経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

効かない 金融引き締め / アメリカ

2023-10-31 07:55:27 | 金融
◇ 量的引き締めはまだ1兆ドル = パウエルFRB議長が「経済は金利の影響を受けにくくなっているのかもしれない」と嘆き節。珍しいことである。FRBは昨年3月からインフレ退治のために金融政策を引き締めに転換、政策金利をゼロから5.25%まで引き上げた。しかしアメリカ経済は堅調を維持し、物価はなかなか下がらない。パウエル議長の嘆きは、まだまだ続きそうである。

金利がこれだけ上昇すると、ふつう経済には強いブレーキがかかる。だが7-9月期のGDP速報は年率4.9%の成長、9月の小売り売上高は前月比0.7%の増加。ともに予想を大きく上回った。そして9月の消費者物価も前年比3.7%の上昇と、勢いが収まらない。もちろん高金利の影響で、住宅や自動車の販売は下向きに。また中小企業や低所得者の一部が、苦境に陥っていることも確かだ。

ところが多くの企業や個人は、低金利時代に借金をしてしまった。だから高金利時代がきても、あまり影響を受けないのではないか。また自己資金を貯め込み、借金に頼らない企業や個人も増えている。パウエル議長が「金利の影響を受けにくくなった」と述べたのは、こういう理由からだと考えられる。そこで、こんな状態がずっと続くのか。それとも時間が経てば、高金利の効果が出てくるのか。そこが大問題となってくる。

金利は上がったが、量的引き締めは進まない。FRBは昨年3月時点で8兆6000億ドルの現金を市場に放出していた。そこから国債や株式などを売り戻して資金を回収しているが、これまでの回収額は1兆ドル程度。だから資金はまだ市中に大量に残っている。このため引き締めの効果が出にくいという見方も有力だ。もっと大量に売り戻せば、国債や株式の価格が下がり過ぎてしまう。FRBはそれを警戒して量的引き締めを急がないとすれば、ある意味では自業自得と言えるだろう。

        ≪30日の日経平均 = 下げ -294.73円≫

        ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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今週のポイント

2023-10-30 06:33:07 | 株価
◇ あさって1日のパウエル会見待ち = ダウ平均は先週710ドルの値下がり。2週間の続落で、この間の下げ幅は1200ドルを超えた。長期金利の上昇、中東情勢の緊迫、それに長引く自動車ストなど、株式市場には次々と逆風が吹き込む。7-9月期の実質GDP成長率が4.9%と予想をはるかに上回ったことも、金融引き締めを止められない原因になるという理由で悪材料視された。いまはあさって1日に行なわれる、パウエルFRB議長の記者会見を待つばかり。

日経平均は先週268円の値下がり。2週間の続落で、この間の下げ幅は1300円を超えた。アメリカに引きずられて、日本の長期金利も0.88%と10年3か月ぶりの高さに。それでも日米間の金利差はさらに広がり、円相場は150円台にまで下落した。臨時国会が開かれ、減税を含む政府の経済対策が議論のマトに。しかし市場は、ほとんど無視している。

FRBが31-1日の会議で「利上げせず、金利を据え置く」ことは、ほぼ確実。だが「引き締めは来年にかけても続く」という推測が大勢を占めている。このため金利が上昇、特にハイテク株が大きく値下がりした。この傾向はパウエル会見が終わっても、変わりそうにない。一方、日銀は30-31日に政策決定会合を開くが、多少の修正を打ち出せるかどうか。

今週は31日に、9月の労働力調査、鉱工業生産、商業動態統計、住宅着工戸数、10月の消費動向調査。1日に、10月の新車販売。アメリカでは31日に、10月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。1日に、10月のISM製造業景況指数。3日に、10月の雇用統計、ISM非製造業景況指数。またEUが31日に、7-9月期のGDP速報。中国が31日に、10月の製造業と非製造業のPMIを発表する。なお31日に、日銀総裁の記者会見。1日に、FRB議長の記者会見。

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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‟危ない金融商品”の 季節

2023-10-28 07:40:49 | 金融
◇ 高利回りにはリスクが伴う = アメリカの長期金利が16年ぶりの高さに上昇している。10年もの国債の利回りは先週5%台に乗せた。雇用や物価などが予想以上に堅調で、FRBの引き締め政策が長続きするという見方。政府の財政支出増加で、国債発行額が急増。そして議会が空転し予算成立のメドが立たないことが、長期金利を引き上げる原因となっている。最も信用度が高い国債でさえ、年5%の金利が付かないと売れない。その他の公共債や社債の利回りが、もっと高くなるのは当然だ。この高金利時代が、‟危ない金融商品”を生み出すことになる。

企業が売り出す社債の場合、その企業の経営状態が苦しいほど高い金利を付けないと売れない。なかには10%を超える金利の社債も発行される。こうした企業がデフォルト(債務不履行)や倒産する危険性は大きいから、その社債は代表的な‟危ない金融商品”と言えるだろう。こうした高金利の債券を集めて売り出した証券が、リーマン・ショックでは紙切れになった。

アメリカでは、大銀行が定期預金に高い利子を付けている。このため最近は、日本の銀行がドル建ての定期預金を高金利で売り出し始めた。たとえば三井住友銀行は年5.3%、SBI新生銀行は6%の商品を開発している。日本の定期預金なら、年0.01%の利子しか付かない。比較してみれば、きわめて魅力的。しかもデフォルトの危険は全くない。しかし1つだけ、落し穴がある。

それは為替相場。たとえば年7%の金利が付いていても、もし円相場が10%上昇すれば、損失の方が大きくなってしまう。7%の利息が受け取れるのは1年後、そのとき円相場がどうなっているかは神のみぞ知る世界。だから銀行はその危険性をよく説明してから売るはずだ。しかし経営不振の社債とは全く異なるが、これも一種の‟危ない商品”には違いない。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +389.91円≫

        【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】     
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100ドルを超える恐怖 : 原油価格 (下)

2023-10-27 07:24:19 | エネルギー
◇ 日本はこの50年間なにをやったのか = ちょうど50年前の1973年10月6日、エジプトとシリアが共謀してイスラエルを奇襲。いわゆる第4次中東戦争が始まった。結果はイスラエルの勝利に終わったが、OPEC(石油輸出国機構)はイスラエル寄りの先進国を牽制するため、突如として原油の輸出価格を4倍に引き上げた。これが石油ショック。各国の物価は急騰、景気は下降を余儀なくされた。日本でもトイレット・ペーパーの買い占め騒ぎが起こり、当時の福田赳夫首相はこの現象を‟狂乱物価”と命名している。

この経験から、日本は実に多くのことを学び取った。原油の輸入先の分散、輸入先国との良好な関係維持、省エネの推進、エネルギー輸入依存度の引下げ、備蓄の増強など・・・。このうち省エネの推進や備蓄の増強、それに原油から天然ガスへの切り替えなどは、そこそこ進捗した。しかし中東への依存度は当時の80.7%から、最近は95.2%へと悪化している。

なかでも重要なのは、エネルギー輸入依存度の引き下げだ。総発電量に占める輸入化石燃料の比率をみると、1972年度は94.0%だった。それが22年度には72.4%まで下がっている。しかし50年間で、これしか下げられなかったと言うべきだろう。もし50%にまで下げていたら、現在の貿易赤字は大幅に縮小。物価もこんなには上がらなかったはず。

エネルギー輸入依存度の引き下げは、国内自給率の引き上げによって達成される。つまり日本はこの50年間に、もっと原発を安全に稼働させ、太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電量を増やしておくべきだった。これは歴代政府の失政だったと言えるだろう。産油国側は「減産による価格維持」を学んだが、日本政府は50年前の教訓を生かしきれなかった。

        ≪26日の日経平均 = 下げ -668.14円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
 
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100ドルを超える恐怖 : 原油価格 (上)

2023-10-26 07:19:40 | エネルギー
◇ ガザ戦争で高まる危険性 = 原油の国際価格は、いま高止まりしている。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物相場は、このところ1バレル=90ドルを前に足踏み状態。しかしイスラエルのガザ地上作戦が、本格的に始まったらどうなるか。ごく短期で決着すればともかく、もし長引いてレバノンやイランなどの近隣アラブ諸国が巻き込まれれば、価格は確実に100ドルを突破するに違いない。それが世界経済に及ぼす悪影響は、計り知れないほど大きくなりそうだ。

原油価格が100ドルを超えれば、各国の物価はさらに押し上げられる。アメリカやEUの中央銀行は、金融引き締めを継続せざるをえなくなる。その結果、景気は悪化するだろう。中国も燃料高で、景気の回復はさらに遅れる。日本も貿易赤字がいっそう拡大、企業収益も圧迫される。景気が下降する一方で物価は上昇、庶民の生活は苦しくなるばかり。政府が補助金を積み増せば、財政は破たんに近付く。

現在の原油価格は、実に複雑な要因が重なって形成されている。まず供給面では、OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどによる生産調整。さらにサウジアラビアとロシアは7月から、自主減産を追加。これを継続することで、相場を下支えしてきた。たとえば9月上旬に、プーチン大統領がサウジのムハンムド皇太子と電話会談しただけでも、価格は上昇した。その可能性は小さいが、仮にイランがホルムズ海峡を封鎖したら、価格は130ドルにも暴騰するだろう。

需要面の要因も複雑だ。アメリカの原油在庫が行楽シーズンのガソリン消費増加で減少すると、価格は上昇。中国の景気回復が遅れて需要が伸びないと、価格は下落。冬の暖房シーズンが近づくと、価格は上がる。現在はアメリカで高価格のためにガソリンの消費が伸び悩み、それが原油価格を抑える要因となっている。こうした需給両面からの力に加えて投機資金が暗躍するから、先行きの予想はかなり難しい。

                       (続きは明日)

        ≪25日の日経平均 = 上げ +207.57円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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