経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

「金利のある世界」へ 半歩

2023-11-07 07:18:52 | 銀行
◇ 定期預金の利息が100倍に = 大手銀行が続々と定期預金の金利を引き上げる。たとえば三菱UFJ銀行は、今週から10年定期預金の金利を年0.2%に引き上げた。これまでの金利は0.002%だったから、100倍になる計算だ。三井住友信託銀行も、7年定期預金の金利を0.1%に引き上げた。今後も多くの銀行が同調するとみられている。きっかけは日銀が長期金利政策を修正、10年もの国債の利回りが1%を超えることを容認したこと。

預金者にとっては喜ばしい話だが、何ともまだ物足りない。たとえば金利が100倍になったと言っても、100万円を預けて年2000円の利子が付くだけだ。ただし、これまで10年間にわたって続いてきた「金利のない世界」に風穴があき、「金利のある世界」に半歩ではあるが足を踏み入れたことは確か。今後は確実に、金利は上昇するだろう。

その行程表は、次のようになると考えられる。まず債券市場で10年もの国債の利回りが上昇、1%を超える。さらに1.5%にまで近づくと、日銀は短期金利についてもゼロ金利からの脱出を考え始める。ここまでくれば、市中銀行の定期預金も2-3%の金利が見えてくる。仮に3%まで上昇すれば、100万円の預金で年3万円の利子が付くことになる。

試算によると、家計の利子所得は91年に38兆円もあった。それが21年には6兆円を割り込んでいる。この面でも家計は強く圧迫されたわけで、消費が伸び悩んだ大きな原因ともなったと考えられる。とにかく「100万円の預金で利子が20円」なんていう世界は、異常中の異常。そこから脱出できることは正常化への道、きわめて喜ぶべき動きだと言えるだろう。

        ≪6日の日経平均 = 上げ +758.59円≫

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
  
   
P.S, 筆者、病気のため入院。経済ブログは休載します。ご諒承ください。

崖っぷちの 地方銀行 (下)

2019-05-31 08:01:26 | 銀行
◇ 店舗の統廃合や合併、人員整理へ = 人口の減少、ゼロ金利政策、競争の激化――これらの悪条件は、なにも地方銀行に限ったものではない。全国規模で展開するメガバンクや、地銀よりずっと狭い地域を基盤とする信用金庫も経営は苦しく、業績は悪化している。だがメガバンクは海外市場でも活動し、信用金庫は地銀よりも地域との密着性が強いという特性を持っている。多くの地銀には、これがない。

もちろん例外はあるものの、地銀の多くは競争力が弱い。歴史的に、地域の“顔”として安住してきたからである。そこへ大競争時代が訪れ、地銀はメガバンクと信用金庫に挟み撃ちされることになった。優良で規模の大きい顧客はメガバンクに、優良で規模が小さい顧客は信用金庫に奪われるというケースが続出している。

一般的に言って金融機関は、貸し出し難に陥ると信用度の低い顧客にも貸し付けるようになる。また証券や不動産投資でも、しだいに質の悪い物件に手を出すことになりやすい。景気が上昇しているうちは問題が起きないが、景気が下降に転じると、これらの案件は不良債権になることが多い。

金融庁や日銀は、いま地銀の経営破たんを警戒し始めている。金融機関の破たんは一気に伝染し、金融不安を惹き起こしかねないからだ。その予防のためにも、地銀の効率化が急がれる。店舗の統廃合や人員整理が進み、合併も盛んに行われるだろう。5年後に上場地銀の数が、いまの半分になったとしても驚くことはない。

       ≪30日の日経平均 = 下げ -60.84円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

崖っぷちの 地方銀行 (上)

2019-05-30 07:56:43 | 銀行
◇ 上場地銀の7割が最終減益に = 地方銀行の多くが、経営難に苦しみ始めた。全国地方銀行協会の集計によると、協会に加盟している63行の3月期決算では、最終利益の合計が6211億円。前年より21%減少した。全体の7割に近い41行が減益となっている。また上場している78行について調べてみても、55行が減益決算だった。今後の経営環境は、さらに厳しさを増すとみられている。

地方銀行というのは、主として都道府県を単位とした地域に根差す金融機関。明治時代の国立銀行を発祥とする銀行もあれば、昭和になって相互銀行から転換したものもある。したがって資金量などの規模は千差万別。たとえば横浜銀行や静岡銀行の時価総額は5000億円を超えているが、島根銀行や豊和銀行は50億円に満たない。

経営が苦しくなった原因は、いくつかある。まず人口の減少。要するに、借り手も貸し手も少なくなってきた。次に日銀のゼロ金利政策。貸出金利が上げられず、本業では儲けが出なくなってしまった。さらに証券や不動産などの投資物件でも、利回りが縮小した。このように環境が厳しくなると、金融機関同士の競争が激化。ますます利益を出しにくくなってきている。

今後の見通しも厳しい。人口の減少は続き、金利は上がらない。安全な投資先だった国債も、利子が付かないから買えない。地銀全体の国債保有高も約20兆円と、8年前の半分に減っている。貸倒引当金も積み増さなければならない。こうした状況を踏まえて、日銀はこんな報告書を公表した。ー-「28年度には、地銀の約1割が最終赤字に転落する」

                            (続きは明日)

       ≪29日の日経平均 = 下げ -256.77円≫

       ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

追い詰められた メガバンク (下)

2017-11-24 07:06:12 | 銀行
◇ マイナス金利の副作用 = いまから20年前、1997年に北海道拓殖銀行が不良債権を処理し切れずに倒産した。あくる98年には、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行も。この金融危機をきっかけに、当時の大銀行は経営基盤の強化を目指して次々と合併した。その結果、現在の3グループからなるメガバンク体制が確立している。合併の効果もなくはなかったが、当然ながら人員は増加した。それが超低金利の恒常化で、急に重荷として顕在化したと言える。

低金利のために本業で稼げなくなったメガバンクは、一時は国債の売買で利益をあげた。しかし日銀の買い入れで、国債の流通量が激減。利ザヤも薄くなって、商売にならない。地方の企業に目を付けたが、これも経営難にあえぐ地方銀行が必死で防戦。コストの安い地銀の捨て身の営業に、勝つことは難しい。

それではと、個人向けのカード・ローンにも力を入れた。最高10%以上の金利を稼げるカード・ローンの残高は、この3月末で5兆6000億円にも達した。しかしカード・ローンは不良債権にもなりやすく、金融庁が規制に乗り出す。銀行側も最近は、やむなく自粛せざるをえなかった。さらに余った資金を日銀に預ければ、その一部にマイナス金利が適用されてしまう。

日銀のマイナス金利政策は、16年2月から始まっている。それから間もなく2年。その副作用が、あらゆる角度から銀行の経営を圧迫し始めた。最近では日銀の内部でも、副作用について心配し始めたと伝えられる。だが物価2%の目標を捨てられない日銀には、どうすることもできない。結果として、メガバンクが従業員を何万人も減らすことになってしまった。その影響は想像以上に大きい。

      ≪22日の日経平均 = 上げ +106.67円≫

      ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ


追い詰められた メガバンク (上)

2017-11-22 08:02:48 | 銀行
◇ 人員・店舗の大幅削減へ = メガバンクが一斉に、経営の大改革に踏み切ることになった。みずほフィナンシャル・グループは①現在7万9000人いる従業員を、26年度末までに6万人に削減する②現在500ある店舗を、24年度末までに400に減らす――と発表して世間を驚かせた。また三菱UFJグループは、現在500ある店舗を今後6年間で半減することを検討中。さらに三井住友グループも、19年度末までに人員を4000人削減する方針だ。

先ごろ発表された4-9月期の決算をみると、これらメガバンクの業績は決して悪くない。たとえば三菱UFJは6269億円、三井住友は4201億円、みずほは3166億円の連結純利益をあげている。だが問題は、その内容。利益の大半は保有株式の売却や貸倒引当金の戻し分、海外投資に関係した為替差益やカード・ローンなどから生み出された。いずれも長期にわたって利益を生むような要因ではない。

銀行の本業は、預金と貸し出しの業務にある。ところが、この本業が急速に悪化した。たとえば、みずほフィナンシャルの4-9月期決算では、この本業の儲けを示す業務純益が1907億円。前年同期に比べて41%も減少している。これでは行き詰まることが目に見えている。メガバンクの経営者はこうした状態に強い危機感を持ち、高コスト体質にメスを入れる決断を下した。

業務純益が悪化した原因は、日銀のマイナス金利政策にある。預金金利はゼロに近づいたが、貸出金利も急降下してしまった。みずほ銀行の4-9月期でみると、預金と貸し出しの金利差はわずか0.81%にまで落ちている。1億円の預金を集めて貸し出しても、81万円しか儲からない。そこで生き残るためには人員と店舗の削減で、とにかくコストを下げるしかないということになった。

                    (続きは明後日)

      ≪21日の日経平均 = 上げ +154.72円≫

      ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ


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