経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

消費は強いのか? 弱いのか?

2017-06-30 08:00:37 | 景気
◇ 政府の見解に微妙なズレ = 経済産業省は29日、5月の商業動態統計を発表した。それによると、小売り業の販売額は11兆7590億円で前年比2.0%の増加だった。ただ季節調整をした前月比は1.6%の減少となっている。このため経産省は、小売り販売に関する基調判断を「持ち直しの動きがみられる」と、前月のままに据え置いた。

業種別に販売の伸びが大きかったのは、新型車を投入した自動車小売業が前年比7.0%の増加。石油価格の上昇で、燃料小売業も8.7%売り上げを伸ばしている。また業態別では、デパートとスーパーを合わせた大型小売店が0.6%の減少。コンビニは3.6%の増加だった。全体的にみて、大きく変動した点は見当たらない。

政府は先週22日の関係閣僚会議で、6月の月例経済報告を了承した。このなかで景気の基調判断を6か月ぶりに上方修正。景気は「緩やかな回復基調を続けている」と結論付けている。その最大の根拠は「個人消費が持ち直したこと」だと説明した。事例としては、4月の消費総合指数が0.8%上昇したことなどを挙げている。

消費の持ち直しを主な理由として、閣僚会議では景気判断を上方修正した。ところが、その1週間後には経産省が判断を据え置く発表をした。安倍内閣としては「景気の状態は改善」と認定したが、その根拠となった小売り業を主管する経産省は「変わらず」と判定したことになる。これはなんとも奇妙で、わかりにくい。国民はどちらを信用したらいいんだろう。

      ≪29日の日経平均 = 上げ +89.89円≫

      ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ


EUとの自由貿易協定が 決着へ

2017-06-29 07:34:59 | EU
◇ 6年越しの交渉がやっと = 日本とEU(ヨーロッパ連合)のFTA(自由貿易協定)締結交渉が、ようやく決着しそうだ。安倍首相は来週ヨーロッパを訪問、その際にトゥスク欧州理事会議長らとともに大筋合意を発表する公算が強い。この交渉は11年5月に始まり、6年がかりの長丁場。成立すれば、アメリカがTPP(太平洋経済連携協定)を一方的に離脱したあと、初めての大型貿易協定となる。

皮肉なことに、この交渉が最近になって急速に進んだのは、TPPの影響が大きい。日本はTPPで、相手国からの輸入について全9018品目のうち8575品目の関税を撤廃することで合意した。また農産物の輸入についても、品目ごとの関税引き下げを決めている。これらの措置については、国内関連業界の同意も取り付けた。

したがってEUとの交渉では、TPPの水準を上回らない範囲で自由化すればよいことになった。EU側もこの原則を理解したため、交渉が加速されたという。結果として、工業製品については日本もEUも関税をほぼ撤廃。農産物については、EUからのチーズ輸入関税だけが未決着という報道も流れている。

16年の実績でみると、日本の対EU向け輸出額は8兆円。輸入額は8兆6000億円だった。日本側の輸出品目は自動車、電機、一般機械など。また輸入品目は医薬品、自動車、電機、食料品の順に多い。日本の輸出先としてはアメリカ、中国、ASEAN(東南アジア諸国)に次いで4番目。輸入先では中国、ASEANに次いで3番目となっている。

      ≪28日の日経平均 = 下げ -94.68円≫

      ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ


円高過敏症の 東京株式市場 (下)

2017-06-28 06:27:10 | 株価
◇ アメリカの景気動向にも一因 = FRBは今月中旬、4回目の政策金利引き上げを断行した。本来なら、これで長期金利が上がり日米の金利差が開いて、ドル高・円安になるはずだった。ところが長期金利はむしろ下がり気味。円相場もやや上昇した。その理由は、投資家がアメリカ経済の先行きに懸念を持ち、国債の買い入れを増やしたためである。国債の価格が上昇、長期金利は低下してしまった。

アメリカの景気が下降すれば、FRBは予定通りに利上げを実行できない。すると日米間の金利差は拡大せず、円高が進む可能性もないではない。東京市場はそこまで深読みして、将来の円高を懸念している。仮に1ドル=100円を超える円高になれば大変だが、そんな気配はいまのところ全くない。やはり市場は、心配し過ぎているのではないだろうか。

円高を心配し過ぎる一方で、円高のメリットについては過小評価されている。言うまでもなく、円高になればモノやサービスの輸入価格は下落する。いまの日本はエネルギーの輸入に巨額の代金を支払っており、それだけ国内の購買力が海外へ流出している。その購買力が国内で使われれば、景気はもっとよくなるはずだ。

市場に定着してしまった円高過敏症を矯正するには、どうしたらいいのだろうか。それには、日本経済の将来見通しをもっと明るくするしかない。将来展望が明るくなれば、市場はそちらに顔を向け多少の円高不安には動じなくなるだろう。その意味では、アベノミックス後の新しい経済目標を策定することが不可欠になってくる。

      ≪27日の日経平均 = 上げ +71.74円≫

      ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ


円高過敏症の 東京株式市場 (上)

2017-06-27 07:31:07 | 株価
◇ むしろ将来の円高を警戒 = 新聞の株式欄を読んでいると「円高で株安」とか「円高警戒で伸び悩み」といった表現に、よく出くわす。最近は「円高⇒株安」が、いわば常識となってしまったようだ。たしかに円高は、企業が保有する外貨建て資産を目減りさせる。トヨタの場合は「円相場が1円上昇すると、利益が350億円減少する」といった知識が完全に定着してしまった。

多くの輸出企業はこの弊害を和らげるため、海外生産を拡大した。これによって輸出競争力の低下による損失は、かなりの程度まで防げるようになった。しかし海外で生み出した利益を決算のため円建てに換算すると、そこに為替差損が生じてしまう。経営者はそれを心配して、業績予想を発表するときにはどうしても慎重になりがちだ。株価にとっては、下げ要因となることが多い。

日経平均株価は先週、年初来高値を更新した。しかし週末時点での年初からの上昇率は5.3%にすぎない。たとえばアメリカの9%、ドイツの12%、インドの18%、韓国の17%に比べると、はるかに見劣りする。その大きな原因の一つが、東京市場に定着してしまった“円高過敏症”ではないだろうか。

円の対ドル相場は、ことしになってから大きくは動いていない。1月の平均値が114円75銭だったのに対して、先週末時点の相場は111円30銭。この程度の水準なら、多くの企業の想定レートを下回っている。したがって株式市場は現実の円相場よりも、将来の相場水準を過度に心配していると言えそうだ。

                                 (続きは明日)

      ≪26日の日経平均 = 上げ +20.68円≫

      ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ


今週のポイント

2017-06-26 06:55:49 | 株価
◇ 元気のない東京株式市場 = 日経平均は先週20日、年初来高値を更新。その後はやや反落したが、週間でも189円の値上がりだった。こうしてみると、東京株式市場は順調のように見える。だが実態はかなり緩んでいた。その証拠に火-金の4日連続で、日中の値幅が100円を切っている。ヘッジファンドなどの大口投資家が手控えムードに入ったうえ、個人投資家も及び腰になったからだ。

ダウ平均株価は先週10ドルの値上がりにとどまった。しかし着実に相場を切り上げ、史上最高値を更新中。年初からの上昇率は9%を超えている。また他の株式市場をみても、ドイツは年初来12%、インドは18%、韓国も17%に達している。これに対して日経平均は5.3%しか上がっていない。

この落差の原因は、どこに求められるのだろう。いくつか考えられるが、基本的には日本経済の将来が不透明なこと。アベノミックスが効力を失ったあと、日本は次の目標を見失っている。特に外国人投資家の目には、そう映るのではないか。加えて過度な円高恐怖症。東京市場は「円安でないと上がらない」という考え方が、広く浸透してしまったように思われる。

今週は26日に、5月の企業向けサービス価格。29日に、5月の商業動態統計。30日に、5月の消費者物価、労働力調査、家計調査、鉱工業生産。アメリカでは27日に、6月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数と4月のSPケース・シラー住宅価格。28日に、5月の中古住宅販売。29日に、1-3月期のGDP確定値。また中国が30日に、6月の製造業と非製造業のPMIを発表する。
 
      ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ


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