経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

“経済の好循環”には ほど遠い (下)

2024-02-09 07:09:51 | 所得
◇ 可能性はゼロではないが = ことし“経済の好循環”が実現する可能性はあるのだろうか。そのためには所得が大幅に増加し、物価が安定しなければならない。まず賃上げはどうなるのか。岸田首相は「昨年を上回る賃上げを」と経済界にハッパをかけている。そこで、ことしの春闘では昨年の3.6%を上回る4%の賃上げが達成されたと仮定しよう。すると、パート労働者や年金生活者までを含めた全体の所得増加率は2%程度になるだろう。

一方、物価の見通しはどうか。24年度の物価について、政府は2.5%の上昇、日銀は2.8%の上昇と予測している。これだと全体の実質所得はプラスにならない。しかも物価は、もっと上がる可能性の方が大きい。中東情勢の緊迫でスエズ運河を通る船舶が急減、海上運賃の上昇がこれから物価に跳ね返る。原油などのエネルギー価格も上がるかもしれない。

大企業の賃上げ率が4%になり、中堅・中小企業の賃上げ率も2%を超えれば、全体の賃上げ率は2.5%程度に引き上げられる。だが多くの中堅・中小企業は、賃上げ分をそっくり価格に転嫁させなければやって行けない。すると物価はこの面からも、上昇圧力を受けることになる。こうみてくると、‟経済の好循環”と口で言うのは簡単だが、その実現は容易ではない。

‟好循環”を達成するための一つの方法は、物価を徹底的に抑え込むこと。たとえばガソリンや電気・ガスに対する補助金は増やして継続する。また2%以上の賃上げを実施した中堅・中小企業に対しては、かなり減税する。そして輸入物価を上昇させている円安を修正、1ドル=110円程度の相場を目指す。しかし政府・日銀に、そこまでやる勇気はない。したがって‟好循環”の可能性はゼロではないが、きわめて難しいということになる。

        ≪8日の日経平均 = 上げ +743.36円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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“経済の好循環”には ほど遠い (上)

2024-02-08 07:54:30 | 所得
◇ 昨年の実質給与はマイナス2.5% = 厚生労働省は6日、昨年12月と23年の毎月勤労統計を発表した。まず12月の1人当たり現金給与総額は57万3313円で、前年同月比1.0%の増加だった。しかし物価が上昇したため、実質値では前年比1.9%の減少。これで実質給与のマイナスは、実に21か月連続となった。なお正社員の現金給与総額は79万3207円で、前年比1.4%の増加。パートは11万7784円で、2.5%の増加だった。

この結果、23年の1人当たり現金給与総額は月平均32万9859円、前年比1.2%の増加となった。しかし物価が3.8%上昇したため、実質値は2.5%の減少。22年の1.0%減少よりもマイナス幅が拡大している。なお正社員の現金給与総額は43万6849円で前年比1.8%の増加、パートは10万4570円で2.4%の増加だった。人手不足を反映して、パートの伸び率が正社員よりも高くなった。

物価高を上回る賃上げ率を実現する。これによって勤労者の実質所得がプラスとなり、消費が拡大。企業の利益が増えて、また大幅な賃上げ--岸田首相が待望する“経済の好循環”である。こうした政府の呼びかけもあって、昨年の春闘による賃上げ率は3.60%にまで上昇した。しかし、これは大企業が対象の数字。中堅・中小企業まで含めると、毎勤統計のように1.2%の増加に低下してしまう。さらにパート労働者や年金受給者まで含めると、所得の増加率はどんどん低くなる。

総務省が同日発表した家計調査によると、2人以上世帯の23年の消費支出は月平均24万7322円。前年比では名目で1.3%の増加、実質で2.4%の減少だった。物価の上昇で名目値は増加せざるをえなかったが、実質値は下がって生活水準の低下を示している。これでは“経済の好循環”どころか“悪循環”だ。では24年の見通しは、どうだろうか。

                    (続きは明日)

        ≪7日の日経平均 = 下げ -40.74円≫

        ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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物価高に追い付けない 賃上げ

2023-06-09 07:45:51 | 所得
◇ 実質賃金は13か月連続で減少 = 厚生労働省は6日、4月の毎月勤労統計を発表した。それによると、1人当たりの現金給与総額は28万5176円。前年同月比では1.0%の増加だった。ところが物価が4.1%も上昇したため、実質賃金は3.0%の減少となっている。これで実質賃金の減少は13か月連続。働く人の生活水準は、下がる一方だ。

就業形態別にみると、一般労働者の現金給与総額は36万9468円で1.1%の増加。パートタイム労働者は10万3140円で1.9%の増加。しかし実質賃金は一般労働者が2.9%の減少、パート労働者は2.2%の減少だった。ただ業種別にみると、不動産・物品賃貸業、複合サービス事業、運輸・郵便、飲食サービス、金融・保険の5業種は、給与の伸びが物価上昇率を上回って実質賃金が増加している。

厚労省はこうした結果について「30年ぶりの高さとなったことしの賃上げが、まだ十分に反映されていない」と解説した。だが5月も多くの商品が値上げされており、6月には電気料金もまた上がる。原油の国際価格も1バレル=70ドル以下には、なかなか下がらない。政府が言う「賃上げと消費増の好循環」は、実現がかなり難しそうだ。

それにしても、実質賃金の減少ぶりはひどすぎる。厚労省の資料によると、20年を100とした実質賃金の指数は、この4月に84.5となっている。ここ3年ほどの間に15%も減少したわけだ。これでは景気の本格的な回復は難しい。将来への不安感ばかりが増すから、若い人たちが安心して子どもを産めない。

        ≪8日の日経平均 = 下げ -272.47円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ≫  
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コロナ前に戻らない 給与総額

2022-03-09 07:33:23 | 所得
◇ コロナの2年間で2348円の減少 = 厚生労働省は8日、ことし1月の毎月勤労統計を発表した。それによると、1人当たりの現金給与総額は27万4172円で、前年を0.9%上回った。このうち一般労働者は35万6357円で1.2%の増加、パートタイム労働者は9万5945円で1.0%の増加だった。昨年1月はコロナ第3波の真っ最中だったから、それに比べればやや改善したことになる。ただ改善の程度は、きわめて小さい。

ちょうど2年前の20年1月、コロナの影響はまだ全く現われていない。そこで、ことし1月と20年1月の数字を比べてみると――。当時の現金給与総額は27万6520円だったから、この2年間で給与は2348円減ったことになる。このうち一般労働者は4093円、パート労働者は1094円の減少だった。給与はまだコロナ前の水準には戻っていない。

給与総額が増加しない大きな原因の1つは、団塊の世代が定年に達して労働者の平均年齢が下がったからかもしれない。もちろんコロナ不況の影響もあった。たとえば1月の総労働時間は平均128.9時間で、2年前より2.4時間少なかった。特に鉱業・砕石業、建設業、飲食サービス業、教育・学習支援業の労働時間が、大幅に短くなっている。

このほか、ことし1月のパート比率は31.54%で、2年前より0.33ポイント低下した。またパートの平均時給は、最低賃金が引き上げられたこともあって1243円に上昇。2年前より45円上がっている。時給が上がっているのに比率が下がったのは、やはりコロナ不況によるものだろう。コロナの影響は「やはり大きい」と考えるべきなのか、それとも「この程度で済んでいる」と考えるべきなのか。

        ≪8日の日経平均 = 下げ -430.46円≫

        ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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たった978円の増加 ; 10年間の給与

2021-02-10 07:52:42 | 所得
◇ 20年の給与総額は月平均31万8299円 = 厚生労働省が9日発表した20年の毎月勤労統計によると、20年の1人当たり現金給与総額は31万8299円だった。前年に比べて1.2%減っている。コロナ不況によるもので、リーマン・ショック後の09年に次ぐ大幅な減少となった。このうち一般労働者は41万7330円で1.7%の減少、パートタイム労働者は9万9390円で0.4%の減少となっている。残業代と冬のボーナスの減少が、大きな要因となった。

基本給である所定内給与は24万4956円、残業など所定外給与は1万7352円。またボーナスなど特別に支給される給与は5万5991円だった。総労働時間は135.1時間で2.8%減っている。給与総額を産業別にみると、飲食サービス業が6%の減少で最も影響が大きかった。次いで複合サービス業が3.5%の減少となっている。

10年の統計と比べてみよう。現金給与総額は31万7321円だった。したがって労働者1人当たりの給与は、この10年間でわずか978円しか増えていない。このうち所定内給与と所定外給与はやや減少しており、ボーナスなどの特別に支給される給与だけが増加した。10年前の総労働時間は146.2時間だった。

この10年間に、日本経済は大きく変貌した。デジタル化やキャッスレスが進み、企業のなかには年間の利益が1兆円を超すところも続出している。株価は3倍近くに上昇した。そうしたなかで変わらないのが、労働者の給与。先行きも不安だから、貯蓄に力を入れる。これでは消費が伸びないから、経済成長もままならない。そんなことを考えさせる20年の勤労統計だった。

       ≪9日の日経平均 = 上げ +117.43円≫

       ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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