経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

気が付けば 周回遅れ : 日本のEV (下)

2023-06-30 07:55:32 | 自動車
◇ 出遅れの挽回は至難の業 = 海外のEVメーカーが急成長を遂げた背景には、各国政府の並々ならぬ支援がある。生産や消費に対する補助金や減税。それに加えてEUは「35年には排気ガスを出さない車しか販売できない」点で合意。またアメリカも「30年には新車の50%をEVにする」方針を決めた。これらは地球温暖化ガスの削減を目標とした政策だが、日本のハイブリッド車対策と考えられないこともない。

日本は周回遅れを取り戻せるのだろうか。結論から言えば、相当に難しいのではないか。たとえばEVの普及には、給電施設が欠かせない。その施設と車を結ぶ給電コード。これだけみても、テスラやBYDの方式が世界標準になってしまう確率が、きわめて高い。日本のメーカーは輸出しようとすれば、これを取り入れなければならなくなる。

EVの命はバッテリーだ。各社はその性能向上にシノギを削っているが、これも売れ行きがよくなければ大量生産できず、単価を安くできない。全固定電池など画期的な発明があれば状況は変わるだろうが、そうでなければ後発組は頭を出せない。出遅れてしまったことのマイナス面は、見た目よりもずっと大きい。

トヨタ自動車もこのマイナス面に気が付き、EV重視に方針転換した。社長を交代し、アメリカへの投資を増やしている。だがハイブリッドを完全に捨てる決断は出来ない。経産省もEV販売に補助金は付けたが、状況を見守るばかり。日本は「EVで完全に出遅れた」ことを、まず自覚しよう。さらに「日本の自動車産業は存亡の危機にある」という緊張感も必要だ。

        ≪29日の日経平均 = 上げ +40.15円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

気が付けば 周回遅れ : 日本のEV (中)

2023-06-29 08:20:52 | 自動車
◇ ハイブリッド車への固執が敗因 = 日本の自動車メーカーは、世界に先駆けてハイブリッド車の製造技術を完成させた。ハイブリッド車というのは、ガソリン・エンジンと電気モーターの両方を搭載した車。当然ながら部品の数は多くなり、製造工程は複雑になる。日本の自動車業界はこれで世界の競争に勝てると確信し、経済産業省もこれを支援した。

EVの動力は、電気モーターだけ。部品の数は半分以下となり、製造工程もきわめて簡単になる。それならEVを造ってみよう。海外ではこう考える企業家が続々と現れた。最初に頭角を現したアメリカのテスラも、あとからこれに追い付いた中国のBYDも、もともとは自動車メーカーではなかった。それがいまは、それぞれ年間130万台、180万台を売り上げる巨大メーカーに成長している。

こうした動向をみて、日本のメーカーもEVへの関心を高めたことは確か。だが完全なEVを目指すと、せっかく手にしたハイブリッド技術が無駄になってしまう。またガソリン・エンジン部門がなくなると、多数の関連した下請け企業をどうするか。こうした問題もからんで日本の自動車メーカーは決断が遅れ、世界のEV競争では周回遅れとなってしまった。

GMやフォードといったアメリカの大メーカーも、EV化の波に乗り遅れた。主力製品が大型車で、電池の容量に不安があったためである。それでもハイブリッドでは日本に敵わないため、EVには早くから関心を寄せてきた。世界競争では、半周遅れというところか。いずれにしても、日本はどん尻。ここから巻き返せる可能性は、あるのだろうか。

                       (続きは明日)

        ≪28日の日経平均 = 上げ +655.66円≫

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

気が付けば 周回遅れ : 日本のEV (上)

2023-06-28 07:52:45 | 自動車
◇ 日本市場は海外メーカーの草刈り場 = 新車販売台数のなかで、最もEV(電気自動車)の比率が小さい国はどこか? そう、答えは日本だ。まだEVは100台に2台しか売れていない。最も比率が大きいノルウェーは、なんと100台に88台。ヨーロッパ主要国は20-25台、中国11台、アメリカ6台に比べても、断トツで比率が低い。その日本市場が、ことしは海外メーカーの草刈り場となってきた。

業界団体の集計によると、22年度に国内で販売された乗用車部門のEVは7万7238台。前年の3.1倍に増加したが、乗用車全体に占める割合はまだ2.1%にとどまっている。このうち排気量660CC以上の普通車は3万5559台、軽自動車は4万1679台だった。車種では日産の軽EV「さくら」が1位、同じく日産の「リーフ」が2位で、日産勢が健闘した。

輸入車も、大きく増加した。1万6430台を売り、前年比で64%も増えている。アメリカのテスラ、中国のBYD(比亜迪)、ドイツのベンツなどが続々と参入。日本で売り出した海外EVのモデルは、前年度の20種から22年度は79種に拡大した。こうした海外メーカーは、販売価格の高い高級車に力を集中している点が特徴。現状は海外メーカーの高級車と、日産の軽EVの争いといった観を呈している。

これらの海外メーカーは、アメリカやヨーロッパ、中国といった大市場で熾烈な競争を演じてきた。いまや値引き競争の段階にまで達している。そこで目を付けたのが、出遅れた日本市場。たとえばBYDはことし中に3車種を投入、25年までに店舗を100か所に増やす方針だ。こうしたなかで、日本メーカーのEVはどうみても影が薄い。上海で4月に開かれた自動車ショーでも、日本製EVへの関心は集まらなかった。どうして、こんなことになってしまったのか。

                    (続きは明日)

        ≪27日の日経平均 = 下げ -160.48円≫

        ≪28日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

自己矛盾に陥った NY市場

2023-06-27 07:50:18 | 株価
◇ 景気後退は本当に来るのか = FRBと株式市場の不思議な綱引きが続いている。FRBのパウエル議長は先週、議会で「FRBの大勢は年内あと2回の利上げに傾いている」と証言した。ところが市場の大半は、この発言を疑って聞いている。理由は「夏の終わりから秋にかけて景気は後退期に入る。だから7月の利上げはあっても、9月はない。あとは年内に利下げがあるかどうかだ」という次第。

だが現状からみる限り、アメリカ経済がいつから後退を始めるかは判然としない。GDPの7割を占める個人消費は、まだ堅調。小売り売上高の推移をみても、ことし2-3月よりも4-5月の方が活発になっている。雇用の状態をみても、景気が下降に向かっている兆候は出ていない。ただ最近は先行きの業況判断調査で、下向きの結果が多く出ていることは確かなようだ。

にもかかわらず、市場では「景気後退がやってくる」という観測が圧倒的に多い。景気の悪化が確実になれば、FRBも金融引き締めの手綱を緩めるという期待が強いためかもしれない。もし本当に景気後退に陥ると予測するならば、株価はそれを予知してもっと下げなければならないはず。株価が高値圏から下がらないのは、市場が本当に不況が来るとは考えていないからだという専門家の説明さえ現われた。

株価がそれほど下がらなければ、そのこと自体が消費を押し上げる材料になる。だから株価が高値圏にある間は、FRBも引き締めを続けるのではないか。そこまで考えると、市場は全く自己矛盾に陥ってしまう。もっとも、こうした考え方は古き良き時代のもの。いまのようなカネ余り時代では、「景気後退でも株価は下がらない」というのなら話は別だが。

        ≪26日の日経平均 = 下げ -82.73円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

今週のポイント

2023-06-26 07:59:28 | 株価
◇ 高値警戒感に押される = ダウ平均は先週572ドルの値下がり。終り値は3万4000ドルを割り込んだ。パウエルFRB議長が議会で「政策決定会議のメンバーは、大多数が年内2回の利上げが適切だと考えている」と証言したことで、売り物が多くなった。市場ではまだ「年内の利上げは1回だけ」という見方が強く、買い気も旺盛。だがパウエル議長の念押しのような発言で、利益確定売りの力が上回った。

日経平均は先週925円の値下がり。終り値は3万3000円を割り込んだ。外国人投資家を中心に物色買いの勢いも強いが、こちらも高値警戒感が広まっている。このため売買が交錯、1日の値動きが非常に大きくなっている。たとえば23日の値幅は957円で、ことし最大となった。円安の進行など大きな材料もあったが、全体としては利益確定売りの力が上回った形。

日米市場でのこうした状況は、今週も続くだろう。高値警戒で株価が下がれば、すかさず買いが入る。値上がりすれば、確定売りが増える。したがって株価は揉み合うが、結局は高値圏での変動になりそうだ。そして来週は、もう7月。ニューヨーク市場の関心は25-26日のFOMC(公開市場委員会)へ、東京市場の関心は解散・総選挙へと流れて行く。

今週は26日に、5月の企業向けサービス価格。29日に、5月の商業動態統計、消費動向調査。30日に、5月の労働力調査、鉱工業生産、住宅着工戸数。アメリカでは27日に、5月の新築住宅販売、FHFA住宅価格指数、カンファレンス・ボード消費者信頼感指数。29日に、1-3月期のGDP確定値、5月の中古住宅販売。また中国が30日に、製造業と非製造業のPMIを発表する。

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

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