経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

外国人が 日本株を買う理由 (下)

2023-05-31 08:08:09 | 株価
◇ 外国人だけが享受できる円安メリット = 主要国の通貨に対する日本円の相場が、大幅に低下している。米ドルに対しては140円台に下落、昨年11月以来6か月ぶりの安値となった。ことし1月の高値127円に比べると、13円も安い。企業の多くは125-130円を想定しているから、利益は増える。このため市場では輸出関連銘柄が買われ、日経平均も急激に上昇した。

円安が急激に進んだ原因は、日米間の金利差が拡大したこと。アメリカでは物価高が収まらず、FRBが引き締めを続ける公算が大きい。そのうえ政府の債務上限引き上げ問題がこじれ、国債の価格が下落した。その結果、長期金利は3.8%にまで上昇している。一方、日本では日銀総裁が代わっても超緩和政策を継続中。さらに輸入の急増で、ドルの需要が増えた。

円の対ドル相場は、ここ4か月で10%も下落した。外国人投資家にとってみると、同じドル資金で日本株を1割も多く買えるわけだ。しかも日本では、超低金利で資金を調達することもできる。こんなメリットは、そうザラにあるものではない。そのうえ日本だけが、半周遅れのコロナ規制解除で明るい。そこで多くの資金を、東京市場に振り向けた。

こうした環境は、いつまで続くのだろうか。おそらく日本の状況はしばらく変わりそうもないから、要因の変化はアメリカ側に限られるだろう。まず31日の議会で政府債務の問題が解決すれば、雰囲気はかなり変わる。さらにFRBが6月の政策決定会合で金利の据え置きを決めれば、状況は一変するに違いない。したがって外国人による日本株への積極的な投資も、そう長くは続かないかもしれない。

        ≪30日の日経平均 = 上げ +94.62円≫

        ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

外国人が 日本株を買う理由 (上)

2023-05-30 07:24:42 | 株価
◇ 日本人は大幅な売り越しなのに = 東京市場の株価が高い。日経平均は先週3万1000円前後にまで上昇、実に33年ぶりの高さを回復した。先週まで7週間の連騰で、この間の上げ幅は3398円に達している。買っているのは、主として外国人投資家。その半面、国内の投資家はほとんどが売っている。なぜ、こんなことになったのか。いつまで、この状態が続くのか。

とにかく外国人投資家は、よく買った。日本取引所グループの集計によると、5月第3週までの8週間に外国人投資家は計3兆6000億円を買い越した。これは6年ぶりの大きさである。ニューヨークやヨーロッパ市場の株価は、景気後退不安で冴えない。投資家の多くはMMF(債券を中心に運用する投資信託)などに資金を避難させているが、その一部が東京市場に流れ込んだわけだ。

一方、国内投資家は売っている。たとえば信託銀行は、8週間で1兆円の売り越し。またGPIF(年金積立金管理運用独立法人)は、日本株の保有比率を一定にしているため、株価が上昇すると売らざるをえなかった。さらに個人も、8週間で2兆3600億円を売り越している。円安が進むと輸入物価が上がり、それが消費や設備投資の抑制要因になると警戒したようだ。

ニューヨークやヨーロッパ市場は、先行き警戒感が強い。中国市場も不透明感が強い。そんななか日本だけが、半周遅れのコロナ規制解除で明るさを保っている。外国人投資家はその相対的な優位性に着目、日本株を買っていると言えるだろう。さらにもう1つ、外国人だけが享受できる好条件がある。それは1ドル=140円にまで下落した円安の進行である。

                      (続きは明日)

        ≪29日の日経平均 = 上げ +317.23円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週のポイント

2023-05-29 08:01:46 | 株価
◇ 政府債務問題は原則合意した = ダウ平均は先週333ドルの値下がり。終り値はかろうじて3万3000ドルを維持した。物価上昇の勢いはやや鈍化したが、インフレと景気の見通しはいぜんとして不透明。パウエルFRB議長の「利上げの必要性は、これまで想定していたほどではなくなった」という発言にもかかわらず、株価は上がらなかった。それ以上に政府債務上限引き上げ問題がこじれて、株価の重石となってきたからである。

日経平均は先週108円の値上がり。7週間の連騰となったが、終り値は3万1000円を回復できなかった。月曜日まで8日間の連騰だっただけに、利益確定売りが増加している。売買の主役は外国人投資家で、5月第3週までの8週間で4兆2700億円を買い越した。その一部が、先週は高値で売り逃げている。ただ円安基調が続いているから、海外投資家はまた東京市場に帰って来るかもしれない。

バイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長は27日、政府債務上限の引き上げについて原則合意した。法案をまとめて31日の議会で採決される予定。ぎりぎりのところで、政府機関の閉鎖や支払いの停止、国債の格下げなどは回避されそう。ただ議会で承認される確証はまだない。それでも株価は大幅に上がるだろう。

今週は30日に、4月の労働力調査。31日に、4月の鉱工業生産、商業動態統計、住宅着工戸数、5月の消費動向調査。1日に、1-3月期の法人企業統計、5月の新車販売。アメリカでは30日に、5月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。1日に、5月のISM製造業景況指数。2日に、5月の雇用統計。また中国が31日に、5月の製造業と非製造業のPMI。インドが31日に、1-3月期のGDP速報を発表する。

        ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シナリオ通り? 電力7社の値上げ

2023-05-27 07:16:12 | 電気料金
◇ 東京は14%、北陸は42%の引き上げに = 経済産業省は先週19日、大手電力7社の家庭向け電気料金引き上げを認可した。最も小幅な値上げは東京電力の2078円(14%)、最大は沖縄電力の5323円(38%)。いずれも6月使用分から適用される。ただし政府の補助金によって、6-8月分は2800円程度、9月は1400円程度が割引となる。10月以降の補助金については、いまのところ未定。中部・関西・九州の3社は、値上げを申請しなかった。

輸入燃料の高騰などを理由に、電力7社は最初もっと大幅な値上げを申請した。しかし岸田首相の意向もあって、経産省は専門部会による査定を実施、値上げ幅を圧縮した。たとえば東京電力の場合、当初の値上げ率は28%だったが14%に縮小された。経産省は専門部会で「中立的・客観的・専門的な観点から、厳格かつ丁寧に審査した」と強調している。これは電力業界で、顧客情報の不正閲覧やカルテル問題が発覚したことを意識したからだろう。

だが、それにしても値上げ幅を半分に削ったのは異常だ。電力7社は最初、ダメ元で大幅な値上げを申請したのだろうか。あるいは経産省側が査定で削ることを前提に、大幅な値上が案を申請させたのか。実際にそんなことはなかったかもしれないが、こんな憶測まで生まれそうな経産省の動きだった。

大手電力10社の3月期決算では、関西と中部を除く8社が赤字に転落した。24年3月期の予想では、この両社と九州電力の3社だけが黒字を見込んでいる。だから3社は値上げを申請しなかった。ほかの7社と、どこが違うのか。いろいろ相違はあるが、最大の違いは火力に対する依存度だろう。値上げに追われているだけでは、進歩がない。値上げした7社は、もっと根本的な体質改善を計るべきだろう。

         ≪26日の日経平均 = 上げ +115.18円≫

         【今週の日経平均予想 = 2勝3敗】     
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明暗とりどり 企業の業績

2023-05-26 08:02:17 | 利益
◇ 上場企業の利益総額は最高水準を更新 = 上場企業の23年3月期決算発表が、ほぼ終了した。日経新聞の集計によると、1154社の純利益は前年比1.3%の増加。わずかではあるが、史上最高の利益水準を更新した。これが東京市場の株価を押し上げる要因の1つとなっている。ただ内容を見て行くと、今回の決算にはいろいろな形での明暗が存在した。

まず製造業の純利益は、前年比7.8%の減少。世界経済の低迷や半導体の供給不足で、減益となった。一方、非製造業は11.4%の増益。コロナ規制が段階的に解除されたため、利益が回復した。全36業種のうち、増益あるいは黒字化したのは20業種。そのうち非製造業が14業種を占めている。23年3月期は、非製造業と製造業ではっきり明暗が分かれた。

業種別にみると、製造業で増益だったのは機械(20.2%増)と鉄鋼(0.6%増)だけ。減益率が大きかったのは繊維(40.3%減)や非鉄(32.9%減)など。非製造業で増益率が大きかったのは、通信(3倍増)や商社(19.3%増)など。サービス業だけが6.9%の減益となっている。このように製造業でも増益の業種もあれば、非製造業でも減益の業種があった。

24年3月期の予想になると、製造業と非製造業の明暗が逆転する。全産業では3.0%の増益で、さらに最高益の水準を更新する見込み。このうち製造業は3.8%の増益で、水面上に顔を出す。その一方、非製造業は2.2%の増益と業績の伸びは目立って鈍化する。業種別にみると、繊維、精密機械、通信、銀行が大きく回復する。ただ、これは上場企業についての予想。電力料金の値上がりなどで、中小企業の経営は苦しさが続くだろう。大企業との明暗は、解消しそうにない。

        ≪25日の日経平均 = 上げ +118.45円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>