経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

世間を惑わす 日銀の金融政策

2024-06-18 06:48:37 | 日銀
◇ なぜ、きちんと説明しないのか = 日銀は先週14日の金融政策決定会合で「長期国債の買入れを減額する方針」を決めた。ただ具体的な内容については「7月末の次期決定会合で決める」という。日銀は13年の異次元緩和から国債の購入を大幅に増やしてきたが、これで事実上の量的引き締めに転換する。植田総裁は記者会見で「減額は相応の規模になる」と述べた。だが、この日銀の決定については判らないことが多すぎる。

まず、なんで具体策を7月末に延ばすのだろう。日銀は「市場関係者の意見を聞いたり、今後1-2年程度の計画を作るため」と説明している。だが金融政策の内容をあらかじめ民間に聞くのは、きわめて異例。また流動的な金融環境のなかで、1-2年後の計画など作成できるはずもない。これまで月6兆円をメドに購入してきたが、それを「3-6兆円に変更する」と言えばいいだけだ。

日銀はこれまで「需給関係からみた物価は、まだ2%上昇に達していない」と言い続けてきた。つまり景気は悪いことになる。それなのに金融を引き締め方向に転換するのはなぜか。その説明がない。また日銀はこれまで「円安は日本経済にとってプラス。為替相場を動かすための政策は実施しない」と主張してきた。その姿勢を変えるのだろうか。それについても説明がない。

アメリカのFRBは「利下げをしたいが、インフレ圧力がまだ強すぎる。もう少し様子をみる」と、その姿勢はきわめて鮮明だ。またECB(ヨーロッパ中央銀行)は「利下げしたが、物価が上がれば利上げする」と柔軟な構え。これに対して日銀は「何を目標に引き締めに転換するのか」が、全く判らない。植田さん、せっかく学者の貴方が総裁になったのだから、もっとやさしく教えてくれませんか。

        ≪18日の日経平均 = 上げ +379.67円≫

        ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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呑み込みにくい 日銀の理屈

2024-03-19 07:35:24 | 日銀
◇ 「インフレなら利上げ」ではダメなのか? = 日銀はきょう19日に開く政策決定会合で、マイナス金利の解除を決定する。同時にイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を停止、またETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)の買い入れも終了する。これまで17年も続けてきた金融の超緩和政策を、引き締めの方向へ転換するわけだ。だが、これで日銀が何を目指しているのか。説明がどうもすっきりとは呑み込めない。

マイナス金利の解除を決定した理由として、日銀は今春闘での大幅な賃上げを挙げている。植田総裁も記者会見で、この点を強調する見込みだ。企業は賃上げの原資を確保するため、製品やサービス料金の値上げに踏み切る。すると物価が上がって、日銀が目標として掲げる2%の物価上昇が達成される。だから金融引き締めは、もう不要になったという理屈である。

だが物価は、いろいろな原因の組み合わせで変動する。たとえば戦争によるエネルギーや資源の高騰、あるいは異常気象による食料不足などなど。こうした要因が加われば、物価は2%を大きく超えて上昇するだろう。ところが日銀は「2%程度の物価上昇が長期にわたって続く」と考えているようだ。そんな可能性はゼロに近いだろう。

ウクライナ戦争の勃発によって、エネルギーや資源・食料の国際価格が急騰。日本も物価の高騰に見舞われた。だが日銀は実体経済の需要が不足している状態を重視し、緩和政策を継続した。つまり不況の場合は、インフレになっても対応しない前例を作ったわけである。通貨価値の維持、物価の安定を最大の使命とする中央銀行が、これでいいのか。もっと解りやすく「インフレだから利上げする」と言えないのだろうか。

        ≪19日の日経平均 = 上げ +263.16円≫

        
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日銀 17年ぶりの利上げへ

2024-03-12 07:34:00 | 日銀
◇ 各種の金利はすでに上昇してきた = 日銀は来週18-19日に開く政策決定会合で、マイナス金利政策を解除する可能性が大きい。植田総裁が2月29日に国会で「現状はデフレではなく、インフレの状態にある」と発言。内田副総裁も講演で「仮にマイナス金利を解除しても、緩和的な政策を維持して行くことになるだろう」と述べた。こうした日銀幹部の発言から、市場では解除の予想が急速に拡大した。実現すれば、なんと17年ぶりの金利引き上げとなる。

マイナス金利政策というのは、金融機関が余った資金を日銀に預ける当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を付ける制度。金融機関にとっては預金が目減りしてしまうので、出来るだけ貸し出しに回そうと努力する。16年1月に、景気拡大策として日銀が導入した。しかし、あくまで異常な政策。景気が回復し、インフレ状態になれば必要がなくなる。

日銀のこの政策修正を見越して、市中ではすでに金利が上がり始めている。現在、大銀行の定期預金は金利が0.002%。100万円を1年間預けておいても、利子は20円しか付かない。こうしたなかで、いくつかの銀行が1年もの定期預金に0.2-0.4%の金利を付け始めた。100万円の預金で、年2000-4000円の利子が付く。また住宅ローンについても、固定金利を引き上げた金融機関が多い。もちろん一般の貸出金利も上昇傾向にある。

ただし‟17年ぶりの利上げ”と言っても、実態はマイナス0.1%の金利をゼロ%に引き上げるだけ。理論的にはプラス0.5%に引き上げることも可能だが、日銀にそんな度胸はない。利上げで景気が悪化したら大変だと考えるからである。だから今後も政策金利がプラスになるまでには、かなりの時間がかかりそうだ。その間、アメリカの金利が下がりそうになると、11日のようにまた円高が進んで株価が大幅に下がることが繰り返されるかもしれない。

        ≪12日の日経平均 = 下げ -22.98円≫ 

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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理解できない 日銀総裁の発言

2024-03-02 07:57:31 | 日銀
◇ 「インフレ」とは何なのか? = 植田日銀総裁は先週22日、衆院予算委員会で「消費者物価は昨年までと同じように右上がりの動きが続くと予想している」「いまはデフレではなく、インフレの状態にあると考えている」と発言した。野党議員から「現在はデフレなのか、インフレなのか」と質問され、答えたものだ。市場はこの発言を受けて「日銀は3月にもマイナス金利の解除に踏み切る」と了解している。だが日銀総裁のこの発言は、解ったようで解らない。

まず「インフレ」とは何なのだろう。経済学の教科書によると、インフレとは「物価高が長期にわたって続く現象」とある。ウクライナ戦争が始まってからの2年間、日本ではエネルギーから食料まで数多くの物価が高騰した。だから多くの庶民は、ずっとインフレだったと感じている。それをいまさら「インフレの状態にある」とは、認識が遅すぎるのではないか。国民と日銀との感覚的なギャップである。

インフレ、つまり物価の高騰は「通貨価値の下落」を意味する。中央銀行の最大の役割は、通貨価値の維持ではなかったか。それなら「インフレ状態にある」などと、のんびり構えていていいのだろうか。インフレならマイナス金利の解除どころか、政策金利の引き上げまで考えるべきではないのか。どうも植田総裁が使う「インフレ」の意味は、違うように思われる。

日本は過去30年にわたって、デフレ経済に陥った。供給に対して需要が不足し、物価が上がらない。その反対に需要が供給を上回って、物価が上がる状態。この状態を、植田総裁は「インフレ」と呼んでいるようだ。だが、そのとき物価はいくら上がるのだろう。植田総裁はご自分が使う「インフレ」の意味をもっと説明しなければ、誤解を生じる。とにかく総裁は経済学者なのだから、定義するのはお得意のはずでしょう。

        ≪1日の日経平均 = 上げ +744.63円≫

        【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】     
  
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チグハグだった 日銀の説明

2024-02-14 07:28:55 | 日銀
◇ なぜ利上げの可能性まで否定したのか = 日銀副総裁の異常な発言が、市場を驚かせた。内田副総裁は先週8日、奈良県での講演で「 マイナス金利政策を解除したあと、どんどん利上げしてゆくような道筋は考えにくい」と言明。市場はこの発言を好感、その日の日経平均は700円以上も上昇した。しかし副総裁がこんな重要な発表をするのは、きわめて珍しい。しかも翌9日には、植田総裁が国会で全く同じ趣旨の発言をしている。なんだか、おかしい。

市場では「日銀は3月か4月にマイナス金利政策を解除する。その後も短期の政策金利を0.25%まで引き上げる」という見方が大勢を占めていた。もし4月までに解除しないと、アメリカが利下げを始めるかもしれない。そうなると、日本が逆行して利上げはしにくくなるからだ。内田副総裁の発言も、この点は是認した形となっている。

ところが副総裁の発言は、その後の利上げについては否定的だった。副総裁はマイナス金利からの離脱に伴い「短期の政策金利は0.1%に上昇するが、利上げはそこで終わり」と述べている。市場が「夏ごろまでに0.25%、さらに年末に向けて金利は上がる」と読んでいるのとは大違いだ。しかし、なぜ日銀は慌てた格好で利上げの可能性を、否定しなければならなかったのだろう。その理由が、どうもよく判らない。永田町あたりから、何か聞こえてきたのだろうか。

市場の反応も、よく判らない。マイナス金利の解除は、短期金利の上昇を意味する。円高になるかもしれない。金融株などを除けば、株式全般にとってはマイナス材料だろう。だが内田副総裁の発言はこの点を飛び越して、その後の緩和政策持続を強調した。だから株式市場は大歓迎したのだが、早とちりのようにも思われる。チグハグ感の強い日銀と市場の対話だった。

        ≪13日の日経平均 = 上げ +1066.55円≫

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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