経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

国債は どこまで増やせるのか?

2023-12-28 07:14:11 | 国債
◇ 来年度も35兆円を新規に発行 = 政府が編成した24年度の予算案。一般会計の総額は112兆0717億円で、23年度の当初予算より約2兆円縮小している。これはコロナ関連の予備費を4兆円削減したため。内容を見ていちばん気になったのは、社会保障費と国債費が増大したこと。どちらも自然に増加してしまう費目で、いずれも過去最大に。両方を合わせると64兆7000億円と、歳出全体の57.8%を占めている。いわば6割近くが固定費であり、裁量的に動かせる費目は4割に減ってしまった。

このうち国債費は27兆0090億円。国債費というのは、国債の償還や利払いに充てる費用。国債の発行残高が増えたり、金利が上がると、この費用は増大する。ここで注目されるのは、想定される金利を7年ぶりに1.1%から1.9%に引き上げたことだ。要するに24年度は日銀がゼロ金利政策から脱却、金利が上がることを政府自らが想定していることになる。

新予算案によると、新規国債の発行額は34兆9490億円。歳入全体の31.2%を占める。つまり歳入の約3分の1は、借金で賄うわけだ。この結果、24年度末の国債発行総残高は1105兆円に。国と地方の長期債務残高は、GDPの212%となる見通しだ。こうした‟借金漬け”の財政政策は、いつまで続けられるのだろう。常識的には、もう限界に近い。

ところが日銀が多くの国債を買ってしまうから、話が見えにくくなる。日銀は13年に始めた異次元緩和政策で、国債を毎年50兆円-80兆円のペースで市場から買い入れている。22年は136兆円も買った。このため金利は上がらず、こんな状態なら何年でも続けられるように思われる。しかし金利が上がり出すと、そうはいかない。財務省も26年度の国債費は金利が1%上昇すれば3兆6000億円、2%上昇なら7兆2000億円増加すると試算した。そうなると、26年度以降の予算はどんな形になってしまうのだろうか。少々恐ろしい。

        ≪28日の日経平均 = 下げ -141.62円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

コロナが遺した 財政大赤字

2023-05-13 07:56:25 | 国債
◇ 補正予算は計141兆円、国債増発は128兆円 = コロナ感染症の扱いがインフルエンザ並みに格下げされ、コロナとの闘いには一応の終止符が打たれた。だが政府はこの3年間に、実に莫大な支出を余儀なくされている。20-22年度に編成された補正予算は6回に及び、その総額は140兆8094億円。1年分の本予算額をはるかに超えた。その財源を賄うために発行された国債は計127兆6097億円。先進国中で最悪だった日本の財政状態は、さらに大きく悪化した。

使途は医療体制の整備やワクチン購入、中小企業の資金繰り支援、個人への現金支給、さらには休業者向けの雇用調整助成金なと多岐にわたった。そのなかには、全く効果がなかった現金の一律バラマキなども含まれている。また何が起きるか分からないというので、多額の予備費が計上された。3年間の予備費は、計23兆2100億円にのぼっている。この予備費は、コロナ以外の対策にも流用されたという印象が強い。

財務省は10日、国債と借入金を合計した国の借金が3月末で1270兆4990億円に達したと発表した。コロナ関連の支出増加で、大幅に増えた。国の借金をGDP比でみると、22年の段階で2.625倍。イタリアの1.506倍、アメリカの1.256倍に比べても、突出して大きい。それが現時点では、さらに大きくなったわけだ。

コロナ・ウイルスという難敵の襲来は、初めての経験。だから対応のやり方に問題があったことは、仕方がないかもしれない。しかし今後のためにも、きっちりと検証しておくことは重要だ。また膨れ上がった国の借金を、どのように減らして行くのか。実現可能な具体策の検討も不可欠だろう。ところが政府や国会、民間やマスコミでも、そんな議論は聞かれない。不思議な国である。

        ≪12日の日経平均 = 上げ +261.58円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】     


国債市場を枯死させた 日銀 (下)

2017-05-11 07:03:29 | 国債
◇ 異常事態はいつまで続く = 長期金利が少し上昇すると、日銀は国債の買い入れを増やして金利の動きを止めてしまう。このため国債の流通価格は、ほとんど変動しなくなった。投資家にとってはウマ味がなくなったわけで、市場への参加者も少なくなる。要するに国債市場は、日銀のコントロール下に置かれてしまったと言ってもいい。こんな異常事態は、いつまで続くのだろうか。

日銀も現状が異常な状態であることは、よく認識している。しかし、どうしようもない。もし国債の買い入れを減らせば、市場は自由度を取り戻す。だが金利は上昇してしまい、景気対策としての量的金融緩和は役割を終えることになる。アベノミックスも崩壊するわけで、日銀としてはとても決断できない。

政府が国債をさらに増発すれば、事態は改善する。だが現在の経済状態では、その実現性はない。それよりも起こりうるのは、アメリカが注文を付けてくることだ。日銀の国債買い入れは金利をゼロ近辺に釘付けし、円安を促す役割も演じている。近く始まる日米の経済会合で、トランプ政権がこの点を攻撃してくる可能性は決して小さくない。

近い将来に景気が大幅に改善すれば、日銀も国債の買い入れ量を減らせるだろう。だが景気が回復しないと、日銀の国債保有量はどんどん膨らみ、国債市場はさらに枯渇。その機能を全く停止する日を迎えるかもしれない。そのとき東京の株式市場、為替市場、ひいては日本経済全体にどんな影響が及ぶのか。いまから予想はできない。

      ≪10日の日経平均 = 上げ +57.09円≫

      ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ


国債市場を枯死させた 日銀 (上)

2017-05-10 08:02:39 | 国債
◇ 消失した長期金利 =権威ある日経新聞の電子版。いつも載っている経済指標欄の長期金利が「・・・」と記載されていた。1日の朝から終日、そして2日の午前中も。長期金利は住宅ローンや地方債の金利が連動する、きわめて重要な指標だ。それが1日半にもわたって消えたのは、前代未聞のことである。と言って日経新聞のミスではない。実際にこの間、長期金利は消滅していたのだ。

長期金利は、市場で取引される10年もの国債の売買価格で決まる。買い物が多ければ国債の価格は上がり、利回りは下がる。売り物が多ければ、その逆になる。その際に算出される利回りが、長期金利。先週1-2日はちょうど連休の谷間で市場の参加者が少なく、売買が成立しなかった。このため長期金利は「・・・」になってしまった。

だが長期金利が消えた根本的な理由は、ほかにある。それは流通する国債の数量が、極端に減少していること。その原因は、日銀が大量の国債を買い占めていることにある。日銀は13年4月に異次元緩和を始めて以来、これまでに500兆円もの国債を買い入れた。この額は、国債発行総額のじつに4割に当たる。

特に最近の買い入れ額は、新規に発行される国債の額を上回っている。したがって市場で流通する国債の額は、日に日に減少しているわけだ。本来、国債市場は1か月に1000兆円の商いがあるほどの巨大市場。それが連休の谷間だったとはいえ、商いがゼロになった。この現象は、近い将来に重大な問題を惹き起こす可能性があることを暗示している。

                                 (続きは明日)

      ≪9日の日経平均 = 下げ -52.70円≫

      ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ


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