経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

とうとう金融不安の影 / アメリカ

2023-03-16 08:03:23 | 金融
◇ FRBは金利を上げられるのか? = アメリカでは中堅の銀行が相次いで倒産、金融不安の影が色濃くなった。まず10日に倒産したのはカリフォルニア州のシリコン・バレー銀行。保有資産の総額は28兆円ほどで、全米16番目の規模。次いでニューヨーク州のシグネチャー銀行が12日に倒産。こちらの総資産は約15兆円、全米29位だった。財務省とFRBは直ちに「すべての預金を保護する」と発表、いまのところ金融危機とか信用不安といった雰囲気は出ていない。

FRBによる金融引き締めで金利が上昇、保有する国債などの価格が大幅に下落した。これが両行に共通する倒産の原因である。つまり引き締め政策の副作用が、初めて発生したと言っていい。ただ金融当局による素早い対応で、直接的な連鎖倒産の発生は避けられそう。しかし同じような原因で、いくつかの銀行が行き詰まる可能性は残っている。

さらに恐ろしいのは、金融不安が低格付けの債券に飛び火すること。そうなれば金融当局にも火消しは難しくなり、事態はリーマン・ショックと似てくる。その可能性は、決して小さくはない。そんな状況でFRBは来週21-22日にFOMC(公開市場委員会)を開くが、はたして政策金利を引き上げることができるのかどうか。

日本経済への影響も、すでに大きく現われている。安全資産として円と日本国債が買われ、円相場が上昇し金利は下落した。また日銀が3か月ぶりにETF(上場投資信託)を購入したが、株価は大きく下落している。この先FRBが利上げを見送るとすれば、アメリカではインフレの長期化が懸念されるだろう。その影響も、日本経済にはまた違った風圧となって及んでくる。

        ≪15日の日経平均 = 上げ +7.44円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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利上げの副作用は 大きいか? (下)

2021-12-22 08:20:29 | 金融
◇ 信用度の低い債券が売り叩かれる = 金利の上昇は、借金をしている企業や個人の負担を重くする。IMF(国際通貨基金)の調査によると、世界中の政府・企業・個人が背負った債務の総額は、20年で226兆ドル(2京5700兆円)に及ぶ。仮に金利が0.1%上がっただけでも、負担は25兆円増える計算だ。特に低格付けの企業はすでに高い金利を付けた債券を発行しているから、追加の負担増はズシリと重く響く。

さらに優良債券の金利が上昇すると、投資家は信用度の低い債券を売って、優良債券に乗り換える。すると低格付けの債券は暴落する危険性が大きい。08年に起きたリーマン・ショックは、信用度の低い住宅ローン債券が暴落。これを大量に保有していた大手の投資会社リーマン・ブラザースが、倒産したことに端を発した金融恐慌だった。

この経験からも判るように、この種の金融不安に大金融機関が巻き込まれると、騒ぎは大きくなる。そこで各国は金融機関が低格付け債券を保有しないよう、監視を強めている。したがってリーマン・ショックの二の舞が起きる可能性は小さくなった。しかし現実に低格付け債券は無数に発行されており、その実態は必ずしも掴めていない。どこかで火を噴く危険性が、ないとは言えない。

利上げの副作用は、アメリカ発だけとは限らない。イングランド銀行は先週、政策金利を0.1%引き上げ0.25%とした。ECB(ヨーロッパ中央銀行)も、国債などの買い入れ規模を半分に縮小すると発表した。これらの利上げもアメリカと同様、新興国や低格付け債券に悪影響を及ぼす。そうしたなかで、日銀は超緩和政策を継続すると公言する。円安の進行だけではなく、欧米の利上げは日本経済にも思わぬ影響を与えると覚悟しておくべきだろう。

        ≪21日の日経平均 = 上げ +579.78円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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金融緩和時代の 終わり

2021-08-24 08:03:00 | 金融
◇ 文書で再確認したFRB = FRBは先週18日、7月27-28日に開いたFOMC(公開市場委員会)の議事要旨を公表した。FOMCは政策決定会合。公表された文書には「ほとんどの参加者が、年内に資産購入額を減らすことが適切だと判断した」と明記されていた。これは想定外の事態でも発生しない限り、FRBが早ければ9月、遅くとも11月のFOMCで、量的金融緩和の縮小に踏み切ると宣言したことになる。

これまでFRBは、パウエル議長はじめ幹部が議会証言や記者会見、講演などを通じて金融緩和縮小の時期に言及。時間をかけて市場を洗脳してきた。その結果、市場は「年内の縮小開始」を十分に予想していた。だが文書の形で再確認されると、やはり動揺は免れない。このため先週のダウ平均は400ドル近く下落した。

しかし市場はすぐに元気を取り戻し、強気論が頭を持ち上げている。たとえば「資産購入の減額が始まっても、市場への資金供給は続く。だから株式はまだ買われる」という主張。あるいは「減額は1年以上もかかるから、利上げなどの引き締めはずっと先の話。それまでに景気が下降すれば、量的緩和の縮小さえ出来なくなる」という予想。

市場が1つだけ心配するのは、インフレの進行だ。現在の物価上昇が秋以降も続けば、FRBも段階的な資産購入の縮小などとのんびり構えてはいられない。すぐにも買い入れを止め、金利を引き上げる可能性もなくはない。いずれにしても10年間続いた金融緩和時代は、終焉に向かいそうだ。さて、日銀はどう動いたものか。

        ≪23日の日経平均 = 上げ +480.99円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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緩和の縮小? 引き締め入り? (下)

2021-06-09 07:54:36 | 金融
◇ 日銀は株式とETFの保有額を減らした = 日銀はリーマン・ショック後の不況や今回のコロナ不況に対処するため、巨額の有価証券を買い入れている。その買い入れ代金が市中に流れ、未曽有のカネ余り時代を招来した。最も多く購入しているのは国債。この5月末の保有残高は538兆5500億円にのぼっている。ことし1-5月間では、30兆4000億円の増加だった。したがって、日銀の量的な金融緩和政策はまだ継続していると認定できるだろう。

次に買い入れが多いのはETF(上場投資信託)だ。5月末の保有額は36兆1300億円。日銀はことし3月にETFの買い入れ方法を変更、株価の暴落時にだけ購入することになった。このため4-5月は701億円の買い入れにとどまっている。ところが5月末の保有額を昨年末に比べると1655億円減っている。昨年1-5月中には4兆円も買い入れていたから、ETFに関する限りは大幅な金融引き締めになる。

その一方、社債は1-5月中に1兆3000億円を購入。5月末の保有残高は7兆7600億円になった。また日銀は金融機関の資金繰りを助けるため、金融機関が保有していた一般株式を買い上げてきた。5月末の保有残高は5463億円で、昨年末に比べると507億円の減少だった。僅かではあるが、引き締めの方向に向いている。

国債の購入額が大きいため、この程度のことで政策に変化が出たとは言えない。だが日銀は目立たないところから、保有資産の整理を始めたと考えられないこともない。この小さな芽が、これから大きくなって行くかどうか。見守る必要はあるだろう。いずれにしてもFRBの社債売却は、その詳細まで公表してのこと。日銀は何も言わない。両者の相違点は、ここにある。

       ≪8日の日経平均 = 下げ -55.68円≫

       ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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緩和の縮小? 引き締め入り? (上)

2021-06-08 07:26:48 | 金融
◇ FRB、日銀ともに動き出す = アメリカの中央銀行であるFRBは2日「昨年に購入した社債の売却を始める」と発表した。コロナ不況に際して企業の資金繰りを支援するために、市場から社債を購入。その残高は138億ドル(約1兆5000億円)にのぼっている。近く売り出しの窓口となるニューヨーク連銀が、詳細を公表する予定。FRBは「社債市場が落ち着き、役割を果たしたため」と説明。株式市場なども、冷静に受け止めた。

アメリカではワクチン接種が進み、コロナの勢いが目立って衰えた。このため景気は、急速に回復しつつある。と同時にインフレ警戒感が強まり、いまはFRBがいつ金融緩和政策の縮小を始めるか。さらには引き締め政策に転じるかに、最大の関心が集まっている。そんなところへの社債売却だが、FRBはまだ大量の国債購入を続けている。このため比較的に小さい額の社債の売却が始まるとしても、市場は動揺しなかった。

しかし見方を変えてみると、やはり社債を売れば売っただけ、市場に出回る資金量は収縮する。FRBは影響の小さい社債から、引き締めを開始するとも言えるわけだ。この措置が金融引き締め政策への準備段階で、ここから国債の買い入れ縮小に進むと考えられないことはない。こうした予想が、これから市場で広がる可能性も十分にあるだろう。

中央銀行による社債の購入は、EUや日本でも実施されている。ECB(ヨーロッパ中央銀行)や日銀の場合は、まだ社債の購入を増やしている段階だ。日銀の社債保有額は5月末で約7兆7600億円。昨年末より1兆3000億円増えた。したがって社債に関する限り、日銀はまだ緩和政策を続けている。ところが・・・。     

                           (続きは明日)                                                 

       ≪7日の日経平均 = 上げ +77.72円≫

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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