン電池の3月の輸出額は106億ドル、3年前の2倍以上になった。自動車の4月の輸出は90万4000台、前年比34%の増加だった。自動車について言えば、23年は491万台を輸出、日本を抜いて世界首位になった。さらに業界は25年に3600万台の生産を計画しているが、国内での販売は1700万台にとどまると推計している。半分以上が輸出に回ることになる。

習近平政権は経済政策の基本に、生産力の増強を挙げている。この目的のため、09-22年の間に、総計1700億ドル(約255兆円)の補助金を支出した。これで主力製品を増産、輸出に安売り攻勢をかけるという構図が定着しつつある。もちろんEVだけではない。たとえば太陽光発電パネルは、IEA(国際エネルギー機構)によると、ことし中に供給量が需要量の3倍に達する見通し。その原因は中国の生産過剰だという。

日本に対する影響も、きわめて大きい。まずEVや太陽光パネルなどが、安値で入ってくる。日本のメーカーは防戦に必死となるだろう。また東南アジアや中南米などの市場でも、安い中国製と闘わなければならない。自動車の状況をみると、すでにタイでは中国製EVに日本車が食われ始めている。日本政府は傍観していていいのだろうか。

        ≪23日の日経平均 = 上げ +486.12円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国の安売り輸出が 大問題に (上)

2024-05-23 07:22:45 | 中国
◇ 米政府が中国製EVに関税100% = バイデン政権は先週14日、主要な中国製品に対する制裁関税の大幅な強化を発表した。EV(電気自動車)については25%だった制裁関税を100%に。また自動車などに使用する旧世代の半導体については25%を50%に。車載用リチウムイオン電池は3倍の25%に。太陽電池は2倍の50%に。さらに鉄鋼とアルミは3倍の25%に引き上げる。通商法301条に基づく措置で、「安価な製品の流入を防ぎ、国内産業と雇用を守るため」と説明した。

当然ながら、中国政府は猛烈に反発。WTO(世界貿易機構)に提訴すると息巻いている。米中間の経済紛争は、たしかにいっそう悪化した。ただし、すべてを額面通り受け取るわけにはいかない。たとえばすでに25%の関税をかけられている中国製EVは、アメリカではほとんど売れていない。したがって関税を100%に引き上げても、意味はないことになる。

にもかかわらずバイデン政権が関税を大幅に引き上げたのは、大統領選挙のため。自動車や鉄鋼産業の支持を獲得するための対策だ。トランプ前大統領は「すべての中国製品に60%以上の関税をかける」と宣言しているから、中国政府にとっては「それよりはマシなバイデン政策だ」と言えないこともない。この辺の状況は、習近平政権も十分に理解しているはずだ。

バイデン政権の関税引き上げは、むしろアメリカ以外の各地域に大きな影響を及ぼしそうだ。アメリカ市場から締め出された中国メーカーは、いまブラジルとタイでEVの安売りを始めている。たとえばブラジルで1-4月に売ったEVは4万8000台、前年の8倍に達した。ブラジルとタイを拠点に、中南米と東南アジアに進出する計画だ。このとばっちりもあって、アメリカのテスラはことしに入ってから売れ行きが不振、人員の10%削減を発表している。

                      (続きは明日)

        ≪22日の日経平均 = 下げ -329.83円≫

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ≫   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ダウ 4万ドル台からの展望

2024-05-21 07:09:11 | 株価
◇ 当面の焦点は22日のエヌビディア決算発表 = ダウ平均株価は先週末、とうとう4万ドル台に乗せた。20年11月の3万ドル乗せから、3年半での大台替わり。4月の雇用情勢や小売り売上高、それに消費者物価が、そろって予想をわずかに下回る伸びに。FRBの利下げが早まるという期待が高まって、株価を押し上げた。ただ高値で確定売りも出やすくなっている。今後も株価は上昇を続けるのだろうか。

当面の関門は、22日に発表されるエヌビディアの決算。これまでの株高は半導体関連銘柄に負うところが大きかったが、エヌビディアはその象徴的な存在。ことしの業績見通しが好調なら、ニューヨーク市場の株価は続伸するだろう。もし期待外れなら、ダウ平均も一服する公算が大きい。多くの投資家は、いま22日の発表をじっと待っている状態だ。

もう少し中長期的にみると、株価がさらなる高みを目指せるかどうかは、アメリカ経済が‟軟着陸”できるかどうかにかかっている。そのためには物価が徐々に落ち着いて、2%程度の上昇率に近付く。その一方で、景気があまり落ち込まないことが重要だ。ただ、こうした経済の動向を確認するには、3か月程度の検証が必要だろう。すると‟軟着陸”の確認は、早くても7月末ということになる。

FRBが金融政策を決定するFOMC(公開市場委員会)は、8月が休み。したがって利下げの決定は早くても9月ということになる。すると、年内の利下げは2回というのが市場の読み。しかし‟軟着陸”に乱れを生じると、利下げは大幅に遅れるかもしれない。これから7月にかけて、アメリカ経済がどう動くか。それによって、ダウ平均の動向も決まってくるだろう。

        ≪21日の日経平均 = 下げ -122.75円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週のポイント

2024-05-20 07:35:31 | 株価
◇ ダウの続伸は半導体の業績しだい = ダウ平均は先週491ドルの値上がり。金曜日には、終り値でとうとう4万ドル台に乗せた。1999年3月に1万ドル、2017年1月に2万ドル、20年11月に3万ドルという上昇の軌跡。この10年間では2.4倍に膨張している。先週の値上がりは、4月の消費者物価と小売り売上高が予想をやや下回ったことが原因。FRBが利下げを早めるのではないかという期待が、市場に広まった。

日経平均は先週558円の値上がり。5月に入ってからは、ずっと3万8000円台で上下している。ニューヨーク市場の活況は大きなプラス材料だが、1-3月期のGDP成長率がマイナスになったり、実質収入や実質消費の落ち込みが続くなど、悪材料も目立つようになってきた。また異常な円安もマイナス材料とみなされ、輸出関連銘柄でさえも円安で売られるようになっている。

ニューヨーク市場では、さすがに高値で確定売りも出やすくなっている。それをこなして続伸するかどうかは、半導体関連企業の業績見通ししだい。今週の決算発表が注目される。一方、東京市場は物価上昇が鈍化して、働く人たちの実質収入がプラスにならないと先行きが晴れない。いま市場は企業業績に期待をかけているが、当の企業は消費の減退を予想して先行き見通しに慎重だ。日経平均の4万円は遠いだろう。

今週は20日に、3月の第3次産業活動指数。22日に、4月の貿易統計、3月の機械受注。24日に、4月の消費者物価。アメリカでは22日に、4月の中古住宅販売。23日に、4月の新築住宅販売が発表される。
 
        ≪20日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>