経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

大ヒット! 半導体経営者会合 (下)

2023-05-25 08:08:20 | 半導体
◇ 台湾、韓国から日本へ疎開する = いま世界の半導体メーカーは、大きな問題に直面している。半導体の供給を確実なものとするため、各国が競って自国での生産を強化しようとしていることへの対応。たとえばアメリカ政府は5年間で7兆円、EUは30年までに6兆3000億円の予算を使って半導体メーカーを囲い込む。これと関連して、もう1つの問題は台湾と韓国に集中し過ぎた生産体制の見直しだ。

半導体の製造能力を国別にみると、韓国と台湾だけで世界の44%を占めている。万が一にも韓国が、北朝鮮に攻め込まれたら。仮に台湾が香港のようになったとしたら。世界の半導体供給網は、ずたずたに裂かれてしまう。それなら韓国と台湾のメーカーは、機能の一部を日本に疎開しておいた方が賢明だ。アメリカやEUも、その動きに参画した方がいい。実は台湾のTSMCが熊本に工場を建てているのも、根底にはこうした考えがあったと言える。

首相官邸で行われた半導体メーカー経営者会合は、こうした世界の潮流を捉えた試みだった。この点では、大成功だったと評価できるだろう。だが、このことはまた必ずしも日本の環境が良好なために疎開してくるわけではないことも意味している。たとえば労働力が集められるのか。電力コストが高すぎないのか。人手不足でトラック輸送などに支障はないのかなど。

政府はこうしたインフラの整備に、もっと努力しなければならない。それが出来ないと、経営者会合の結果もアダ花に終わってしまう危険がある。激化する競争のなかで、日本が半導体を主力産業として維持して行けるかどうか。これが恐らくは、最後のチャンスとなるだろう。政府に、その覚悟があるかどうかを問いたい。

        ≪24日の日経平均 = 下げ -275.09円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大ヒット! 半導体経営者会合 (上)

2023-05-24 08:06:21 | 半導体
◇ 世界7社のトップが異例の集合 = G7(主要7か国)広島サミットが閉幕した。インドやブラジルなどの新興国首脳も参集、ウクライナのゼレンスキー大統領も登場して迫力満点。首脳宣言では「武力や強制力での一方的な試みに反対」や「核兵器のない世界を実現」がうたわれ、大成功だったと言っていい。ただ現実的には、これが戦争の終結や核兵器の不使用にどの程度まで有効なのか。残念ながら、大きな疑問符がついてしまう。

サミットが開かれる前日の18日、東京・永田町の官邸では、岸田首相がきわめて重大な会合を開いていた。出席したのは、世界の半導体関連7社の経営トップ。アメリカのIBM、アプライド・マテリアルズ、マイクロン・テクノロジー、インテル。台湾のTSMC (台湾積体電路製造)、韓国のサムスン電子、それにベルギーの研究開発機関imecの最高責任者たち。こんな人たちが一堂に会するのは、異例中の異例と言えるだろう。

会合では、岸田首相が「政府は対日直接投資の拡大、半導体産業への支援」方針を説明。7人の経営者たちからは、日本に対して積極的に取り組む姿勢が表明された。具体的にはマイクロンが5000億円の投資、サムスンは神奈川県に研究開発拠点。また熊本県で新工場を建設中のTSMCはさらに新たな工場、imecはラピダスと連携。IBMとインテルは日本企業との連携強化を約束したと伝えられる。

互いに競争関係にもある7社の経営トップが、たまたま東京を訪れていたなどということはありえない。サミットに出席した大統領や首相に随行してきたのかもしれないが、確証はない。いずれにしても、これら7社が抱える問題を察知し、官邸での会合をお膳立てした優れものが、政府部内にいたのだろう。その結果は大成功だった。しかし、この会合が出発点となって、将来に大きな実を結ぶかどうか。やや心許ない気もする。

                   (続きは明日)

        ≪23日の日経平均 = 下げ ー129.05円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

もっと貪欲に! 次世代技術の開発 (上)

2022-11-16 07:57:34 | 半導体
◇ 半導体は新会社ラピダスで最後の挑戦へ = 次世代半導体を国内で量産する体制作りが始まった。トヨタ、NTT、ソニーなど日本企業8社が新会社ラピダスを設立、27年を目標に回路幅2ナノ・メートル(ナノは10億分の1)の論理型半導体を量産する方針。政府も700億円を支援する。日米両国は次世代半導体の開発で協力することになっており、IBMが最新の技術を提供することになる模様だ。

半導体は回路の幅が狭いほど、性能が向上する。台湾のTSMCや韓国のサムスン電子は、すでに3ナノの半導体を生産しており、25年には2ナノの生産を始めるという。これに対して、いま日本で量産している半導体の回路幅は40ナノ。1970年代には世界の5割を超すシェアを誇っていた日本だが、いまや周回遅れどころか完全に取り残されてしまっている。

日本が世界の半導体競争に負けた理由はいろいろ。10年代には、経済産業省が音頭を取ってメーカーの集約を試みたが、ことごとく失敗した。協力体制が整わなかったり、投資資金が不足したためである。特にアメリカが日本の半導体を目の敵にし、不平等な協定を結ばせたことも大きかった。

いまや、その状況が一変した。台湾や朝鮮半島が危険にさらされた場合、半導体の生産や供給が途絶えるかもしれない。そこでアメリカも、日本と協力して新たな拠点を構築する必要に迫られた。こうして新会社ラピダスには、IBMも技術を提供することになった。しかし10年遅れの体制を挽回することは、必ずしも容易ではない。こんど失敗すれば、もう立ち直れないだろう。最後のチャンスに、政府はもっと貪欲になってもらいたい。3000億円ぐらい支援したっていい。

                      (続きは明日)

        ≪15日の日経平均 = 上げ +26.70円≫

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“半導体”の 不安定な回復

2019-07-31 08:14:51 | 半導体
◇ ニューヨーク市場の明るい話題 = FRBによる利下げは織り込んでしまい、次なる手がかりを探していた先週のニューヨーク株式市場。半導体市況の回復? という思わぬ材料が出現して、歓声をあげた。4-6月期の決算発表が進むなかで、たとえばテキサス・インスツルメントの売り上げは前年比9%の減少。事前の予測より大きく改善した。これまでに決算を発表したハイテク企業18社のうち、13社の売り上げが事前の予測を上回ったという。

半導体関連企業の業績は、3-4年を周期として大きく変動する。価格が上昇すると、世界中のメーカーが一斉に増産して在庫過剰に。市況が下がると、減産で業績が悪化する。このサイクルでみると、昨年からは下り坂。19年後半には底入れすると予測されていた。したがって、そろそろ業況が改善してもおかしくはない。

ところが、ことしは米中貿易戦争という不透明な要因が加わった。このため、たとえばWSTS(世界半導体市場統計)が6月に発表した予測では、19年の世界市場規模は4120億ドルで前年比12%の減少。SFMI(国際半導体製造装置材料協会)による製造装置の世界販売額は527億ドルで18%の減少となっていた。

それが一転して明るくなってきたのは、なぜだろう。米中間の貿易交渉が再開して、株価が上がるのなら理解できる。しかし交渉再開で、関連企業の売り上げが増えるとは考えられない。とするとサイクルの力が働いて、在庫が減ってきたのだろうか。その辺を見極めるのには、もう少し時間がかかりそうだ。東京市場でも、半導体関連銘柄は上昇し始めているのだが。

       ≪30日の日経平均 = 上げ +92.51円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

はっきり! 半導体の需要急減

2019-03-15 08:19:51 | 半導体
◇ 世界経済のマイナス要因に = 半導体の需要が急速に落ち込んでいる。主要メーカーで構成するWSTS(世界半導体市場統計)によると、18年の世界需要は4779億ドル(52兆円)で前年比16%の増加だった。17年の22%増には及ばなかったが、まだ水準は高い。ところが、ことし1月になると需要は前年比5.7%減に急落した。半導体の需要は大きく波打つ傾向があり、業界では昨年秋ごろから下降局面に入ったという見方が強い。

半導体の需要はスマホ用が4割、データ・センターのサーバー用と自動車・パソコン用が3割ずつを占めている。このうちサーバー用はアップルやグーグルなどの大手が過剰投資、その反動が表れた。またスマホは飽和状態に近づいたうえ、高価格製品の売れ行きが伸び悩み。特に中国市場での売れ行きが落ち込んだ。

米調査会社IDCの集計によると、18年の中国のスマホ販売台数は3億9770万台。前年比では10.5%も減少した。ことしの見通しも明るくはない。半導体は需要が減ると、すぐに価格が下がってしまう。たとえば最近のフラッシュ・メモリー価格は、1年前より4割以上も下落している。このため主要メーカーの業績も悪化した。

そんななかで注目されるのは、中国ファーウェイ社の健闘。中国市場で昨年、アップルが20%も販売台数を減らしたのに対して、ファーウェイは15.5%伸ばしている。アップルが高価格製品を投入したのに、ファーウェイは低価格品で勝負したことも大きな理由の一つ。だが米中貿易戦争が、中国人の“愛国心”をかき立てたことも影響したに違いない。モノがコンピューターの素材だけに、はっきりと割り切れる。

       ≪14日の日経平均 = 下げ -3.22円≫

       ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ≫     
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>