経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

上場廃止が なぜ流行る? (下)

2024-04-26 07:12:11 | 市場
◇ ‟上場”の意味を考え直すチャンスかも = 上場廃止は、いまに始まった現象ではない。たとえばリーマン・ショック後にも増加したが、当時の原因はほとんどが経営不振。倒産したり、上場基準を維持できずに市場から撤退した。これに対して昨今の離脱は、経営者が意図して決定する、一種の”積極的な戦略”。ただし一般的に言うと、外部や一般株主による提案や要求から逃れるための‟消極的な目的”による場合が少なくない。

たとえば東証は昨年春、上場企業に対して「PBR(株価純資産倍率)を1以上に引き上げる」よう強く要請した。この結果、多くの企業が努力し、株価の上昇にもつながった。しかし企業のなかには、重い負担と感じたところも。また最近はアクティビストと呼ばれる‟もの言う株主”の活動も、目に見えて活発になった。アクティビストの発言はさまざまで企業の経営に役立つものも多いが、なかには企業の存続を否定するような提案も少なくない。

具体的には「一部の事業を売却せよ」とか「ある事業にもっと投資せよ」など。さらには「配当を増やせ」から「社長や役員の再任を拒否する」まで。特に四半期だけの業績をみて、経営者の責任を追及する株主も多い。これらの株主を説得し和解するためには、大変なエネルギーと時間を必要とする。それなら上場を止めてしまう方がいい、と考える経営者も出てくるわけだ。

自分が起業した会社を上場することは、大きな夢に違いない。だが東証に上場する企業は、いま3900社もある。ニューヨーク証券取引所に上場する企業は2900社だ。つまり日本の上場会社は粒が小さすぎる。そこに悪質なアクティビストが暗躍する素地が生まれ、それを取り締まる方法もない。いまや‟上場”の意味が問われているのかもしれない。

        ≪25日の日経平均 = 下げ -831.60円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
  

上場廃止が なぜ流行る? (上)

2024-04-25 07:11:25 | 市場
◇ 昨年は過去最多65社が消えた = 東芝、大正製薬、ベネッセ--だれでも、これらの社名は知っている。だが「この3社の共通点は何?」と聞かれて答えられるのは、株式投資家だけかもしれない。正解は「いずれも昨年、上場を止めた会社」である。調査会社レコフデータによると、上場廃止を目的としたTOB(株式公開買い付け)を実施した企業は、昨年65社にのぼった。買い付け金額は5兆3600億円で、前年の3.8倍に達している。せっかく上場したのに、なぜ止めるのだろうか。

特に経営者が自ら参加する、MBOと呼ばれる買収が多い。たとえば、ある企業の経営者が事業を改革する必要があると判断する。しかし多くの株主に説明して理解してもらうのには、大変なエネルギーと時間を要する。それならば上場を取り止め、自分たちだけで決断を下す方がずっと効率的だ。こう考えた経営者が、MBOを支援するファンドから資金を借りて踏み切る場合が多い。ただ実態は個々のケースによって、さまざまだ。

東芝のケース。23年11月22日の臨時株主総会で決定。12月20日付けで上場を廃止した。公開買い付け金額は1株当たり4620円。当時の取引価格より20円ほど高い。買い付け金額は2兆円に達した。廃止の理由は「中長期で一貫した事業戦略を実行して変革を成功させるには、安定した経営基盤の構築が必要」と説明している。

大正製薬のケ-ス。24年1月15日までTOBを実施。1月19日付けで、創業者一族の上原茂副社長が代表を務める大手門株式会社の子会社とし、上場を廃止した。買い付け総額は7100億円。廃止の理油は「中長期的な成長のために事業構造の転換と先行投資が必要。それらの政策を株式市場からの評価にとらわれず、迅速に行うため」と説明した。巨額のカネを使っても、一般株主を遠避けたいという気持ちが丸見えだ。

                     (続きは明日)

         ≪24日の日経平均 = 上げ +907.92円≫

         ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

‟いい子”を集めて クラス替え : 東証

2022-04-08 07:44:44 | 市場
◇ 中途半端でインパクトなし = 東京証券取引所の新しい市場区分が、今週初めからスタートした。これまでの「第1部」「第2部」「ジャスダック」「マザーズ」の4市場が、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に改編されている。このうちのプライム市場に優秀な企業を集め、市場の価値を上げることが目的。ところが関係者の評判は、あまり良くない。大方の感触は「なんにも変わりがない」だった。

東証が光り輝いていたのは、バブル末期の1980年代。89年には、第1部上場企業の時価総額が590兆円に。ニューヨーク市場を抜いて世界一になった。しかし、そこからは転落の一途。2011年末の時価総額は251兆円にまで落ち込み、上海市場にも抜かれて世界第5位に。そこで東証は新興企業も招致しようと、上場の条件を甘くした。このため第1部の企業は、この3月末で2176社に及んでいる。

こんどは逆に、優良企業に絞ろうという戦略だった。ところがふたを開けてみると、プライム市場の上場企業は1839社にも達している。せっかく厳しい上場基準を作ったのに、‟経過措置”と称して基準に満たない企業の上場を認めてしまったからだ。表現は悪いかもしれないが、‟裏口入学”させたわけである。結局、第1部に比べてプライムの上場企業数は337社しか減らなかった。

この結果が「なんにも変らない」感想に繋がったのだろう。逆に基準をもっと厳しくして、プライムの上場企業を1000社ぐらいに絞ったらインパクトはずっと強まったはずだ。多くの企業が条件を満たそうと、努力するようになったに違いない。こうした改革の初心を忘れた東証は、自ら飛躍するチャンスの芽を摘み取ってしまった。

        ≪7日の日経平均 = 下げ -461.73円≫

        ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

P・フライデーの 設計ミス

2017-03-01 07:38:09 | 市場
◇ 今月は年度末にぶち当たる! = 毎月の最終金曜日は午後3時で終業――サラリーマンには嬉しいプレミアム・フライデー制度が先週24日にスタートした。テレビのニュース画面によると、いつもより賑わった飲食店もあれば、閑古鳥が鳴いたイベントもあったらしい。どうやら大都市の官公庁街に近い地域では成果が目に見えたが、地方では変化が出なかったようだ。

金曜日を早じまいにして、その時間を有効に使ってもらう。土日につなげれば、2.5連休という形にもなる。その結果、消費が増えれば景気もよくなる。政府はこう考えて、プレミアム・フライデー制度の奨励に踏み切った。だが実際に導入したのは、ごく一部の大企業と官公庁だけだった。

もちろん、制度を評価するのは早すぎる。いまでは定着した週休2日制も、1992年5月に国家公務員への適用が始まってから、じわじわと普及して行った。こんどのプレミアム・フライデーも、時間をかければ浸透して行くだろう。ただ何事も最初が肝心。初めから躓いてしまうと気合が入らない。

この点で気になることが1つ。それは今月の最終金曜日が3月31日に当たることだ。いわば年度末の大晦日。よほど余裕のある企業でないと、プレミアムを出すわけにはいかないのでは。公務員だって職場によっては、この日のうちに終わらせなければならない仕事があるだろう。焦らずに、この制度は4月の新年度からスタートさせるべきではなかったか。

      ≪28日の日経平均 = 上げ +11.52円≫

      ≪1日の日経平均は? 予想 = 上げ


市場も割れた トランプ評価

2017-02-28 07:56:27 | 市場
◇ 株高なのにドル安も進む = アメリカでは、トランプ大統領の支持派と反対派が国中を2分している。と思っていたら、先週は市場もはっきりと2分された。株式市場は連日の新高値更新、ダウ平均は2万ドルに乗せてから1か月あまりで、もう2万1000ドルを狙う位置にまで上昇した。ふつう株式市場に資金が流入すると、債券市場からは資金が流出する。そのため債券価格は下がって金利は上昇。為替市場ではドル高になりやすい。

ところが今回は違った。債券市場にも資金が流入し、債券価格は上がって金利は下落。たとえば10年もの国債の流通利回りは、年2.31%に下落した。金利が下がったためドルは売られ、日本円の対ドル相場は一時111円台に。約2週間ぶりの高値に上昇している。ニューヨークの株価が絶好調なのに東京の株価が冴えなかったのは、これが大きな原因になったようだ。

ニューヨークの株価が上昇したのは、アメリカの景気回復が順調に進み、企業の業績も上向いていることに支えられた。加えてトランプ大統領による景気刺激策に対する期待も大きい。その一方で投資家の半数は、トランプ政策の実現性に疑問を持ち、リスクの少ない債券市場に資金を投入したわけだ。

FRBは2月に開いた政策決定会議の議事録を公表したが、これについても市場の反応は2分した。株式市場は利上げが5月以降に持ち越されたという観測を好感。債券市場は、FRBがトランプ政策の不確実性を指摘した点を重視した。言うなれば、投資家のトランプ政策に対する評価も2分されたことになる。トランプ大統領がきょう行う施政方針演説で、こうした状況はどう変わるのだろうか。

      ≪27日の日経平均 = 下げ -176.07円≫

      ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ


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