経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

裁判になる ふるさと納税 (下)

2019-10-11 07:55:53 | ふるさと納税
◇ 裁判の行くえは五分五分? = 裁判となった場合、実は泉佐野市には強力な助っ人が付いている。泉佐野市は総務省の決定を不服として、第3者機関の「国地方紛争処理委員会」に調停を申し立てた。この委員会は9月初めに勧告書をまとめたが、その趣旨は泉佐野市側にとって有利な内容となっている。理由は「改正以前の地方税法には、返礼品についての制約規定がない」「総務省が行政指導で返礼品の規制をするのは、地方分権の理念に反する疑いがある」というものだった。

これに対して総務省は「豪華すぎる返礼品は百害あって一利なし。ふるさと納税制度を維持するためには、行政指導も必要だった」と主張。紛争処理委員会の勧告を一蹴してしまった。常識的に考えれば、たしかに高額な返礼品で寄付を募る風潮は好ましいものではない。しかし泉佐野市などが、法律に違反していなかったことも事実である。

大阪高裁は、どんな判決を下すのだろうか。専門家の間でも、意見は分かれているようだ。法律に違反していないのに、懲罰的な措置を講じることの是非。中央官庁の地方自治体に対する行政指導の拘束力。地方自治体の自由裁量権などなど。裁判で論じられるとみられる問題点は数多い。

また新しいふるさと納税制度では、返礼品は「地場産品で、寄付額の3割以下」と規定された。だが優良な地場産品のない自治体にとって、この規定は厳しすぎるのではないか。総務省は過剰な返礼品について「他の自治体との不公平性」を指摘したが、この「地場産品に限る」規制は、新たな不公平を生じるのではないか。ふるさと納税はいま、多くの議論を巻き起こそうとしている。

       ≪10日の日経平均 = 上げ +95.60円≫

       ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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裁判になる ふるさと納税 (上)

2019-10-10 08:29:40 | ふるさと納税
◇ 泉佐野市が総務大臣を提訴へ = ふるさと納税を巡って、総務省と小さな地方自治体が法廷で争うことになりそうだ。コトの起こりはことし5月。総務省が6月からスタートさせた新ふるさと納税制度に、大阪府泉佐野市など4市町の参加を認めなかったこと。泉佐野市はこれを不服として、11月にも高市総務相を相手取って大阪高裁に提訴する方針だ。

ふるさと納税は、都道府県や市区町村に寄付をすると、自己負担分2000円を除いた全額が税控除の対象になる制度。18年度の寄付総額は5127億円と6年連続で最高を更新した。地方自治体によっては高額の返礼品を出して寄付を集めたため、総務省は「過度な返礼品は止めるよう」に、何度も通達を出している。しかし泉佐野市などは従わなかったので、新しい納税制度への参加を認めなかった。

総務省によると、17年度の場合で各自治体が集めた寄付額の平均は1億円強。これに対して泉佐野市は、アマゾンの高額ギフト券など豪華な返礼品を出して497億円。また静岡県小山町は250億円、和歌山県高野町は196億円、佐賀県みやき町は168億円の寄付を集めている。

こうした豪華な返礼品による寄付集めは、ふるさと納税の本来の趣旨に反する。また常識的な返礼品にとどめている他の自治体に対して不公平だ。総務省はこの弊害を是正するため地方税法を改正、返礼品は「地場産品で寄付額の3割以内とする」ことを明記し、ことし6月から新しいふるさと納税制度をスタートさせた。

                              (続きは明日)

       ≪9日の日経平均 = 下げ -131.40円≫

       ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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パワハラに近い ふるさと納税の規制

2018-09-14 08:21:23 | ふるさと納税
◇ 法律改正まで持ち出すとは = 野田総務相は11日の記者会見で「過度な返礼品で多額の寄付を集めている自治体を、ふるさと納税制度の対象から外す」方針を明らかにした。返礼品については、これまで2度にわたって通達を出し、①価格を寄付額の3割以下にする②地元の産品を使う――ことを要請したが、まだ守らない自治体が少なくない。このため地方税法を改正し、守らない自治体は仕組みから排除するのだという。

総務省の調査によると、この通達を守らない自治体は9月1日時点で380、全体の21.3%にのぼった。自治体にはそれなりの理屈があるから、抵抗しているのだろう。しかし制度から外されては元も子もないから、自治体側は従わざるをえない。それにしても総務省のやり方は大人げない。何度言っても判らないなら、ぶん殴るよという感じだ。

自治体側だって、1万円の寄付に1万2000円の返礼品を出すはずはない。仮に5000円の商品を贈っても、知名度が上がって旅行者が増えるなど、それなりのメリットがあったに違いない。それよりも都市部の自治体では税収が減り、総務省はそれに配慮したのではないだろうか。

たとえば、こんな案はどうだろう。総務省の通達に従う自治体をAグループ、従わない自治体をBグループに分ける。このうちAグループに寄付をする場合は、現状通り寄付額から2000円を引いた額が所得税・住民税から控除される。ただBグループの場合は、差し引く金額を5000円にする。またBグループについては、返礼金の半分に当たる金額を地方交付税の交付から差し引く。これなら段ビラを振りかざすことなく、都市の自治体にも国にもメリットが生じる。

       ≪13日の日経平均 = 上げ +216.71円≫

       ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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世話を焼き過ぎる 総務省 : ふるさと納税

2018-04-06 07:25:49 | ふるさと納税
◇ 自治体の良識に任せたら = 総務省は1日付けで各都道府県知事に当てて、ふるさと納税に関する大臣通知を送った。その内容は、①寄付額に対する返礼の割合を3割までにとどめること②地場産品以外の送付について良識ある対応をとること――の2点。このうち①は昨年4月に出した大臣通知の繰り返し、今回は新しく②が追加された。大臣通知には強制力も罰則もないが、影響力は決して小さくはない。

ふるさと納税は、寄付額から2000円を引いた額が所得税や住民税から控除される制度。寄付額の総計は16年度に2844億円、前年度比で72%も増えた。この金額は群馬県や栃木県の地方税収に匹敵する。一方、返礼品の費用は総額1090億円、寄付額に対する比率は38.4%だった。総務省はまずこの比率を30%以下に落とすよう要請している。

寄付は大都市の住民が地方の自治体向けに行うケースがほとんど。このため大都市の税収が減って、新たな問題を惹き起こしている。たとえば16年度の場合、横浜市は55億5000万円の流出超過になった。総務省が再び大臣通知を出した背景には、こうした大都市側の税収減少があったようだ。

たしかに地方自治体が寄付金集めのために、高額の家電製品や宝飾類、あるいは他の地域から物品を購入して返礼するのは行き過ぎだろう。だが「地域に関心を持ってもらうことが何より大切だ」という自治体側の考え方も、理解できないではない。いずれにしても、総務省の介入はお節介の度が過ぎる。これでは逆に、自治体の自主性が失われてしまう。大都市の税収減少が問題ならば、寄付額から差し引く2000円を増額したらいい。

      ≪5日の日経平均 = 上げ +325.87円≫

      ≪6日の日経平均は? 予想 = 上げ

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小姑みたいな 総務省 : ふるさと納税

2017-04-28 07:13:21 | ふるさと納税
◇ 自治体をもっと信頼したら = 「返礼品の価格は寄付額の3割までにしなさい」「電子機器や時計、宝飾品はダメ」ー-総務省が全国の自治体に対して、ふるさと納税の返礼品について細かい指示を出した。自治体のなかにはさっそく金額を下げたところもあるが、応じないところも多い。指示に従わない自治体に対して、総務省は個別に指導する方針だ。

ふるさと納税制度は、どこかの自治体に寄付をすると、寄付額から2000円を差し引いた分の税負担が減る仕組み。多くの自治体からは、寄付額に応じた返礼品が受け取れる。08年度から始まり、15年度の寄付額は1653億円に達した。総務省は返礼品を規制することについて「地元住民のために使うという本来の趣旨に合わないから」と説明している。

だが自治体が選定する返礼品は、牛肉やくだもの、電子機器や時計にしても、すべてが地元の生産物だ。返礼品が多額になれば、それだけ地元の産業振興につながる。また返礼品を通じて、地域の知名度も上げられるわけだ。そうした効果も計算に入れて、寄付額の4-5割をお礼としてきたところが多い。

各自治体は、それなりに計算し、知恵を絞ってきた。ところが総務省の規制は、こうした自治体の自己努力を抑圧してしまう。もっと地方自治体を信頼してもいいのではないか。この問題に限らず、総務省は自治体の活動に口を出し過ぎるきらいがある。これでは地方の創生など覚束ない。

      ≪27日の日経平均 = 下げ -37.56円≫

      ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ

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