経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

柔軟な金融政策の 出現

2024-06-12 07:09:26 | 金融
◇ ユーロ圏やカナダが利下げに踏み切った = ECB(ヨーロッパ中央銀行)は6日の定例理事会で、政策金利を4.5%から4.25%に引き下げることを決めた。ECBはユーロ圏20か国の金融政策をつかさどる中央銀行。インフレに対処するため、22年7月から10回にわたって金利を引き上げた。ユーロ圏の消費者物価は22年10月に前年比で10.6%も上昇したが、最近は2%台の上昇に落ち着いてきている。

ことし3月以降、主要国ではスイス、スウェーデン、カナダが政策金利を引き下げている。これにユーロ圏が追随したことで、世界的に利下げの風潮が強まってきた。ここでラガルドECB総裁の説明をよく聞くと、金融政策についての新しい姿勢が見えてくる。記者会見でラガルド総裁は「インフレの見通しは著しく改善した」と述べながらも、「金利の先行きについては事前に約束しない」とも語っている。これは物価の動向次第では、金利を引き上げることもありうるという意味に違いない。

アメリカでは、FRBがまだ利下げを決断できずにいる。もし利下げを急いでインフレが再燃、利上げすることになれば、FRBは‟失敗した”と批判されることになるだろう。パウエル議長はそれを恐れて、慎重になっている。もちろんユーロ圏の場合も、批判は免れない。しかし戦争の影響などで物価の見通しが不確実な現在、その批判は甘んじて受ける。ラガルド総裁の発言からは、物価の動向次第で金融政策を柔軟に遂行して行くという強い姿勢が感じ取れた。

たしかに金融政策の方向がしばしば変わることは、決して好ましいことではない。しかし現在のように先行き不透明な状況のなかでは、物価の変動に合わせて金融政策も柔軟に運用する。これは新しい考え方だと言えるだろう。この運用方針が成功するかどうかは、まだ判らない。しかしFRBにも影響を及ぼすかもしれない。でも石頭の日銀に、影響を及ぼすことはなさそうだ。

        ≪12日の日経平均 = 下げ -258.08円≫

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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月とスッポン : 日米の金融政策 (下)

2024-05-10 07:29:12 | 金融
◇ 理屈に合わない日銀のアプローチ = FRBは急激な金融引き締め政策で、インフレを抑え付けようとした。しかし物価はまだ3%以上の上昇を続けている。これを2%の上昇にまで下げることが最終的な目標。だが、これ以上の引き締めは景気を悪化させる危険があるので難しい。このため政策金利をずっと5.25%に据え置いたまま、様子を見ているのが現状だ。それでも「物価2%」という目標は、満月のようにはっきりと見えている。

日銀も「物価2%」を、金融政策の最終目標に掲げている。日本の物価上昇率は現在ほぼ3%前後、政府の補助金を考慮に入れれば4%に近いかもしれない。それを2%にまで下げるというわけだ。アメリカと同じだが、アメリカは金融を引き締めている。しかし日本は金融を超緩和したままだ。物価を下げようというのに金融を緩和するのは、どう考えても理屈に合わない。やり方がアメリカと正反対なのである。

よく知られているように、現在の物価高は円安による輸入物価の上昇によるところが大きい。試算によると、生活用品の値上がりはその3割が円安によるという。円安は日米間の金利差が基本的な原因。だから理論的には、日銀が金利を引き上げれば円相場は上昇する。利上げと言っても、政策金利を3%とか5にしろと言うわけではない。おそらく0.25%、それも「検討する」と言うだけで、円相場は10円ぐらい上昇するに違いない。ところが日銀はそれすらも言わず、頑なに「ゼロ金利を守る」と言い続ける。なぜなのか。

どんな経済政策にも、必ずプラス面とマイナス面がある。いまや超金融緩和政策はプラス面よりマイナス面が大きいことは、日銀も判っているはずだ。にもかかわらずゼロ金利に固執するのは「日銀が利上げしたために、不況になった」と批判されるのが怖いからではないか。この保身のために日銀は動きがとれず、スッポンのようにゼロ金利に食いついたまま離れない?

        ≪9日の日経平均 = 下げ -128.39円≫

        ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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月とスッポン : 日米の金融政策 (上)

2024-05-09 07:20:18 | 金融
◇ 中央銀行はそれぞれの難問を抱え込んだ = FRB(連邦準備理事会)はアメリカの中央銀行、日本銀行は言うまでもなく日本の中央銀行だ。この2つの中央銀行はいま、それぞれに大きな問題を抱え込んで苦しんでいる。中央銀行の使命の1つは、通貨価値の維持。同時に経済の健全な成長にも、目を配らなければならない。だが近年は、その目的をなかなか達成できない。金融政策の効力が低下してきたためである。

アメリカの場合。FRBはコロナ不況に対処するため、20年3月から22年6月にかけて金融を緩和した。具体的には政策金利をゼロにまで引き下げ、市場から国債などを無制限に買い入れた。この結果、景気は持ち直したが物価が上昇。FRBは22年6月、金融政策を引き締めに転換した。しかし物価はなかなか下がらない。いまはいつ引き締めを解除できるか、その見極めに苦慮している。

日本の場合。日銀は16年1月からマイナス金利を導入した。同時に市場から国債などを大量に購入し始めた。いわゆる“異次元の金融緩和政策”である。ことし3月になってマイナス金利をやっと解除したが、まだ政策金利はゼロ。このため円相場が異常に下落、物価を押し上げている。利上げを期待する声も強いが、日銀は引き締め政策に転換することに踏み切れない。

このようにFRBと日銀は、ともに大きな問題を抱え込んでいる。だが何を金融政策の目標にしているか。その鮮明度は、全く異なっていると言っていい。FRBの目標は、満月のようにきわめて鮮明。これに対して日銀の政策目標は、きわめて曖昧。不透明な目標を掲げてゼロ金利に固執する様は、あたかも食いついたら放さないスッポンのようにみえる。

                      (続きは明日)

        ≪8日の日経平均 = 下げ -632.73円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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中途半端な 金融の量的引き締め (下)

2024-04-05 07:24:42 | 金融
◇ 日銀はETFの購入を止めただけ = FRBは国債と住宅ローン担保証券を売買することで、量的な金融操作を実施した。これに対して日銀は、国債とETF(上場投資信託)を売買している。ETFというのは株式の集合体だから、中央銀行が株式を売買することになってしまう。このため先進国の中央銀行が、ETFを金融操作のために売買することはない。しかし日銀は株価を下支えすることが重要だと考えて、一種の禁じ手を使用した。

日銀は17-20年に、年間4-7兆円のETFを市場から購入した。量的緩和である。しかし株価が回復したため、23年の購入額は2100億円に減っている。そして23年10月4日以降は、株価が大幅に下落してもETFの買い入れを止めている。したがってETFでみる限り、金融の量的緩和は終了した。日銀のETF保有残高は現在71兆円、年間の税収額と同じに膨れ上がった。これを売り出せば、量的引き締めになるが、そんな気配は全くない。

一方、日銀は16年9月から、国債を月5-10兆円のペースで買い入れている。特に23年は多く、114兆円にのぼった。そして、この国債については今後も月6兆円前後を購入し続けることを決めた。23年の月平均9兆5000億円に比べれば、購入額は減る。しかし国債についてみれば、なお量的緩和が続く。現在の日銀の保有額は600兆円という膨大な金額。それでも買い入れを止めないのは、国債の市場価格が暴落するのを恐れているためだと考えられる。

アメリカの場合は、FRBが量的引き締めを続けているが、まだ資金の吸収量が十分でない。日本の場合は、量的緩和の程度は縮小したが、まだ引き締めには至っていない。だから株式市場の周辺には、多額の投資資金が滞留している。この資金は何か悪材料が出ると一時的に引っ込むが、すぐに戻ってくる。株価が下がらない最大の原因が、ここにある。

        ≪4日の日経平均 = 上げ +321.29円≫

        ≪5日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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中途半端な 金融の量的引き締め (上)

2024-04-04 07:15:23 | 金融
◇ 利上げでも株価が下がらない根本的な原因 = FRBも日銀も、いま金融を引き締めている。しかしニューヨーク市場でも東京市場でも、株価は下がらない。下がらないどころか、史上最高値の更新を続けている。経済学の教科書には「金融が引き締まると、株価は下落する」と書いてある。でも、どうして下落しないのか。答えは「まだカネ余りの状態が続いているから」だ。まずはニューヨーク市場の状態から、検証してみよう。

FRBは3月20日の政策決定会合で、政策金利の据え置きを決定。同時に「年内3回の利下げ」の可能性を否定しなかった。株式市場は「金利を据え置いたのは景気が堅調な証拠」ととらえて好感、また3回の利下げを歓迎。ダウ平均は3月下旬の間に3回も最高値を更新している。なぜ、こんなに強いのか。理由はいろいろ言われているが、基本的には市場の周辺に巨額の投資資金が滞留しているからに他ならない。

カネ余り状態が続いている最大の原因は、FRBによる量的引き締めがまだ不十分なことにある。FRBは20年3月から22年6月まで、国債と住宅ローン担保証券を無制限に買い入れ、大量の現金を市場に放出した。これが量的緩和政策である。22年6月からは月に最大950億ドル(約14兆円)ずつ市場に放出して、資金を吸収してきた。これが量的引き締め政策である。

引き締めを始めた22年6月時点で、FRBは8兆9000億ドルの資産を保有していた。これが最近時点では7兆5000億ドルに減少している。つまり1兆4000億ドルの資産を売却、それだけ資金を吸収したことになる。だが減少率はまだ15%に過ぎない。ところがFRBは利上げを止めたから、量的引き締めも減速せざるをえなくなった。このため量的引き締めは中途半端、まだ市場が資金不足で困るようなことはない。だから株価は、なかなか下がらない。

                  (続きは明日)

        ≪3日の日経平均 = 下げ -387.06円≫

        ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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