経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

タガが外れた 予算編成

2023-09-07 07:31:08 | 予算
◇ どこまで膨張するのやら = 財務省は5日、来年度予算の概算要求が一般会計の総額で114兆3852億円になったと発表した。110兆円を超えるのは3年連続で、過去最大の規模となる。もちろん、これからの予算折衝で、財務省が不要不急の項目を切り捨てて行く。だが今回は金額を明示しない‟事項要求”が異常に多く、結果的に24年度予算案がどこまで膨れ上がるか判らない状態。タガが外れたままの予算編成になる危険性が、きわめて大きい。

概算要求額がいちばん大きいのは、厚生労働省の33兆7300億円。前年度比1.8%の増加で、社会保障費の自然増を反映している。また目立つのは防衛省の7兆7385億円で、前年度比1兆円の増加。国土交通省も7兆円、前年度比19%の増加を要求した。さらに財務省は28兆1400億円の国債費、前年度比10%の増加を要求したが、これは日銀の利上げを見込んだもの。長期金利の1.5%に対応する要求となっている。

異常なのは、‟事項要求”の多さ。‟事項要求”というのは、この時点では必要経費の計算が出来ないため、金額を書かずに政策事項だけを要求する方式。たとえば少子化対策。6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」の内容がまとまらず、財源についても未定なため、事項要求が認められた。ほかにも物価対策や公共事業など。日経新聞の調査によると、80項目にも及ぶというから大変だ。

公共事業や物価対策などは、これからの物価動向が不明なために金額を算定できないという。これも妙な話だが、財源について決着していない場合も多い。端的に言ってしまえば、選挙を控えて増税論など国民負担の増加は禁物。だから事項要求にしたというケースも少なくない。したがって選挙が終われば、一気呵成。予算案も、異常に膨張することになりはしないか。

        ≪6日の日経平均 = 上げ +204.26円≫

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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巨大な新年度予算が成立

2023-03-31 07:20:15 | 予算
◇ 財政状態は悪化するばかり = 一般会計の総額が114兆3812億円。この巨大な23年度予算案が28日、国会を通過し成立した。22年度の当初予算と比べて6兆7849億円の増加。11年連続で過去最大を更新した。税や税外収入ではとても賄い切れず、今回もまた国債を35兆6000億円発行して資金を調達することになった。この結果、日本の財政状態はいっそう悪化する。

少子高齢化の進行で自然に増加する社会保障費は36兆8000億円。また国債費も25兆2000億円に増加した。新規の政策としては、国際緊張の高まりを映して防衛費が6兆7000億円へと急増。少子化対策と物価対策にも多額の予算が計上された。たとえば少子化対策には3兆1412億円、物価対策には2兆2226億円(財源は22年度予算の予備費)の経費を見込んでいる。

コロナの沈静化で、主要国の社会・経済活動はほぼ正常化した。これに伴い各国はコロナ対策を打ち切ることにより、財政赤字の縮小に動き出している。アメリカやイギリスなど、すでに赤字の縮小を公約した国も多い。ところが日本はまだコロナ対策を引きずっており、そこに物価対策が上乗せされた。だから財政状態は改善しない。

国債の発行残高は1000兆円を突破した。しかし日銀がその52%を買い取っているから、国債は品薄になり価格は下がらない。このため財政節度が失われ、財政再建の意欲も盛り上がらない。専門家のなかには「タガが外れた」と嘆く人もいる。いったい日銀は、どこまで国債を買い進めるつもりなのか。こんな状態を、いつまで続けられるのか。心配だ。

        ≪30日の日経平均 = 下げ -100.85円≫

        ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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巨大予算でも 低成長のワケ (下)

2022-12-28 08:00:16 | 予算
◇ これでは賃上げも難しい = 政府は22日、23年度の経済見通しを閣議了解した。それによると、実質GDP成長率は1.5%になる見通し。22年度の見込みは1.7%なので、やや鈍化することになる。理由は世界経済が減速するためだという。一方、民間調査機関の予測は平均で1.0%。年末に発表する政府の予測は、たいてい民間よりも高くなる。目いっぱい高く見積もらないと税収が伸びず、予算編成が困難になるからだ。

それでも成長率は1.5%だから、低成長から抜け出せない。22年度は140兆円、23年度は当初予算で114兆円。これだけの予算を組んでも低成長から抜け出せないのは、予算のなかに成長を積極的に刺激する費目が少なすぎるからに他ならない。工場の修理をするとき屋根や壁ばかりを綺麗にして、肝心の設備にはカネをかけない。見栄えはよくなるが、これでは経営はよくならない。

政府の経済見通しが低成長だと、企業の経営者は将来に確信を持てない。だから一部の大企業を除けば、設備投資や人件費を大幅に増やすことには躊躇してしまう。エネルギーや原材料費が高騰しているから、特に中小企業は賃上げするだけの余裕がない。政府や経団連が「賃上げを」と叫んでも、好循環が始まらないのはこのためだ。

社会保障費などの自然増や防衛費の増額などで、予算編成が苦しいことはよく理解できる。そこで、この際は「選択と集中」に専念する。たとえば5兆円ぐらいの予算を投じて、蓄電池の研究・開発に全力を挙げる。次世代型の電池を大量生産できるようになれば、再生可能エネルギーやEVの普及が促進される。近い将来「電池は日本製に限る」という評判になれば、輸出産業の軸にもなる。そういう展望が開けば、成長率も上昇する。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +42.00円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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巨大予算でも 低成長のワケ (上)

2022-12-27 07:35:25 | 予算
◇ 経済を底上げすることに使われていない = 政府は23日、23年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は114兆3812億円。22年度より6兆7848億円多く、当初予算としては過去最大。22年度は2回にわたって補正予算を編成、予算の総合計は140兆円近くに達した。加えて23年度も巨大な予算案。にもかかわらず、23年度も低成長が続くと予測されている。どうしてなのだろう。

新予算案の内容をみると、社会保障費が36兆8889億円、国債費が25兆2503億円、地方交付税が16兆3992億円。自然増で膨れるこの3費目だけで、全体の7割近くを占める。これに急増した防衛費を含めると、比率は75%に近づく。残りの25%も大半がコロナ対策などに使われ、脱炭素やAIなど積極的に経済成長に貢献すると考えられる支出は2兆円程度しかない。

一方、歳入は税収が69兆4400億円。国債発行が35兆6280億円となっている。歳入に占める借金の比率は31.1%に上昇する見込み。財政状態は、先進国のなかでも断トツに悪い。しかも、その国債は日銀がほとんどを買い取っている。こんな状態が、いつまで続けられるのか。国債の格下げ問題さえ、心配される様相になってきた。

こうした悲劇的な状況を改善するには、経済成長率を上げて税収の増加を図るしかない。しかし成長分野への財政投入が少ないから、それが出来ない。政府は肥大した歳出を削り、バラマキ的な支出を止める。その一方で、将来の経済成長をもたらす分野への支出を増やす。それが出来なければ、日本は地盤沈下するばかりだろう。

                     (続きは明日)

        ≪26日の日経平均 = 上げ +170.62円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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‟新しい資本主義”の末路 (下)

2022-12-08 07:28:27 | 予算
◇ 「所得倍増計画」はどこへ行った? = 岸田首相は総理大臣に就任する前、しばしば「所得倍増計画」の推進を主張していた。当時、人々は「これで世の中が変わり、収入が増えるかもしれない」と期待したものである。というのも、日本の賃金は30年間にわたってほとんど上がらない状態が続いていたからだ。しかし首相になってからは、この言葉を口にしなくなった。魅力的だった「所得倍増計画」は、どこへ消えてしまったのだろう。

「所得倍増計画」は、もともと1960年に当時の池田首相が実行に移した経済政策。1960年代の10年間に、日本の実質GNPを2倍にすることを目標にした。だが実際は約7年間で、この目標を達成してしまう。その池田首相が創設した自民党の派閥が宏池会。岸田首相は60年後のいま、その宏池会を率いている人。それだけに「所得倍増計画」の再現は、説得力もあったと言えるだろう。

60年前の「所得倍増計画」は、なぜ大成功したのだろう。戦後の復興需要は強かったが、財政的な基盤はきわめて弱い。そうしたなかで池田内閣は、限られた財政資金をまず鉄道や道路のインフラ整備に注入。次いで産業を繊維→軽工業品→鉄鋼→電機→自動車へと、しだいに付加価値の大きい業種に誘導。その輸出代金によって、日本の高度成長を実現したのである。

そこには常に「日本経済の次の段階」を見る目があった。いまの政治には、それがない。その結果、日本は半導体・太陽光パネル・蓄電池・EV・水素燃料など、多くの先端分野で世界一の座を失った。賃金は上がらず、人々は将来への希望を見失っている。その閉塞感を打破して、世の中を変える。それが「新しい資本主義」だったのではないか。140兆円もの財政資金を使いながら、それが出来ないのはなぜか。それを真剣に考えないと、岸田内閣は間もなく行き詰まる。

         ≪7日の日経平均 = 下げ -199.47円≫

         ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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