経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

外国人は 働きに来てくれるのか? (下)

2024-06-21 07:32:26 | 人手不足
◇ 韓国や台湾との奪い合いに勝てるか = 厚生労働省の集計によると、23年10月末時点で日本で働く外国人は204万8675人。前年より22万人増えた。出身地をみると、ベトナムが全体の25%を占めて最多。続いて中国、フィリピン、ネパールの順となっている。また働いている分野は製造業が55万人で最多、続いてサービス業、卸・小売業の順となっている。200万人を超えたのだから、ずいぶん多くなったという感じは否定できない。

だが現実問題としてみると、この程度の外国人ではとても足りない。内閣府によると、日本の生産年齢人口(15-64歳)は1995年の8700万人が過去最大だった。それが65年には4500万人にまで減少するという。もちろんIT・ロボット化などによる省力化も進むだろうが、その差を埋めることは容易ではない。計算上から言えば、外国人を1000万人単位で誘致しなければならないだろう。

ところが韓国や台湾、あるいはオーストラリアやシンガポールも、人手不足で苦しんでいる。このため、これらの国・地域は東南アジアの若手労働力を招聘するための対策を講じ始めた。要するに、東南アジアの若手を奪い合う競争が始まったのである。この競争に勝てなければ、日本に来て働いてはくれない。果たして勝ち目はあるのだろうか。

たとえば1人当たりGDPを比べると、日本と韓国、台湾はほぼ一線。また外国人労働者の平均時給をみても、韓国は東京・大阪の最低賃金並み。東南アジアの若者からみれば、甲乙を付けがたい。そんななかで円安は、仕送りの段階で金額が目減りしてしまうから
大きなマイナス要因となっている。あとは賃上げと労働環境の改善などで、日本へ行きたい若者を増やすしかない。

        ≪20日の日経平均 = 上げ +62.26円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

外国人は 働きに来てくれるのか? (上)

2024-06-20 07:22:48 | 人手不足
◇ 受け入れ制度は改善したけれど = 少子高齢化の急速な進行で、日本は恒常的な人手不足の状態に陥る。だから外国人労働力に頼らざるをえない。そこで政府は外国人労働者の受け入れ制度を、大幅に改善した。その目玉は「育成就労制度」の新設。技能を持たない未熟練の外国人でも受け入れて育成し、技能を積めば「特定技能」に移行して最終的には永住できる道も開いた。関連法案が14日の国会で成立、27年までに運用を開始する。

「特定技能」制度についても、内容を拡充した。この制度は、一定の技能を持つ外国人を受け入れる在留資格だ。いま、この資格で働いている外国人は約20万人。これを28年度までに82万人に増大、対象とする分野も12から16に拡大した。未熟練の若い外国人を「育成就労」で受け入れ、3年間の勉強で一定の技能を身に着ける。そこからは「特定技能」で、さらなる定着を目指すコースも提供するわけだ。

日本で働く外国人は08年には50万人足らずだったが、23年には200万人を突破した。その中心となったのは「技能実習制度」による実習生で、ことし3月末には41万2000人を数えている。ただし、この制度は全く評判が悪かった。「日本で習得した技能を母国に持ち帰ること」を目標にしながら、実は単純労働でこき使う。極悪の労働環境から逃れようとしても、転職ができない。だから多くの実習生が逃げ出して、行方不明となった。

この「技能実習制度」を廃止するだけでも、大きな改善と言えるだろう。ただ、これで東南アジアの若者が日本を目指して働きに来るようになるとは限らない。韓国や台湾、さらにオーストラリアやシンガポールなども人手不足で、若い労働力の流入に力を入れ始めたからである。たとえば最低賃金をみても、台湾や韓国は日本の水準をやや上回ってきた。さらに円安が、日本で働くことを不利にしている。見通しは必ずしも明るいとは言えない。

                     (続きは明日)

        ≪19日の日経平均 = 上げ +88.65円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

人手不足は これから : 労働力調査

2024-05-05 07:42:35 | 人手不足
◇ 23年度は就業者が28万人増加した = 総務省が発表した23年度の労働力調査をみて、ちょっと驚いた。世の中は人手不足で騒がしいが、この調査をみる限り人手がひどく不足するような原因は見当たらない。たとえば完全失業率は2.6%、失業者数は平均178万人で、ともに前年度と変わりなかった。また就業者数は6756万人で、前年度より28万人増えている。増え方は大幅とは言えないが、それでも働く人はそこそこ増えている。それなのに、どうして人手不足になるのだろう。

もちろん経済成長率が3-5%に達する好景気が続けば、この程度の就業者数の増加では足りないに違いない。しかし現実はゼロ成長に近い状態がずっと続いている。働く日数や時間が短い非正規労働者が増えたために、人手が足りなくなったのか。しかし正規労働者は3622万人で、前年度比25万人の増加。非正規労働者は2130万人で、19万人の増加だった。ともに人手不足の大きな理由にはならない。

少子高齢化ガ進み、生産に携われる年齢の人口が減る。だから人手が不足するという。たしかに生産年齢人口は年々、減り続けている。しかし23年度は、働く人が増えている。その理由は、これまで働きに出なかった女性や高齢者が、新しく職に就いたからだ。23年度の労働力調査でみると、就業率は61.4%で、前年度を0.4ポイント上回った。

この4月からトラック・バス・タクシー運転手と建設業労働者、医師に対する残業規制が実施された。またインバウンドの回復で、宿泊・飲食業の人手不足は激しくなる。さらに専門家によると、就業率は天井に近付いているという。したがって本当に大変な人手不足は、これからやってくる。24年度は就業者数が何人増えるのだろうか。

人手不足が深刻に : 日銀短観

2024-04-02 07:33:43 | 人手不足
◇ 業況判断の低下は一時的だが = 日銀は1日、3月の企業短期経済観測調査を発表した。それによると、最も注目される大企業・製造業の業況判断指数はプラス11で、前回調査よりも2ポイント低下した。低下は4四半期ぶり。中小企業・製造業の指数もマイナス1で、前回より3ポイント悪化している。最大の原因はダイハツ工業の認証不正事件で、自動車の生産台数が減少したこと。自動車産業だけではなく、鉄鋼などの周辺産業にも悪影響を及ぼした。

市場は驚いて、日経平均は500円以上も下げた。だがダイハツ事件は、一過性のもの。心配する必要は全くない。しかも非製造業は絶好調。大企業・非製造業の業況判断指数はプラス34で、前回に比べて2ポイントの上昇。インバウンドの回復もあって、33年ぶりの高さとなった。また中小企業・非製造業も指数はプラス13。全規模・全産業でみても、指数はプラス12と高い水準を維持している。

そうしたなかで、やっぱり気になるのは人手不足。雇用が「過剰」と答えた割合から「不足」と答えた割合を差し引いた判断指数は、全規模・製造業でマイナス22。全規模・非製造業ではマイナス46にものぼっている。しかも先行きの見通しは、さらに悪化する。3か月後の予想は、製造業がマイナス27。非製造業はマイナス48になる。

当期利益の予想も、やや気になる。全規模・製造業の23年度は11.2%の増益、非製造業は8.7%の増益を見込んでいる。しかし24年度の見通しは、製造業が3.5%の減益、非製造業は2.9%の減益となっている。これは金利の上昇など不確かな面があるために、慎重になっているのだろうか。それとも人手不足が経営を圧迫すると考えているのだろうか。

        ≪2日の日経平均 = 上げ +35.82円≫

        ≪3日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

仮面を脱ぐ 外国人の就労制度 (下)

2024-02-16 07:25:40 | 人手不足
◇ 使用者側の意識改革が最も重要 = 日本の人手不足は、今後もずっと続く。総務省の推計によると、30年の労働力人口は5880万人に。20年に比べると、524万人も減ってしまう。その不足を補う方法は女性や高齢者の活用、ロボットなど機械化の推進、それに外国人の招聘しかない。このうち女性と高齢者の活用は、しだいに限界に近付く。機械化には時間がかかる。だから本命は、やはり外国人の労働力だ。

厚生労働省の集計によると、昨年10月末時点で外国人労働者の数は204万8675人。前年比で12.4%も増加した。国別にみると、ベトナム人が51万8000人でトップ。次いで中国人、フィリピン人の順となっている。また働いている業種をみると、製造業が55万2000人。次いでサービス業、卸・小売り業の順。働いている事業所は31万8700か所にのぼるが、その6割以上が従業員30人未満の小規模事業所だった。

人手不足に悩むのは、日本だけではない。オーストラリアや韓国も深刻で、両国とも外国人労働者の受け入れ強化策を打ち出している。また中国も長期的には労働力が不足し、海外で働く人は減るだろうと予測されている。したがって若い労働力は取り合いに。日本は賃金の伸び悩みと円安で、魅力が薄れている。そうしたなかで、新しい「育成就労制度」がスタートすることになった。

この新しい制度が功を奏して、若い外国人がどんどん日本にやって来るかどうか。それは予測できない。若い人たちが「技能の習得が目標ではなくなったこと」に、どんな反応をみせるのか。新しい制度を作っても、実態が変わらなければ意味がない。結局は若い外国人を雇う日本人の使用者が、彼らに親しみを持ち、家族の一員のように接することができるかどうか。それによって、日本が‟選ばれる国”になるかどうかが決まってくるだろう。

        ≪15日の日経平均 = 上げ +454.62円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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