経済なんでも研究会

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プラス成長を死守せよ! ; 人口縮小対策

2023-04-29 07:28:14 | 人口
◇ 日本の人口は70年までに3割も減ってしまう = 「日本の人口は2070年に8700万人」「出生数は59年に50万人割れ」「生産年齢人口は3000万人も減る」--厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した将来人口推計である。新聞紙上にこんな大見出しが躍ったから、びっくりした読者も多かったろう。日本は大丈夫なのだろうか。心配しない方が、おかしいくらいだ。

ただ一種の錯覚もないではない。こういう数字を突き付けられると、普通の人はつい現在の世界と比較して見てしまう。つまり現在の世界のなかで、人口が8700万人に縮小した日本を想像してしまうわけだ。しかし50年後、アメリカやEU、中国やロシア、インドや他の新興諸国がどうなっているか。これは全く見当が付かない。したがって、そうしたなかでの日本の立ち位置も実は想定不能なのである。

縮小する人口への対策。徹底した少子化対策、ロボットなど機械化の推進、外国人の誘致、生産性の向上などなど。新聞各紙はほとんど一致して対応策を挙げている。これは全く正しい。だが、そのすべてで成果を挙げることは、まずムリと言わざるをえない。こうしたなかから、何を重点的に選択して資源を投入するか。その議論を十分にしないと、またバラマキになってしまう。

もう1つ、政府はあらゆる手段を講じても、プラス成長を死守してもらいたい。たとえば平均0.5%の低成長でもいい。GDPの総額が減らない限り、人口が減少すればするほど1人当たりGDPは増えることになる。人々の生活水準は、少しずつでも上昇するわけだ。2070年に生きる孫の世代が明るい経済環境の下で暮らせるよう、これだけは努力しよう。

        ≪28日の日経平均 = 上げ +398.76円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     

貿易大赤字が 教えること (下)

2023-04-28 08:06:36 | 貿易
◇ 「自民党が野党になった」ことが一因? = EIA(米エネルギー情報局)の発表によると、アメリカでは多くの州が補助金や免税措置をとって再生可能エネルギーの普及に努力している。この結果、たとえばテキサス州では風力、カリフォルニア州では太陽光による発電比率が急増した。全米でみると、再生エネルギー発電の比率が20%を超え、石炭火力を抜いて天然ガスに次ぐ2位となっている。

EUでも22年中に、風力と太陽光を中核とする再生エネルギー発電が6200万㌔㍗分増加した。この結果、再生エネルギー発電の比率は22%に上昇、天然ガスの20%を上回った。ウクライナ戦争前に比べて、太陽光発電は24%も増加している。さらに23年も補助金の効果で、再生エネルギー発電は大幅に増える見込み。化石燃料による発電の比率は20%を下回ると推計されている。

日本は、どうだろう。資源エネルギー庁の集計によると、21年度のエネルギー自給率は13.4%。つまり9割近くを輸入に頼っているのだから、国際価格が高騰すれば貿易収支は大赤字になるのは当然だ。したがって自給率を高めることが必要だが、それが遅々として進まない。たとえば発電に占める再生エネルギーの割合は、21年度で20.3%。前年より0.5ポイントしか上昇しなかった。しかも火力による発電比率は72.9%で、世界でもズバ抜けて高い。

その一因は「自民党が野党化したことによる」と言ったら、飛躍し過ぎだろうか。電気・ガス・ガソリン価格の高騰に対して、自民党は補助金を出して価格を抑える政策を継続した。かつては野党が主張したような対策である。この結果、自給率を上げるような政策には予算が回らなくなった。だから貿易の大赤字が続く。そして野党は、選挙で勝てなくなった。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +41.21円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

貿易大赤字が 教えること (上)

2023-04-27 07:20:12 | 貿易
◇ 燃料輸入の急増が景気の足を引っ張る = 22年度の貿易収支は、驚くほどの大赤字だった。財務省の発表によると、輸出は前年度比15.5%増の99兆2265億円。輸入は32.2%増の120兆9550億円。輸出も健闘したが輸入が伸びすぎたために、記録的な大赤字となってしまった。これまでは13年度の13兆7500億円が最大の赤字額、それを一挙に飛び越したことになる。

輸入が大幅に増加した最大の原因は、燃料輸入の激増。原油・粗油は13兆6932億円で前年比70.8%の増加、LNG(液化天然ガス)は8兆8923億円で77.6%の増加、石炭にいたっては8兆5806億円で2.4倍の増加となっている。燃料全体では実に35兆1924億円、前年比では77.0%の増加だった。言うまでもなく燃料の国際価格が急騰したうえに、円安の効果が加わったことによる。

ここで話を分かりやすくするため、実際にはありえない状況を考えてみよう。仮りに日本が燃料を100パーセント自給し輸入はゼロだったとしたら、どうだろう。当然、輸入代金の35兆円は支払わないから、国内に残る。もし、その大半が消費や設備投資に回されたら、景気はよくなり成長率も上昇したに違いない。逆に巨額の輸入代金を支払ったために、景気は足を引っ張られたと言ってもいい。

もちろん、日本が燃料を100パーセント自給することはありえない。しかし仮に自給率を1割上げて輸入を1割減らせば、3兆5000億円ものおカネが国内に留まるわけだ。こういう考え方から、アメリカやヨーロッパ諸国はみなエネルギーの自給率を上げている。ところが日本は努力が足りず、自給率が上がらない。貿易の大赤字は、その結果なのである。

                         (続きは明日)

        ≪26日の日経平均 = 下げ -203.60円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

効き目が薄い 引き締め政策 / アメリカ (下)

2023-04-26 07:54:26 | アメリカ経済
◇ カネ余り状態が解消しない = アメリカでは政策金利の急速な引き上げにもかかわらず、エネルギーや食品を除いた物価の上昇が続く。その一因は、人手不足で賃金が上がったことに求められる。また将来のインフレ期待が弱まらないためだという説も強い。さらに基本的には、カネ余り状態が少しも解消していないことが原因だと考えられる。

FRBは昨年6月から、金融の量的引き締めも実施している。保有している国債や住宅ローン担保証券を毎月950億ドルずつ市場で売り戻し、資金を吸収する操作だ。しかし、それまでの緩和政策で市中に放出した資金量は膨大。まだその1割程度しか吸収し切れていない。たとえば市場でリスク感が高まると、資金の多くはMMFにいったん逃避する。MMFというのは短期国債などで運用する投資信託。その残高は現在、5兆2800億ドル(約70兆円)もある。

その一方で、利上げの副作用は確実に現われ始めた。住宅ローンの上昇で不動産価格が低落、消費者ローンの上昇で小売りが低迷、中小企業のカネ繰りも苦しくなった。そこへ金融不安の影響で、銀行の融資態度が急に厳しさを増す。景気の先行きに対する見方は、ますます慎重になってきた。物価高と不況が共存するスタグフレーションを警戒する声も強い。

量的引き締めがまだ不十分だから、カネ余り状態は解消しない。豊富な資金が市中に滞留しているから、株価の腰は強い。悪材料が姿を消すと、すぐに上がる。しかしFRBとしては、利上げや量的引き締めを続けなくてはならない。その気配が強まると、株価は下がる。上値は重い。なんとも矛盾に満ちた状況だが、これが現実なのだろう。

        ≪25日の日経平均 = 上げ +26.55円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

効き目が薄い 引き締め政策 / アメリカ (上)

2023-04-25 07:30:08 | アメリカ経済
◇ インフレ圧力が衰えない = FRBは来週5月2-3日に開くFOMC(公開市場委員会)で、政策金利をさらに0.25%引き上げる見込み。物価上昇の勢いが衰えないためで、市場も完全に織り込んでいる。年内には利下げに転じるという期待も、ほぼ消滅した。この結果、かつては5.1%程度と想定された年末の政策金利は、ついに6%に近付くという予想が一気に強まっている。

アメリカのインフレ圧力は、一見すると鈍化したようにもみえる。たとえば3月の消費者物価は、前年比5.0%の上昇にとどまった。2月の6.0%上昇からは、目に見えて改善している。ところがエネルギーと食品を除いたコア指数は5.6%の上昇で、2月より上げ幅が0.1ポイント拡大した。要するに総合指数の改善は、原油の国際価格が下落したことによるもの。金融引き締めの効果が出たわけではなかった。

人手不足がもたらす賃金面からのインフレ圧力も、いぜん続いている。3月の雇用統計によると、平均時給は前年比4.2%の増加となお高い。このためヘルスケア・小売り・旅行部門では値上げが続き、物価水準全体を押し上げている。人手不足はコロナ禍で離職を余儀なくされた人が、なかなか元の職場へ復帰しない。少しでも高い賃金を求めて転職する人が増えているためだ。

インフレ抑制のため、FRBが金融政策を引き締めに転換したのは昨年3月。そこから急ピッチで利上げを繰り返し、政策金利の水準はすでに5%に達した。またFRBは昨年7月から量的引き締めも開始、原則として毎月950億ドルの国債などを市場に売り戻している。だが、こうした大規模な金融引き締め政策にもかかわらず、インフレ圧力は収まらない。なぜだろう。

                     (続きは明日)

        ≪24日の日経平均 = 上げ +29.15円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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