経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

“半導体”の 不安定な回復

2019-07-31 08:14:51 | 半導体
◇ ニューヨーク市場の明るい話題 = FRBによる利下げは織り込んでしまい、次なる手がかりを探していた先週のニューヨーク株式市場。半導体市況の回復? という思わぬ材料が出現して、歓声をあげた。4-6月期の決算発表が進むなかで、たとえばテキサス・インスツルメントの売り上げは前年比9%の減少。事前の予測より大きく改善した。これまでに決算を発表したハイテク企業18社のうち、13社の売り上げが事前の予測を上回ったという。

半導体関連企業の業績は、3-4年を周期として大きく変動する。価格が上昇すると、世界中のメーカーが一斉に増産して在庫過剰に。市況が下がると、減産で業績が悪化する。このサイクルでみると、昨年からは下り坂。19年後半には底入れすると予測されていた。したがって、そろそろ業況が改善してもおかしくはない。

ところが、ことしは米中貿易戦争という不透明な要因が加わった。このため、たとえばWSTS(世界半導体市場統計)が6月に発表した予測では、19年の世界市場規模は4120億ドルで前年比12%の減少。SFMI(国際半導体製造装置材料協会)による製造装置の世界販売額は527億ドルで18%の減少となっていた。

それが一転して明るくなってきたのは、なぜだろう。米中間の貿易交渉が再開して、株価が上がるのなら理解できる。しかし交渉再開で、関連企業の売り上げが増えるとは考えられない。とするとサイクルの力が働いて、在庫が減ってきたのだろうか。その辺を見極めるのには、もう少し時間がかかりそうだ。東京市場でも、半導体関連銘柄は上昇し始めているのだが。

       ≪30日の日経平均 = 上げ +92.51円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

置き去りになる 日本 : 金融緩和

2019-07-30 07:57:42 | 金利
◇ 景気の悪化を認めない政府・日銀 = 世界経済は再び金融緩和の波に洗われることになった。アメリカの中央銀行であるFRBはあす31日、政策金利の引き下げを発表する予定。ヨーロッパの中央銀行であるECBも、9月には緩和政策に踏み切る方針。こうしたなかで、日銀だけはずっと静観の姿勢を貫こうとしている。日本は世界の金融緩和という流れから、取り残されそうだ。

FRBのパウエル議長は30-31日に開く政策決定会合後に記者会見し、10年半ぶりの政策金利引き下げを発表する見込み。金利は現行の2.5%から、おそらくは2.25%に下がるものと思われる。利下げに踏み切る理由として、パウエル議長は「景気の現状は必ずしも悪くはないが、米中貿易戦争の影響などで悪化の可能性がある」と、予防的緩和の意義を強調するに違いない。

これに先立ちECBも25日の理事会で、金融政策のカジを緩和へ切り替えることを決めた。次回9月の理事会で、政策金利の引き下げと量的な緩和を打ち出す公算が大きいと観測されている。こちらもアメリカと同様、景気の下降を未然に防ぐための措置。特にアメリカの利下げで「ユーロの対ドル相場が上昇しないようにするための政策」だと説明するはずだ。

ところが日銀は、政策の変更など全く考えていない。もうマイナス金利で、下げる余地がないのか。いや、ECBも政策金利はゼロ、市中銀行から預かる場合の預金金利はマイナス0.4%で、日本と変わらない。日銀がFRBやECBと違う点は、ただ1つ。それは消費増税を前にして「景気が心配」とは、口が裂けても言えないこと。景気に心配がなければ、金融緩和の必要はなくなる。

       ≪29日の日経平均 = 下げ -41.35円≫

       ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週のポイント

2019-07-29 08:05:11 | 株価
◇ 半導体の復活が新たな助っ人 = ダウ平均は先週38ドルの値上がり。かろうじて2万7000ドル台を守り通した。今週31日の利下げが確実視されること、米中貿易協議が再開されたこと。加えて始まったばかりの決算発表で、予想を上回る好業績の企業が現われたことが材料になった。この新しい助っ人は、市況の回復を反映した半導体関連の銘柄に多い。

一方、週末に発表された4-6月期の実質成長率は2.1%どまり。前期より1%減速した。米中貿易戦争の影響で、輸出と企業の設備投資が減退した。この傾向は、米中交渉が進展しない限り続くことになるだろう。ニューヨーク市場としては、FRBによる次の利下げと半導体の本格的な回復に期待するしかない。

日経平均は先週191円の値上がり。アメリカの利下げにもかかわらず、円相場が1円ほど円安に傾いたことが、買い材料となったようだ。しかし相変わらずの手掛かり難。参院選も終わって、いよいよ消費増税が近づいてきたことが不安材料に。ニューヨークと違って、4-6月期の決算にも予想外の好結果が現われる兆候はない。

今週は29日に、6月の商業動態統計。30日に、6月の労働力調査と鉱工業生産。31日に、6月の住宅着工戸数。1日に、7月の新車販売台数。アメリカでは30日に、6月の中古住宅販売、7月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。1日に、7月のISM製造業景況指数。2日に、7月の雇用統計と6月の貿易統計。またEUが31日に、4-6月期のGDP速報。中国が31日に、7月の製造業と非製造業のPMIを発表する。なおFRBは31日に、利下げを決定する予定。

       ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“忖度”の匂いがする 月例報告

2019-07-27 07:12:33 | 景気
◇ 「緩やかな回復」と言うしかない? = 政府は23日に開いた関係閣僚会議で、7月の月例経済報告を了承して公表した。いちばん注目される景気の現状については「輸出を中心に弱さが続いているものの、緩やかに回復している」と表現。これまでの判断を据え置いている。このため新聞各紙も、この記事をそれほど大きくは扱わなかった。しかし月例報告をよく読んでみると、なんだか誤魔化されているような気がしてならない。

まず生産の動向について、報告は「横ばいとなっているものの、一部に弱さが続いている」と判断した。従来の「弱含んでいる」に比べてどう違うのかよく判らないが、これで1年7か月ぶりの上方修正になったと説明している。この上方修正は、全体の景気判断を「緩やかな回復」とするための重要な根拠となっているらしい。

ところが、企業の業況判断に関する箇所では「製造業を中心に慎重さが増している」と記述している。製造業が慎重さを増しているのに、生産が上方修正されるとは。ちょっと理解に苦しむ。また生産を上方修正した根拠として、報告は「5月の生産指数は前月比0.5%増」の数字を挙げた。しかし経産省が発表した5月の生産指数は前月比2.1%の減少。プラス0.5%という数字は、どこを探しても見当たらない。

月例報告は、景気動向に関する政府の公式見解だ。消費増税を目前に控えて、報告で「景気は下降」とは言えない。そんな思惑が、この月例報告からは感じ取れる。判断を「緩やかな回復」のまま据え置くために、悪ヂエを働かしたのではないか。そこで“改竄”があったとは思えないが、少なくとも“忖度”の匂いは漂ってくる。

       ≪26日の日経平均 = 下げ -98.40円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“混迷病”に憑りつかれた イギリス

2019-07-26 07:42:11 | イギリス
◇ ジョンソン新首相の登場でさらに重篤化 = イギリスの新首相に、ボリス・ジョンソン氏が就任した。メイ前首相が、EUとの間で合意した離脱協定案の議会承認を得られず辞任。あとを受けて保守党の党首選挙に圧勝、直ちに議会で首相に選出された。EU離脱の強硬派として知られ、首相就任直後の演説でも「予定された10月末の離脱を目指す」と言明している。

離脱協定案について、新首相は「EUとの間で再交渉はする」とも述べている。しかしEU側は、再交渉には応じない方針。もし再交渉がなく、協定案が修正できなければ「10月末に離脱」というのが、ジョンソン新首相の考え方だ。このため、一般には「10月末の合意なき離脱」の可能性が強まったと考えられている。

ところが問題は、そう簡単には割り切れないようだ。というのも野党の労働党は、ほとんどが離脱反対。与党内にも反対派がいるから、もし下院で投票ということになると離脱は拒否される公算が大きい。また野党がジョンソン首相の不信任案を提出した場合も、成立する可能性が高いとみられている。

こうした事態を防ぐため、ジョンソン首相は10月末まで議会を招集しないという奇襲作戦をとる見込み。これに対して野党側は、早くも休会の阻止法案を提出して可決された。どうにも事態は相変わらず複雑、混沌としている。収拾がつかなくなって、最後はまた国民投票という観測も出ているが、こんど投票すれば残留派が勝つという予想も。イギリスの“混迷病”は、むしろ進行したようにも思われる。

       ≪25日の日経平均 = 上げ +46.98円≫

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>