経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

出現! 新たなインフレ要因

2024-04-09 07:30:18 | 原油
◇ 日本への影響も大きい原油価格の上昇 = 原油の国際価格が、また上昇している。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物価格は先週87ドル台に上昇、北海ブレンドも90ドル台に乗せた。上昇のきっかけは、イスラエルがシリア首都ダマスカスのイラン大使館周辺をミサイル攻撃したこと。中東情勢の緊迫感が強まり、原油供給への不安が高まった。この原油価格の上昇で、アメリカではインフレ再燃論が拡大。金利が上昇、株価は急落、ドル高・円安が進行した。

アメリカでは4月に入って、景気の堅調を示す指標が次々と発表されている。ISMの景況判断指数は、製造業と非製造業がともに50を上回り、3月の雇用者増加数も30万3000人と予想を大きく超えた。このためパウエルFRB議長は「利下げは急がない」と再三にわたって発言。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「利下げは年内にないかも」とまで言い切った。これでインフレの残り火は意外に強いと再認識したところへ、原油の高騰が文字通り油をかける結果となった。

つい最近まで、ニューヨーク市場では「6月の利下げ」説が大勢を占めていた。ところが原油高で、この説は急速に勢いを失っている。株式市場では買いの大きな根拠がなくなり、為替市場ではドル安・円高の可能性が薄まった。日本にとっても、その影響はきわめて大きい。原油の国際価格が上昇したところへ円安が重なる。輸入物価の高騰は避けられない。

政府は電気・ガス料金に対する補助金を、5月分で終了する方針を固めている。だが折悪しく、原油価格が上昇し始めた。補助金をまた延長するのだろうか。財源はどうするのだろう。仮に延長しなければ、物価の上昇が続く。すると大幅な賃上げが実現したとしても、物価の上昇率がそれ以上になる可能性が大きい。経済の好循環は望めなくなる。

        ≪9日の日経平均 = 上げ +426.09円≫

        ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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原油が80ドル台に上昇 (下)

2024-03-22 07:22:33 | 原油
◇ 90ドル台が続けば影響が大きい = 北半球はこれから行楽シーズン入り、ガソリンの消費が増える。このため専門家の間では「原油の国際価格は90ドル台に乗せるかもしれない」という見方が強い。仮に90ドル台になると、直近の安値60ドル台に比べて5割高。その日本経済に与える影響は、決して無視できない。電気やガス代、それにガソリン価格が急騰。物価の上昇は加速する。

日銀はマイナス金利政策を解除、17年ぶりの利上げに踏み切った。それでも当面は緩和政策を維持すると表明したため、円安・ドル高が進行。株価も上昇基調を続けている。だが物価が高騰すれば、そんなことを言ってはいられない。日銀は意図に反して、金利を引き上げざるをえなくなる。外国為替市場では円高・ドル安、債券市場では金利が上昇する。株価にとってはマイナス材料だ。

財務省がきのう発表した2月の貿易統計をみると、輸入額が輸出額を上回ったため、貿易収支は3800億円の赤字だった。これは貿易が、景気に対してはマイナス要因になっていることを示している。輸入額が多かった理由の一つは、相変わらず燃料の輸入額が大きいこと。鉱物性燃料の輸入額は2兆2000億円に達している。輸入総額の約4分の1だ。

この輸入代金は最終的に、値上げを受け入れるという形で個人や企業が負担する。それだけ購買力が産油国に移転してしまうわけだ。景気にとっては、大きなマイナス要因になる。なかで原油・粗油の輸入額は約9000億円。もし価格が5割近くも上昇すれば、金額はさらに増大する。このように原油の国際価格が高値で推移すれば、日本経済はまた重たい荷物を背負うことになる。

        ≪21日の日経平均 = 上げ +812.06円≫

        ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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原油が80ドル台に上昇 (上)

2024-03-21 07:26:58 | 原油
◇ OPECプラスの自己減産延長で = 原油の国際価格が上昇してきた。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)の先物相場は、3月に入ってから1バレル=80ドル台を維持している。昨年秋からはずっと60-70ドル台で推移していたが、ここへきて値を上げた。直接のきっかけは、OPEC(石油輸出国機構)プラスと呼ばれる産油国連合が自主減産を6月末まで延長したこと。この措置で、世界の原油見通しが供給過剰から不足へと変わったためである。

サウジアラビアを盟主とするOPECとロシアなどの産油国は、原油価格の値下がりを防ぐため協調減産を続けてきた。現在は3月末までを期限に、合計で日量450万バレルを減産中。この減産計画を6月末まで延長することになった。IEA(国際エネルギー機関)の試算によると、これによって世界の原油見通しは日量162万バレルの余剰から48万バレルの不足へと変化する。

ただOPECプラスの結束力は、明らかに低下した。カタール、エクアドルに続いて、アンゴラも減産に反対して脱退したからである。このためOPECプラスは従来の協調減産ではなく、各国の自主減産という形で減産目標を達成することになった。さらに最近はアメリカとカナダが、日量100万バレルと50万バレルを増産している。紅海を通じる原油積み出しが制限されているにもかかわらず、原油の国際価格が大きく上昇しないのはそのためだ。

原油価格はアメリカや中国の景気動向、世界の気象状況などにも大きな影響を受ける。したがって将来の価格を予測することは、きわめて難しい。しかし専門家は現状から判断する限り、90ドル以上に跳ね上がる可能性は小さいとみている。ただ原油価格の高騰は、天然ガスや石炭の価格にも影響を及ぼす。輸入燃料に大きく依存する日本にとっては、1バレル=10ドルの値上がりでも影響はきわめて大きい。

                    (続きは明日)
       
         ≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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原油を巡って 丁々発止 : ロシア vs 西側

2022-12-09 08:32:45 | 原油
◇ やっぱり価格は高くなる? =ロシア産原油の輸出入取り引きを巡って、ロシアと西側諸国がツバ競り合いを演じている。OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどの産油国連合は4日の閣僚級会合で「現行の日量200万バレル減産を継続する」と決定した。増産をすれば国際価格が下がってしまうし、これ以上の減産で価格が上がれば西側諸国の需要が減るかもしれない。このため現行の政策を継続する‟様子見”に出たのだと考えられている。

あくる5日、こんどはEUが「パイプライン経由以外のロシア産原油の輸入を禁止する」措置に出た。同時にEUとG7(日本を含む主要7か国)とオーストラリアは「ロシア産原油の輸入価格を最高60ドルとすること」で合意した。具体的には60ドルを超える原油を運ぶタンカーには保険をかけないよう、西側の保険会社に通達している。

いまロシアは日量490万バレルの原油を輸出している。ただ西側諸国への輸出は大幅に減っており、その分だけインド・中国・トルコへの輸出が増えている。西側の保険会社が手を引くと、こうした国へのタンカーも60ドル以上の原油は運べなくなる。ところがロシアは大胆な対抗策を打ち出しそうだ。まずタンカーを世界中から買い集め、自前の輸送手段を確保。さらに政府が支援するロシアの保険会社に保険をかけさせるという。そのうえロシアは「60ドル規制に合意した国への輸出を止めるかもしれない」と脅迫した。

この勝負、どちらに軍配が上がるのだろうか。まだ始まったばかりだから、なんとも言えない。しかしEUはいぜんとしてロシア産の天然ガスを買い続けている。また西側諸国の一部は、インドで加工されたロシア産の石油製品を購入している。一方、産油国側は価格の下落に対しては‟減産”という切り札を持っている。もちろん収入が減るので簡単には減産できないが、最後の手段となることは間違いない。原油の国際価格は、下がるより上がる可能性の方が大きいのではないか。

        ≪8日の日経平均 = 下げ -111.97円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ≫ 
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妙手か悪手か? 石油備蓄の放出

2021-11-26 08:11:02 | 原油
◇ 消費国vs産油国の抗争に発展も = バイデン米大統領は23日、原油価格の高騰を抑制するため「主要消費国と協調し、石油の国家備蓄を放出する」と発表した。アメリカは数か月間にわたり、5000万バレルの石油を市場で売却する。また日本・中国・韓国・インド・イギリスの5か国も、同調することになった。消費国が石油の価格を抑える目的で、備蓄を放出するのは初めて。また消費国が協調して、国家備蓄を放出するのも初めて。特に関係が悪化しているアメリカと中国が同調したことは、きわめて注目される。

岸田首相は24日「アメリカの要請を受けて、日本も備蓄石油を放出する」と発表した。日本の国家備蓄は石油備蓄法で90日分以上と決められているが、現在は145日分の備蓄を保有している。ここから年内に420万バレルを放出する方針。またイギリスは150万バレル、インドは500万バレルを放出する模様。中国については、まだ情報がない。

原油の国際価格は、世界的な需要増加と産油国の増産拒否でウナギのぼり。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物相場は10月に1バレル=85ドル台に高騰した。国家備蓄放出の報道を受けて一時は75ドル台まで下がったが、すぐ78ドル台に反発している。OPEC(石油輸出国機構)やロシアなどの産油国が減産して対抗するのではないか、という思惑が働いたためである。

仮に産油国側が減産に踏み切っても、消費国側が備蓄を放出し続ければ、価格は下がるだろう。だが消費国側に、それだけの覚悟があるかどうか。いまのところは不明である。その覚悟がなければ、今回の協調放出は愚策となってしまう。その覚悟があれば、消費国と産油国の厳しい駆け引き、抗争が続くことになるかもしれない。

        ≪25日の日経平均 = 上げ +196.62円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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