経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

トランプ円安の 構造 (下)

2016-11-30 07:58:47 | 日記
◇ ジョーカーが踊る日 = “トランプ円安”は、どこまで続くのだろうか。いま市場では「来年も続く」という楽観派と「年内いっぱい」という警戒派が交錯している。楽観派が根拠の1つにしているのは、アメリカの政策金利引き上げ。12月の引き上げは確実だし、実際にインフレ傾向が強まれば、FRBは来年早々にも次の利上げを考えざるをえない。その一方で日銀は指し値オペまでして金利を抑えるから、日米の金利差はいっそう拡大するという読みだ。

もう1つは、EUの政治的不安。こんどの日曜日に行われるイタリアの国民投票。さらにフランスとドイツでも総選挙が実施される。ここでまた想定外の結果が生じるかもしれない。だからヨーロッパ諸国の株式は、やや買いにくい。それに対して日本の政情は安定している。したがって世界的にリスク警戒感が薄れたいまは、日本円を売って日本株を買うのが適切だという考え方だ。

3つ目は、為替相場がオーバーシュートしやすいこと。つまり、ときとして上下に“行き過ぎ”やすい。株式相場でも商品相場でもオーバーシュートは常に起こるが、過去の経験からみると為替相場のオーバーシュートが最も激しい。日本の場合は、これまで円高のオーバーシュートが目立っていた。裏返しにみると、その間はドル下落のオーバーシュートが長かったことになる。今回はどうなるのか。

警戒派は債券市場にも資金が還流し、近く長期金利の上昇が止まる。すると現在のトランプ円安にもブレーキがかかる。またトランプ次期大統領がドル高に拒否反応を起こし、なんらかの警告を発するかもしれない。そのトランプのジョーカーが就任前に出されるのか、それともホワイトハウス入りしてから飛び出すのか。いずれにしても、そこでトランプ円安は終了するとみるわけだ。

      ≪29日の日経平均 = 下げ -49.85円≫

      ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ

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トランプ円安の 構造 (上)

2016-11-29 08:25:20 | 日記
◇ 出動した投機マネー = アメリカの大統領選挙から3週間、円安の動きが止まらない。先週の東京市場では対ドル相場が一時113円90銭まで下落、約8か月ぶりの安値を記録した。選挙後の下げ幅は12円に達している。この円相場の下落は、ヘッジファンドなどの投機筋による売りが主な原因。それに国内投資家の“提灯売り”も加わった。おかげで株価も上昇を続け、日経平均は1万8000円台に載せている。

仕組みとしての円安の原因は、日米の金利差が拡大したこと。アメリカでは、トランプ次期大統領が合計5兆ドルにのぼるインフラ投資と減税の計画を発表したことで、国債の増発による金利上昇とインフレ予想が急激に高まった。10年もの国債の利回りは先週2.4%にまで上昇している。一方、日銀は景気対策の一環として、長期金利をゼロ%近辺に抑えようとしている。

このため10年もの国債の利回りでみた日米の金利差は、安倍内閣が発足してから最大の2.3%に達している。この金利差をみて、投機筋はドルを買い、円を売ることになった。アメリカに引き揚げられた資金は、通常なら金利が高くなった債券市場に向かうはずだ。ところが現状は、株式市場に注ぎ込まれている。これはトランプ氏が打ち出した大規模な景気浮揚策の方に、投機筋の関心が向いているからだろう。

こうしてニューヨーク市場のダウ平均株価は1万9000ドル台に到達。さらに史上最高値を更新中だ。IT銘柄の多いナスダックや銘柄数の多いSP500も新高値を切り上げている。市場関係者の間では、早くも「ダウ2万ドル」の声もあがっているようだ。こうした“トランプ効果”は、いつまで続くのだろうか。

                                 (続きは明日)

      ≪28日の日経平均 = 下げ -24.33円≫

      ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ

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今週のポイント

2016-11-28 08:14:03 | 日記
◇ ダウ平均は1万9000ドル載せ = 株価の上昇が止まらない。ダウ平均は先週、1万9000ドル台載せを達成。さらに続伸して史上最高値を更新中。リーマン・ショック後に付けた安値に比べると、実に3倍の高さに到達した。トランプ次期大統領の政策に期待して、金融株や建設株、それにエネルギー株が牽引車となっている。ダウ平均は先週284ドルの値上がり。

その一方、債券市場では国債価格が急落。長期金利は大統領選挙前の1.85%から2.4%台へと上昇した。これは資金が、債券市場から株式市場へ移動したことを意味している。そのうえFRBによる12月の利上げが確定的となったため、ドルが買われた。円の対ドル相場は113円台に急落、選挙前より12円も安くなっている。

この急激な円安と日本株の割安感に注目したのが、海外の投資家。東京市場にどっと資金を投入した。一方、国内の投資家は利益確定売りに走ったようだ。ただ外国人投資家の買いが上回ったために、株価は上昇した。日経平均は先週414円の値上がり。問題はこうした上げ相場がどこまで続くかだ。市場関係者の間では「年内に1万9000円」の声も聞かれるが、まだその断定は早すぎるだろう。

今週は29日に、10月の労働力調査、家計調査、商業動態統計。30日に、10月の鉱工業生産と住宅着工戸数。1日に、7-9月期の法人企業統計と11月の新車販売台数。アメリカでは29日に、7-9月期のGDP改定値と11月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。30日に、10月の中古住宅販売。1日に、11月の新車販売台数とISM製造業景況指数。2日に、11月の雇用統計。また中国が1日に、11月の製造業と非製造業のPMIを発表する。なお30日にOPEC総会、4日には憲法改正をめぐるイタリアの国民投票が予定されている。

      ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ

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サタデー自習室 -- 健康寿命の すゝめ ⑬

2016-11-26 07:55:12 | 日記
◇ 長野県にみる長寿の秘訣 = 「全国一の健康・長寿県」ということで、いま長野県に多方面からの注目が集まっている。なにしろ長野県は13年時点の調査で、男女そろって平均寿命が第1位になった。その理由はなんだろうと、他府県からの問い合わせも多い。これに対する長野県の答えは、ズバリ「減塩と野菜の摂取量」である。

いまから30年前、1986年の時点で長野県の成人1人当たり塩分摂取量は1日15.1グラム。全国でいちばん高かった。そこから減塩運動を始め、2010年には11.5グラムにまで減らしている。だが目標は9グラム。現在はその目標を達成するため努力中だ。また長野県の男性が野菜の摂取量で全国一であることは、あまり知られていない。

長野県は健康増進課をいち早く創設。これらの運動を展開してきた。もちろん減塩と野菜だけではなく、きわめて大掛かりな健康対策を推進している。たとえば「信州健康医療総合計画」も、その一つ。栄養、食生活、運動、生活習慣病予防など、多くの部門に数値目標を立て、毎年その進捗状況を発表する。

また「信州エース・プロジェクト」を地域ごとに立ち上げ、住民を巻き込んで「長野県を世界一の健康長寿」地区にしようと活動中。松本市では900人のボランティアがヨガ教室を開いたり、各家庭を回ってみそ汁の塩分濃度を測定しているという。やはり「全国一の長寿県」は一朝には成らず。長い努力の積み重ねと住民の意識改革が必要だ。

                               (続きは来週サタデー)

      ≪25日の日経平均 = 上げ +47.81円≫

      【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】   

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戦後最大のピンチ : 日本外交

2016-11-25 07:27:37 | 日記
◇ 政府・与党は認識しているのか = トランプ次期大統領は、来年1月20日に就任した直後に「TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱を通告する」と表明した。TPPはアメリカが参加しないと成立しない取り決めになっているから、これでTPPは消滅したことになる。安倍首相はトランプ氏との会談で、このことを察知できなかったのだろうか。ペルーで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)でも「アメリカを翻意させる」と力説。不明を天下にさらけ出した。

このブログでは8月18日の記事で、トランプ氏が当選した場合「日本はアメリカ抜きの新しい協定作りに努力する覚悟を持っているか」と書いた。しかし残念ながら政府・与党内部で、そうした場合の戦略を練る動きは全く見られなかった。しかも現状から判断すると、事態はそれだけにとどまらなくなってきた。

まずトランプ政権は、日米間で新たな貿易協定を結びたいと要求してくるだろう。アメリカは日本車の輸入関税を引き上げ、日本はアメリカ産農産物の輸入関税を引き下げるよう主張してくる公算が強い。これには駐留米軍の問題をからめてくるかもしれない。安倍内閣はこのような可能性について、なにかしらの準備をしているのだろうか。

もっと重大なのは、中国の動向だ。アメリカが手を引いた空白に乗じて、中国がアジア各国に触手を延ばしてくることは明白である。いま推進中のRCEP(東アジア包括経済協定)を核に、TPPに乗りそこなった各国の取り込みを図るに違いない。そのとき日本は、どう対応するのか。下手をすると、アメリカとの関係は薄まり、中国からは冷ややかに扱われかねない。そうなれば、日本は完全に2等国に成り下がる。

      ≪24日の日経平均 = 上げ +170.47円≫

      ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ

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