経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

企業の見通しは慎重 : 日銀短観

2024-07-02 07:14:33 | 景気
◇ 異常な円安と人手不足で減益予想 = 日銀は1日、6月の企業短期経済観測調査を発表した。それによると、大企業・製造業の業況判断指数はプラス13で、3月調査より2ポイントの改善。大企業・非製造業はプラス33で、1ポイントの悪化だった。製造業では、自動車がダイハツの不正認証による減産で1ポイントの悪化。非製造業では、小売り業が12ポイント悪化してプラス14となっている。非製造業の悪化は、コロナで不況になった20年6月以来4年ぶりのことである。

この日銀の、いわゆる短観は5月29日から6月28日にかけて9076社を対象に実施された。業況判断指数は「業況が良くなった」と答えた企業の割合から「悪くなった」と答えた企業の割合を差し引いた数字。大企業・非製造業の判断指数が4年ぶりに悪化したことを大きく取り上げた新聞もあったが、これは3月調査の水準が33年ぶりの高さだったことの反動。大騒ぎするほどのことではない。

それよりも注意すべきことは、企業の先行きに対する慎重さ。3か月後の業況について、大企業・製造業はプラス1ポイントだが、大企業・非製造業はマイナス6ポイントとなっている。また24年度の経常利益についての予想では、大企業・製造業が8.8%の減益、大企業・非製造業も8.5%の減益と、きわめて慎重だ。

理由は異常な円安と人手不足。全産業・全規模ベースでみると、企業は24年度に1ドル=144円77銭のレートを想定している。だが現在の相場は160円を超える状況。したがって経営者は今後の円高を予想しており、そうなれば利益がかなり圧迫されるとみているわけだ。また人手不足は、特に非製造業の人件費コストを引き上げる。その圧迫感が、企業経営者の判断を慎重にしているようだ。

        ≪2日の日経平均 = 上げ +443.63円≫

        ≪3日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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またもやマイナス成長? : 1-3月期

2024-05-11 07:21:12 | 景気
◇ 個人消費の減り方に注目 = 内閣府は16日に、ことし1-3月期のGDP速報を発表する。それに先駆けて民間の調査機関が、続々と予測の結果を発表した。読売新聞によると、民間10社が予測した実質成長率は年率換算でマイナス1.0%~マイナス3.3%。全社がマイナスを予測し、その平均値はマイナス1.8%だった。NHKも11社について、ほぼ同様の内容を報道している。民間の事前予測は当たらないこともあるが、全社がマイナスを予測しているので、1-3月期はまたマイナス成長に陥る可能性がきわめて大きい。

23年10-12月期は、プラス0.4%の成長だった。それがマイナスに転落するのは、自動車メーカーによる認証不正が一因。操業停止で生産が減少、販売台数も落ち込んだ。ただ、これは一時的な現象。それよりも個人消費の減退が注目されている。物価高のために個人が節約志向を高めた結果だとみられており、もしそうなら今後もその傾向が継続する可能性が大きい。

仮に1-3月期の成長率が民間予測の平均値マイナス1.8%になるとすると、23年度の実質成長率はゼロ前後になる計算だ。最近、IMF(国際通貨基金)が「25年にはインドのGDPが日本を上回る」と推計して話題となったが、それにしても日本の成長率は低すぎる。岸田首相は物価高を上回る賃上げを実現し、経済を‟好循環”の波に乗せると公言した。しかし1-3月期がマイナス成長に陥るようでは、そんな夢も吹き飛んでしまうだろう。

政府はここ数年、予想をはるかに上回る財政を支出。日銀はゼロ金利を継続、まだ国債やETFの買い入れを続けている。にもかかわらず、GDPの増え方は非常に鈍い。それはやはり、現在の財政・金融政策が間違っているのではないか。政府や日銀の内部に、こんな疑問が湧かないのはなぜなのか。

        ≪10日の日経平均 = 上げ +155.13円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】     
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GDP速報が提起した 問題点 (下)

2024-02-24 07:45:52 | 景気
◇ 企業を向いた財政・金融政策 = 新聞各紙が「「日本のGDPが4位に転落」を大々的に報じた15日、その同じ紙面で「株価が3万8100円台に」の大見出しが踊っていた。GDPは昨年の話、株高は現在のニュースだから矛盾はないと説明できるかもしれない。だが昨年も株価は上昇していた。株高の原因は企業の業績が好調だったため。業績の好調は、主として円安と値上げが原因だった。

一方、円安と値上げで物価が高騰。これで家計は節約志向に傾き、消費支出が伸び悩んだ。10-12月期のGDP成長率をマイナスに落とし込んだ最大の原因である。少なくとも日銀のマイナス金利政策は過度の円安を招き、輸出企業の利益を大幅に増大させた。しかし円安は物価高を加速し、家計には大きな負担を背負わせた。

また政府は物価高に対して、各種の補助金を連発した。しかし結果的に公共支出はマイナスとなって、GDPの縮小要因となっている。財政政策も金融政策も企業には恩恵を及ぼしたが、多くの家計には負担をもたらした。そして1人当たりGDPは、どんどん順位を下げている。いま政府は自らが作ったその欠陥を、企業による大幅賃上げで修復しようとしているわけだ。

今後の成長見通しは、どうだろう。専門家の推測をまとめてみると、1-3月期は能登半島地震やダイハツの不正検査問題などがあってマイナス成長が続く公算。4-6月期には大幅賃上げによって、プラス成長に戻りそうだという。だが問題は大幅な賃上げが中小・零細企業にまで及ぶかどうか。その一方で物価高が収まらなければ、消費は伸びないだろう。それなのに日銀は、輸入物価を上昇させるマイナス金利政策を止められない。不思議である。    
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GDP速報が提起した 問題点 (上)

2024-02-22 07:52:14 | 景気
◇ 貧しくなった日本人の生活 = 内閣府は先週、昨年10-12月期と23年のGDP速報を発表した。それによると、昨年10-12月期のGDP実質成長率は年率換算でマイナス0.4%。民間の事前予測はプラスだったが、個人消費と公共支出の落ち込みが大きくマイナス成長となった。これでマイナス成長は2四半期連続。アメリカなら「景気後退に陥った」と判定される。ところが企業の業績は絶好調、株価は史上最高値に最接近。いったい、なぜだろう。

GDPを構成する項目をみると、個人消費は年率換算で1.0%の減少。企業の設備投資は0.3%の減少、住宅投資は4.0%の減少、政府の公共支出は2.8%の減少だった。輸出は11.0%も伸びたが、内需の縮小を埋め切れなかった。個人消費の減少は、コロナ後の消費回復が一巡したうえに、物価高の影響で消費者が節約志向に傾いたためだと思われる。

物価高の影響で、23年の名目GDPは591兆4820億円。前年比では5.7%も増加した。ところが、これをドル換算すると4兆2106億ドルに。ドイツのGDPを2500億ドルほど下回った。新聞やテレビは「ドイツに抜かれ、世界4位に後退」と大きく報道している。しかし、これは円の対ドル相場が異常に安くなっていることが原因だ。だから円相場が少し上がれば、すぐに3位に戻る。なにも仰々しく騒ぐことはない。

それよりも重要なのは、1人当たりGDPが減少し続けていること。00年にはG7(主要7か国)でトップだったが、22年には最下位。それどころかOECD(経済協力開発機構)38か国中、なんと21位にまで落ち込んだ。円安の影響だけでは、とても説明できない。1人当たりGDPは、その国の国民の平均的な生活水準を表わすと言ってもいい。だから重大なのである。GDP速報が提起した問題は、まだある。

                          (続きは明日)       

        ≪22日の日経平均 = 上げ +836.52円≫

        【今週の日経平均予想 = 2勝2敗】
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政府 vs 民間 : 24年度経済見通し

2024-01-06 07:54:56 | 景気
◇ 実に重大な官民予測の相違 = 政府は昨年末の閣議で「24年度の経済見通し」を了承した。それによると実質GDPは568兆円となり、18年度の555兆円を抜いて過去最大になる。実質成長率はプラス1.3%で、23年度の見込みプラス1.1%を上回る見通し。賃上げと減税の効果によって個人消費が1.2%増加、企業の設備投資も3.3%増加する。一方、消費者物価は前年度比2.5%の上昇になると予測している。

日経センターは昨年末、民間エコノミスト38人が発表した24年度の経済見通しを集計した。それによると、実質成長率の平均予想値はプラス0.88%。消費者物価の上昇率は前年度比2.2%の上昇だった。毎年のことだが、政府の予測は民間より高く出る傾向がある。というのも成長率の予想を高めにしないと、税収の見積もりが増えず新年度予算を編成しにくくなってしまうからだ。だが、それにしても、今回は官民の相違が大きすぎる。

しかも、この相違はもっと重大な問題につながってくる。政府見通しによると、減税と賃上げの効果で、所得も3.8%増加する見込み。一方、物価は2.5%の上昇という見通しだから、所得の増加率が物価の上昇率を上回る。岸田首相が待望する「経済の好循環」が始まる予測になっているわけだ。しかし民間の予測では、そうならない。

最近は大幅賃上げを伝えるニュースも多い。しかし、主として大企業が中心の話だ。雇用の7割以上を支える中小企業の大多数は、そんなに大幅な賃上げは無理。したがって全体としての所得は、それほど増えない。その反面、人手不足で賃金が上がるとしても、その分は価格に転嫁される。だから物価はもっと高くなる可能性が大きい。すると「賃上げ>物価」の好循環は、実現しない。民間エコノミストの多くは、こう考えているのだろう。

        ≪5日の日経平均 = 上げ +89.13円≫

        【今週の日経平均予想 = 2勝0敗】     
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