経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

株価はもう少し調整? : NY市場

2022-05-31 07:50:21 | 株価
◇ 企業の業績見通しに関心が集中 = ダウ平均株価は3月下旬から8週間にわたって続落、先週になって大幅に反発した。このため市場では「株価は底入れした」という見方も出ているが、まだ「もう少し調整する」と予想する投資家の方が多いようだ。ただ底入れ派も再調整派も、重視しているのは企業の業績見通し。先行きが明るければ株価は回復するが、暗ければ再調整は避けられないと考える。

ダウ平均は、ことし1月4日に3万6800ドルの高値を記録した。そこから安値となった5月19日までの下落率は約15%、大幅に反発したあとの27日までは約10%の下落率となっている。20年のコロナ・ショックでは約37%、08年のリーマン・ショックでは約44%下げているから、今回の下げ率は比較的に小さい。ここから「調整はまだ足りない」という見方も生まれているようだ。

市場がもっと重視しているのは、PER(株価収益率)の倍率。PERというのは、1株当たりの純利益を株価で割った指標。この倍率が高ければ買われ過ぎ、低ければ売られ過ぎと考えられる。SP500のPERをみると、20年9月のピークが24.1倍だった。それが現在は16.6倍にまで低下している。ここからみる限り、ニューヨーク株価の買われ過ぎはほぼ解消したと言っていい。

ところがPERは、企業の利益が減少すれば、株価の水準が同じでも上がってしまう。いまアメリカでは主としてガソリンや資源の価格急騰で、企業のコストが増大。特に消費関連企業の収益は圧迫されると予想されている。この点を重視すれば、株価は「まだ調整が必要」ということになるだろう。しかし全体として企業の利益がどのくらい縮小するかは、まだ判然としない。そこで市場の空気も「調整はありそうだが、その程度は判らない」ということに落ち着くしかないわけだ。

        ≪30日の日経平均 = 上げ +587.75円≫
  
        ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

今週のポイント

2022-05-30 07:39:01 | 株価
◇ NY株式は9週間ぶりに猛反発 = ダウ平均は先週1951ドルの値上がり。8週間の続落のあと猛烈に反発した。終り値では3万3000ドル台を一気に回復している。物価上昇がやや鈍ったことから、FRBによる過度な引き締めに対する警戒感が和らいだ。しかし大幅な値下がりに対する訂正という感じが濃い。8週間で3600ドル下げたが、その54%を取り戻した。

日経平均は先週43円の値上がり。ニューヨークの大幅高にもかかわらず、勢いのない相場となった。出来高も1日平均では3兆円を割っている。個人投資家の安値拾いや企業の自社株買いもあったが、外国人投資家は大きく売り越した。ニューヨーク市場に資金を投入したほか、円安が一服したことで割安感が薄れている。

アメリカでは、景気の先行きに対する不安感が拭えない。物価高で消費が抑制されたり、企業の業績が下向くと考えられるからである。このため株価は急反発したものの、その反動で下げるかもしれない。一方、東京市場はニューヨークの急反発に追い付こうとする動きで始まるだろう。しかし、そのあとは依然として目標が定まらない。梅雨模様の展開が続きそうだ。

今週は31日に、4月の労働力調査、鉱工業生産、商業動態統計、住宅着工戸数。1日に、1-3月期の法人企業統計、5月の新車販売。アメリカでは31日に、5月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。1日に、5月のISM製造業景況指数。3日に、5月の雇用統計、ISM非製造業景況指数。また中国が31日に、5月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

死者が語る コロナ肺炎の危険度 (114)

2022-05-28 08:09:36 | なし
◇ 中国は間もなく終息へ = 世界の感染者は累計5億2739万人、この1週間で201万人増加した。週間の増加数としては、昨年以来の最少。死亡者は628万3226人で、週間361人減少した。これはジョンズ・ホプキンス大学が前週、イギリスの数値を過大に集計し訂正したため。ただ、その影響を考慮しても、全体として感染者や死亡者の増加数がかなり縮小したことに変わりはない。

国別の死亡者数をみると、アメリカは累計100万3783人。この1週間で2514人増加した。次いでブラジルが66万人台、インドが52万人台、ロシアが37万人台、メキシコが32万人台。さらにイギリスが17万人台、イタリアが16万人台、インドネシアが15万人台、フランスとイランが14万人台となっている。イギリスは集計の訂正で、前週より1万1350人減った。

ゼロ・コロナ政策で、徹底的な都市封鎖を実施した中国。状況はかなり改善した。感染者は累計119万8453人で、週間3万1724人の増加。前週の増加数より1万2000人減っている。死亡者は5225人、週間7人の増加にとどまった。増加数は3週連続で急減している。上海市などでも段階的に規制が解除されており、この調子なら間もなく終息宣言が出されるだろう。

日本の感染者は累計874万5504人、この1週間で22万1846人増加した。増加数は3週連続で縮小している。死亡者は3万0467人で、週間251人増加した。増加数は前週より10人多い。全体として、落ち着いてはいる。ただ6月10日からは、外国人観光客の受け入れを開始する。水際対策が十分な効果を挙げるかどうか、やっぱり気になるところだ。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +176.84円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】    

“第3次冷戦”への防衛線を構築

2022-05-27 07:29:29 | なし
◇ バイデン大統領がIPEFで目指すもの = また新しい経済同盟が誕生した。バイデン大統領が東京で、その発足を宣言したIPEF(インド太平洋経済枠組み)である。アメリカや日本、それにインドなど13か国が参加した。貿易の円滑化・供給網の強化などを掲げているが、関税の引き下げはない。この点でTPP(環太平洋経済連携協定)やRCEP(東アジア地域包括的経済連携)とは、性格を異にしている。だが、それでも屋上屋の感は免れない。

ロシアの無謀なウクライナ侵攻で、NATOを中心にロシアを包み込む西側の体制は整った。しかしアメリカがいま最も警戒する中国に対しては、目立った防衛ラインがない。特にインドが、大きな抜け穴になっている。そこでインドが嫌がる関税引き下げ抜きのIPEFを結成、インドを強引に引き入れた。これがバイデン大統領の真意に違いない。

第2次大戦直後から、世界はアメリカ中心の西側とソ連中心の東側に分かれて激しく対立した。戦争一歩前の緊張状態。これが Cold War、冷たい戦争である。このときの西側の戦略は、ソ連と中国を封じ込めようとするものだった。その後1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻、第2次冷戦と呼ばれる緊張が再燃した。いまバイデン大統領の頭のなかには、第3次冷戦の文字がちらついているのだろう。

ただ当時と現在とでは、状況が全く異なる。それは中国が軍事的にも経済的にも、超大国に成長したからだ。特にその市場の大きさから言っても、中国を完全に封じ込めることはムリ。それでもIPEFの設立で、なんとか最低限の形だけは整った。これから、どうやって中国のアジア・太平洋への膨張を防ぐのか。バイデン大統領の手腕が問われることになる。

        ≪26日の日経平均 = 下げ -72.96円≫ 

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

物価上昇2%の 衝撃 (下)

2022-05-26 07:57:57 | 物価
◇ 実感は2%どころじゃない物価高 = 景気が悪いから、日本の消費者物価は2%程度の上昇にとどまっている。しかし企業物価は10%も上昇した。これはウクライナ戦争や中国の都市封鎖で、エネルギー・資源・食料品の国際価格が急騰したためである。それに円安の影響が加わった。4月の輸入価格をみると、円ベースの価格は前年比44.6%の上昇。契約通貨ベースでは29.7%の上昇だったから、円安で輸入価格は15%ほど余計に上昇したことになる。

この弊害を避けるためには、日銀がゼロ金利政策を止めて金利を引き上げるしかない。ところが金利を上げれば景気はもっと悪化しかねないから、日銀は動けない。黒田総裁は「全体としてみれば円安はプラスだ」とか「物価の上昇は一時的だ」とか、苦しい言い訳に終始している。政府も金利が上がれば国債の利子負担が増加するので、静かに見守るだけ。

いちばん大きな問題は、2%という物価上昇率が、消費者の実感と大きくかけ離れていることだろう。電気料金やガソリン代はもとより、スーパーへ行っても値上がりしていない商品を探す方が難しい。なぜ物価統計と実感が、こんなに相違するのだろうか。その1つの原因は、購入頻度の問題。食料品や生活用品は毎日のように買うが、自動車や冷蔵庫は数年に1度しか購入しない。

そこで専門家が「2か月に1回以上購入する品目」だけの物価上昇率を試算したところ、5.9%上昇という結果が出た。こうした購入頻度の高い品目は、若者よりも高齢者によって買われる割合が大きい。したがって高齢者が感じる物価上昇率は、もっと高いとも言えそうだ。つまり消費者物価の平均上昇率は2%であっても、多くの人にとっての上昇率は6%以上である公算が大きい。この意味では、すでに消費者の段階でもインフレなのだ。

        ≪25日の日経平均 = 下げ -70.34円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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