経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

米抜きTPPは 至難のワザ (下)

2017-04-27 08:28:39 | TPP
◇ 戦略が見えない方針転換 = ある会社の営業部が、町の居酒屋で新年会を開くことにした。会費は1人3000円。ただし部長は1万円、課長は5000円出すことになっていた。ところが部長が急に欠席するという。課長がその分を払ってくれればいいが、そうでなければみんなの会費が高くなってしまう。たとえてみればアメリカ抜きのTPPは、こんな状況だ。

この場合、課長である日本が余分に負担することは、農畜産物の輸入関税をTPPの水準よりさらに引き下げることを意味する。そんなことをすれば、農畜産業界から猛烈な反対運動が巻き起こることは明らかだ。選挙を前に政府・与党としては、動けるはずもない。課長が負担を増やさずに、新年会を開く方策はあるのだろうか。

その一方で、新聞各紙の報道によると、政府はアメリカが考え直してTPPに復帰することを期待しているという。もしそうなら、11か国が集まってTPPの条文を手直しする必要はないはずだ。こうした矛盾点が伝えられるのも、政府に一貫した戦略がないためだとも考えられる。

アメリカ抜きでTPPを実現しようという目標は、決して悪くはない。だが、それにはかなりの負担増を受け入れる覚悟が必要である。また中国が熱意を示しているRCEP(東アジア地域包括的経済連携)や、近く始まるアメリカとの2国間FTA(自由貿易協定)との整合性など。政府はどう考えているのか。どうも確固とした通商戦略が、全く見えてこない。

      ≪26日の日経平均 = 上げ +210.10円≫

      ≪27日の日経平均は? 予想 = 下げ

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米抜きTPPは 至難のワザ (上)

2017-04-26 07:45:11 | TPP
◇ 日本にアメリカの代役は務まるのか = アメリカ抜きのTPP(環太平洋経済連携協定)を再構築する。安倍首相はこれまで「アメリカが参加しないTPPは意味がない」と繰り返し発言してきたが、その方針を大転換することになった。来日したペンス米副大統領が「TPPはアメリカにとっては過去のもの。だからアメリカは加わらないが、日本がやるならどうぞ」と囁いたからだという説も広がっている。

政府はまず5月11-12日にカナダで開く主席交渉官会議で、この方針をTPPに参加した10か国に伝える。そのうえで、5月下旬にベトナムで開く閣僚級会合で正式に提案する。最終的には11月に予定されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で、正式に決定したい考え。このスケジュールについては、10か国の多くがすでに賛同しているという。

問題となるのは、TPP再構築の内容だ。アメリカが抜けたため、協定文は作り直さなければならない。しかし日本政府は、関税の引き下げ率などTPP交渉で決まった具体的な内容については変更しない方針。だが、この点では各国から異論が続出しそうな雲行きである。

たとえばベトナムやマレーシアなどは、アメリカが輸入関税を引き下げることの見返りとして、建設・小売り・金融に対する外資規制を緩和した。そのアメリカがいなくなったのだから、規制緩和はできないと主張するに決まっている。日本がアメリカの代役を務めれば、その問題は解決できるが日本にそんな余裕はない。

                              (続きは明日)

      ≪25日の日経平均 = 上げ +203.45円≫

      ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫  

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情けない 安倍内閣の姿勢 : TPP

2017-01-26 08:15:37 | TPP
◇ しつこ過ぎると嫌われるぞ = トランプ米大統領は23日、TPP(環太平洋経済連携協定)から「永久に離脱する」大統領令に署名した。大統領令というのは、議会の承認なしに政府に直接命令できる権限。これによって、アメリカがTPPに参加する可能性は完全になくなった。要するに、これまで太平洋沿岸の12か国が構築してきた多国間の経済協定は消滅したわけである。

にもかかわらず、日本の政界ではTPPがまだ生き残っている。24日の国会では、安倍首相が「改めてトランプ大統領に翻意を求めて行く」と強調した。世耕経済産業相も会見で「TPPの戦略的、経済的な意義を粘り強く訴える」と述べている。この調子だと、2月に予定される日米首脳会談でも、安倍首相はトランプ氏を説得するつもりのようだ。だが、それはしつこ過ぎ。トランプ氏に嫌われることになりかねない。

オーストラリアからは、アメリカ抜きのTPPを再構築しようという声が聞こえてくる。とても困難な作業になると思うが、日本がリーダーシップをとらなければ決してまとまらないだろう。安倍内閣にそれだけの覚悟と戦略があるのかどうか、現状をみる限りはきわめて疑わしい。また2国間のFTA(自由貿易協定)を多角的に結ぶなどの方法も考えられるが、いまの政府にそんな動きは全く見られない。

うがった見方をすれば、政府は来年度予算が成立するまではTPPを生かしておきたいのかもしれない。TPPに関連した農業対策費を成立させるためだ。そして政府・与党は次の衆院選で、こう宣伝する。「農民のみなさん。TPPは実現しませんでしたが、農業予算は獲得しました。清き一票を」。

      ≪25日の日経平均 = 上げ +269.51円≫

      ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ

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