経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

続伸か? 反落か? : 株価の行くえ (上)

2024-02-29 07:36:34 | 株価
◇ 絶好調NY市場のアキレス腱 = 日米欧の株式市場が、そろって史上最高値を更新中。その動きを主導したのは、やはりニューヨーク市場だった。いまウオール街は“怖いものなし”の状態。というのも景気がいいことを示す指標が出れば、素直に喜ぶ。景気が悪い指標が出たら、FRBによる利下げが早まると歓迎する。ダウ平均は4万ドルに向けて、まっしぐらだ。しかし、そんな絶好調のニューヨーク市場にも死角はある。

ニューヨークの株価を押し上げた原動力は、半導体だ。その象徴は、驚異的な決算を発表したエヌビディア。株価が急騰した結果、市場では「投機的に過ぎる。バブルだ」という評価が強まっている。仮にエヌビディアの株価が急落したら、どうなるだろう。周辺の半導体関連銘柄も、一斉に売られるに違いない。つまり上昇時と同様に、エヌビディアが株価反落の先導役になる危険性もありうるわけだ。

景気の先行きについても、不安がないわけではない。たとえば金利の上昇で、クレジット・カード債務の返済率が急落している。アメリカはクレジット社会だから、その影響はかなり大きい。そのせいもあってか、1月の小売り売上高は前月比0.8%の減少。消費支出が失速する予兆ではないかという観測も広がった。仮に本当に景気が後退したら、市場も「利下げが近い」と言って喜んではいられないだろう。

もう1つ、一部の地方銀行に経営不安の影が差してきたことも心配だ。これも金利の上昇で、不良債権が顕在化してきたためである。いまの勢いからみると、ダウ平均が4万ドルを達成する可能性は十分にありそうだ。だが、その後は数々の死角を避けながら、さらに高みを目指して行けるのか。現段階では、残念ながらまだ予測不能である。

                    (続きは明日)    

        ≪28日の日経平均 = 下げ -31.49円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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半導体世紀の 魔怪獣か

2024-02-27 07:29:37 | 株価
◇ 世界中のカネを揺さぶったエヌビディア = 世界各国の株価が、一斉に上昇した。ダウ平均は連日のように史上最高値を更新して、ついに4万ドルを狙う勢い。日経平均は34年ぶりに史上最高値を更新、これまた4万円を目標にし始めた。ヨーロッパの株価も、たとえば代表的な指数のストックス600は2年ぶりに最高値を更新。さらに台湾の株価も高値を更新している。このところ下げていた上海総合指数でさえ、久しぶりに3000を回復した。

こうした世界同時株高のきっかけとなったのが、アメリカの半導体メーカーであるエヌビディア社の決算発表。先週21日に発表された23年2月-24年1月期の業績は、実に驚くべき内容だった。売上高は609億2200万ドル(約9兆1400億円)で、韓国のサムソンやアメリカのインテルを抜いて世界首位に。営業利益は329億7200万ドル(約5兆円)で、前年度の7.81倍に急増。これで世界各国の半導体関連銘柄に、買い注文が殺到した。

エヌビディアはカリフォルニア州に本社を置く、半導体メーカー。GPUと呼ばれる画像処理チップや人工知能向けチップの世界シェアは約8割。1993年に、LSIロジック社の出身者が中心となって設立した若い会社。現在の株価は790ドルほどだが、1年前は230ドル、5年前は44ドルだった。時価総額もいまや2兆ドル、アップル・マイクロソフト・サウジアラムコに次いで、世界第4位の巨大企業になった。

この半導体ブームは、いつまで続くのだろか。エヌビディア社は24年も増益を維持できると予想、人工知能はこれから発展期に入るから需要は衰えないとみる人も多い。しかしバイデン政権が半導体の中国向け輸出規制を強化したことは、需要の減退要因になる。またエヌビディアの株価は割高になっているから、近く反落する公算が強い。そのとき、こんどはエヌビディアが株安の先導役になる可能性がある。ウオール街では、いま論争が盛り上がってきた。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +5.81円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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今週のポイント

2024-02-26 07:35:26 | 株価
◇ サクラ満開の日米株式市場 = ダウ平均は先週504ドルの値上がり。終り値は3万9132ドルで、またしても史上最高値を更新した。半導体大手のエヌビディアが11-1月期の決算を発表、純利益が前年比で8.7倍に増加。これを受けて、木曜日には半導体関連を中心に450ドル以上も値を上げたことが大きかった。このところ最高値の更新を続けているが、それでも年初来の上げ幅は1400ドルあまりと落ち着いた動き。ニューヨーク市場は花盛りだが、大騒ぎはない。

日経平均は先週611円の値上がり。終り値は3万9099円となり、とうとう34年2か月ぶりに史上最高値を更新した。ニューヨーク市場に引きずられて半導体関連銘柄が急騰、これが全体の株価を押し上げる原動力となっている。年初来の上げ幅は5639円、上昇率は17%に達した。ただTOPIXは、まだ最高値を8%ほど下回っている。

ニューヨーク市場は「怖いものなし」の雰囲気。景気にプラスの指標が出れば、素直に喜ぶ。マイナスの指標が出れば、利下げの公算が大きくなると考えるからだ。ダウは4万ドルを目指すだろう。一方、日経平均もまだPER(株価収益率)が16倍強にとどまっている。34年前のバブル期には60-70倍にも達していた。ここが最大の相違点だ。東京市場も花盛りだが、当時と違って花見の宴は見当たらない。

今週は26日に、1月の企業向けサービス価格。27日に、1月の消費者物価。29日に、1月の商業動態統計、鉱工業生産。1日に、1月の労働力調査、2月の消費動向調査、新車販売台数。アメリカでは26日に、1月の新築住宅販売。27日に、12月のFHFA住宅価格指数、2月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。28日に、10-12月期のGDP改定値。1日に、2月のISM製造業景況指数。また中国が29日に、2月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫   
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GDP速報が提起した 問題点 (下)

2024-02-24 07:45:52 | 景気
◇ 企業を向いた財政・金融政策 = 新聞各紙が「「日本のGDPが4位に転落」を大々的に報じた15日、その同じ紙面で「株価が3万8100円台に」の大見出しが踊っていた。GDPは昨年の話、株高は現在のニュースだから矛盾はないと説明できるかもしれない。だが昨年も株価は上昇していた。株高の原因は企業の業績が好調だったため。業績の好調は、主として円安と値上げが原因だった。

一方、円安と値上げで物価が高騰。これで家計は節約志向に傾き、消費支出が伸び悩んだ。10-12月期のGDP成長率をマイナスに落とし込んだ最大の原因である。少なくとも日銀のマイナス金利政策は過度の円安を招き、輸出企業の利益を大幅に増大させた。しかし円安は物価高を加速し、家計には大きな負担を背負わせた。

また政府は物価高に対して、各種の補助金を連発した。しかし結果的に公共支出はマイナスとなって、GDPの縮小要因となっている。財政政策も金融政策も企業には恩恵を及ぼしたが、多くの家計には負担をもたらした。そして1人当たりGDPは、どんどん順位を下げている。いま政府は自らが作ったその欠陥を、企業による大幅賃上げで修復しようとしているわけだ。

今後の成長見通しは、どうだろう。専門家の推測をまとめてみると、1-3月期は能登半島地震やダイハツの不正検査問題などがあってマイナス成長が続く公算。4-6月期には大幅賃上げによって、プラス成長に戻りそうだという。だが問題は大幅な賃上げが中小・零細企業にまで及ぶかどうか。その一方で物価高が収まらなければ、消費は伸びないだろう。それなのに日銀は、輸入物価を上昇させるマイナス金利政策を止められない。不思議である。    
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GDP速報が提起した 問題点 (上)

2024-02-22 07:52:14 | 景気
◇ 貧しくなった日本人の生活 = 内閣府は先週、昨年10-12月期と23年のGDP速報を発表した。それによると、昨年10-12月期のGDP実質成長率は年率換算でマイナス0.4%。民間の事前予測はプラスだったが、個人消費と公共支出の落ち込みが大きくマイナス成長となった。これでマイナス成長は2四半期連続。アメリカなら「景気後退に陥った」と判定される。ところが企業の業績は絶好調、株価は史上最高値に最接近。いったい、なぜだろう。

GDPを構成する項目をみると、個人消費は年率換算で1.0%の減少。企業の設備投資は0.3%の減少、住宅投資は4.0%の減少、政府の公共支出は2.8%の減少だった。輸出は11.0%も伸びたが、内需の縮小を埋め切れなかった。個人消費の減少は、コロナ後の消費回復が一巡したうえに、物価高の影響で消費者が節約志向に傾いたためだと思われる。

物価高の影響で、23年の名目GDPは591兆4820億円。前年比では5.7%も増加した。ところが、これをドル換算すると4兆2106億ドルに。ドイツのGDPを2500億ドルほど下回った。新聞やテレビは「ドイツに抜かれ、世界4位に後退」と大きく報道している。しかし、これは円の対ドル相場が異常に安くなっていることが原因だ。だから円相場が少し上がれば、すぐに3位に戻る。なにも仰々しく騒ぐことはない。

それよりも重要なのは、1人当たりGDPが減少し続けていること。00年にはG7(主要7か国)でトップだったが、22年には最下位。それどころかOECD(経済協力開発機構)38か国中、なんと21位にまで落ち込んだ。円安の影響だけでは、とても説明できない。1人当たりGDPは、その国の国民の平均的な生活水準を表わすと言ってもいい。だから重大なのである。GDP速報が提起した問題は、まだある。

                          (続きは明日)       

        ≪22日の日経平均 = 上げ +836.52円≫

        【今週の日経平均予想 = 2勝2敗】
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