経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

ジワッと来る 原油大暴落の後遺症 (下)

2020-04-30 07:58:01 | 原油
◇ いくつかの経路で広がる副作用 = 石油の消費減少は世界経済の停滞を意味するから、原油価格の暴落はまず株価の下落につながる。原油価格がマイナスに落ち込んだ先週初めも、ダウ平均は2日で1000ドル以上の値下がりとなった。次にやや時間を置いて、原油安の副作用はいくつかの経路を通じてジワッと表面化してくる。その副作用の力はなかなか強く、あなどれない。

第1の経路は、原油を保有する企業への影響だ。保有する原油の価格が下がると、企業会計上で評価損が発生する。主として石油会社や精製会社、それに商社などが原油を保有している。今回のように価格が3分の1になると、評価損の額も極めて大きくなるだろう。その結果は、7月半ばに発表される4-6月期の決算に現われる。

第2の経路は、産油国の収入減少だ。まずサウジアラビアなどの大産油国は現金が不足してくるから、海外に投資していた資金の回収を始める。いわゆるオイル・マネーが引き揚げられるわけで、株式市場には打撃となる公算も大きい。次に弱小の産油国は資金不足で債券の利払いが出来なくなる。いわゆるデフォルトに陥るわけだ。

第3の経路は、アメリカのシェール企業。原油価格が40ドルを下回ると、採算がとれないと考えられている。そのため原油安が続くと、倒産が続出する恐れがある。これらの会社は社債の発行で、資金を調達してきたところが多い。その社債が紙クズになると、保有する金融機関の経営が行き詰まる。構図としては、あのリーマン・ショックと同じ。こうした原油安の副作用がこれから現われることは間違いない。問題はその大きさである。

       ≪28日の日経平均 = 下げ -12.03円≫
 
       ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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ジワッと来る 原油大暴落の後遺症 (上)

2020-04-28 08:56:30 | 原油
◇ 超安値は当分続く = 原油の国際価格がマイナスに転落して、関係者を仰天させた。ニューヨーク商品取引所で20日、WTI(テキサス産軽質油)の5月渡し先物相場が1バレル=マイナス37.63ドルに急落するという前代未聞の出来事が発生した。仮に1バレルの原油を買うと、37ドル63セントの現金を貰える珍事である。価格はすぐにプラスの領域に戻ったが、10ドル台で低迷したまま。年初の水準に比べれば、3分の1以下となっている。

価格が暴落したのは、世界的なコロナ不況で石油の需要が激減したためだ。IEA(国際エネルギー機関)の調査によると、世界の石油需要は4月が前年比で日量2900万バレルの減少、5月も2600万バレルの減少になる。サウジアラビアやロシアなどの産油国は、5月から日量970万バレルを減産することにしているが、これでは大幅な供給過剰。貯蔵所も満杯になるというので、投げ売りが出た。

原油のほぼ全量を輸入に頼っている日本にとって、価格の下落は有難い。現にガソリンの小売価格は13週連続で下がっており、1リットル=100円を切る可能性もあるとみられている。遅れて電気やガスの料金も、下がり始めることは確実だ。家計や企業にとっては朗報だ。しかし喜んでばかりはいられない。過度の原油安はいろいろな経路を通じて、世界経済に甚大な悪影響を及ぼすからである。

原油の需給ギャップはあまりにも大きく、異常な原油安は当分続きそうだ。すると、その副作用も大きくなりかねない。もし大きな副作用が生じると、世界経済はコロナ不況に加えて原油安ショックで揺さぶられることになる。日本経済にとっても、コトは重大だ。では過剰な原油安は、どんな経路で後遺症を惹き起こすのだろうか。

                              (続きは明後日)

       ≪27日の日経平均 = 上げ +521.22円≫

       ≪28日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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今週のポイント

2020-04-27 08:02:02 | 株価
◇ 実体経済の惨状と直面へ = 株式市場は原油価格の大暴落に度肝を抜かれた。なにしろ20日のニューヨーク市場で、WTI(テキサス産軽質油)の先物相場がマイナス38ドルという異常値を付けたからである。ただ価格がすぐにプラス領域に戻り、またアメリカの一部の州でコロナ規制の緩和が実施されたことから、株価の暴落は免れた。ダウ平均は先週467ドルの値下がりにとどまっている。

この流れを受けて、日経平均も先週は635円の値下がりとなった。政府の公式見解である月例経済報告も、遅ればせながら「景気は悪化」と断定、実体経済の悪化が再認識された。また日本国内では、コロナ・ウイルス感染者の増加が止まらない。都市封鎖なしでコロナを封じ込めるのか、海外では疑問の見方も広がっている。

今週から、市場は実体経済の惨状に直面することになる。アメリカとEUが1-3月期のGDP速報を発表。またアメリカでも日本でも、主要企業の3月期決算が最盛期を迎える。これらの数字は、予想以上に厳しいものになうだろう。市場はすでにかなりの部分を織り込んでいるとはいえ、どのように反応するだろうか。

今週は28日に、3月の労働力調査。30日に、3月の商業動態統計、鉱工業生産、住宅着工戸数、4月の消費動向調査。1日に、4月の新車販売。アメリカでは28日に、4月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。29日に、1-3月期のGDP速報と3月の中古住宅販売。1日に、4月のISM製造業景況指数。またEUが30日に、1-3月期のGDP速報。中国が30日に、4月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

       ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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26兆円でも まだ足りない : 補正予算

2020-04-24 08:25:09 | なし
◇ 緊急事態宣言は延長へ = 政府は来週27日、総額25兆6900億円の大型補正予算案を国会に提出する。全国民に一律10万円を支給することになったため、一般会計の支出を8兆6000億円ほど増額した。財源として、新たに赤字国債を23兆3624億円発行する。政府・与党は国会での審議を急ぎ、大型連休前の成立を目指す。

内容をみると、医療体制の整備・拡充に1兆8000億円。雇用の維持・事業の継続に19兆4900億円など。この雇用・事業支援には①中小企業・個人事業者の資金繰り対策3兆8300億円②中小企業・個人事業者への給付金2兆3200億円③全国民への10万円給付12兆8800億円④子育て支援給付金1654億円が含まれる。

この結果、早ければ6月には全国民の手元に10万円が届く。また売り上げが激減した中小企業には最大200万円、個人事業主には最大100万円が支給される。これによって一息つける人たちも多いに違いない。だが、この程度の現金支給で人々の生活や事業がどこまで守れるのか。せいぜい2週間あるいは3週間といったところだろう。

現在の緊急事態宣言は、5月6日までが期限。安倍首相は5月2日ごろ、専門家の意見を聞いて緊急事態宣言を延長するかどうかを判断するという。しかしコロナ・ウイルスの蔓延状況からみて、緊急事態宣言を解除することはまずありえない。もし再び2週間の延長になれば、個人や中小企業・個人事業者はいっそうの困窮に陥る。またまた10兆円規模の補正予算が必要になることは、目に見えている。

       ≪23日の日経平均 = 上げ +291.49円≫

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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死者が語る コロナ肺炎の危険度 (7)

2020-04-24 08:25:09 | なし
◇ 欧米主要国に改善の兆候? = 日本時間24日午前0時の集計。アメリカの死亡者数が4万6785人に増加、ついに4万人を超えた。続いてイタリア、スペイン、フランスが2万人台。イギリスが1万8100人となっている。中国は集計ミスを訂正したため4632人に。韓国は240人。日本は341人で、韓国を初めて上回った。

前週からの増加数をみると、アメリカが1万5795人で最多。続いてイギリスが5232人で2位。あとフランス、イタリア、スペインの順で増加数が多かった。ただ注目すべき点は、アメリカ・イタリア・スペイン・フランス・ベルギー・オランダの欧米主要国では、そろって死亡者の増加数が前週を下回ったこと。都市封鎖の効果が出始めたのだろうか。

人口の大小を加味した100万人当たりの死亡者数をみると、いちばん多いのはやはりベルギーで564人。次いでスペイン、イタリア、フランス、イギリスの順となっている。人口の多いアメリカは143人で7位。中国は3.25人、韓国は4.68人、日本は2.69人だった。ただ日本は前週の1.61人から急増している。

欧米主要国の死亡者増加数が前週を下回ったため、経済再開に向けた動きが各国で見受けられるようになった。もちろん、まだ尚早だという慎重論も多い。その一方で、各国は日本の動向に注目し始めた。都市封鎖なしにコロナ・ウイルスを制圧できるかが関心のマトだが、最近の死亡者急増で不安視する向きが増えているという。

       ≪24日の日経平均 = 下げ -167.44円≫

       【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】   
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