経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

世界同時不況の 足音 (中)

2018-10-31 07:17:59 | 景気
◇ 減速が続く中国経済 = 中国では新車の販売台数が急減し、関係者は頭を抱えている。9月の販売台数は239万台。3か月連続で前年割れとなり、減少率も11.6%と2ケタに拡大した。通年でみても、ことしは前年を下回る可能性が大きい。中国は世界最大の自動車市場、そこに広がってきた暗雲は各国の自動車メーカーやディーラーに衝撃を与えている。

中国経済は、昨年から緩やかな減速を続けている。習政権が地方政府や国有企業の過剰債務を是正するため、インフラ投資を抑制したことが主な原因。つまり計画的な成長の減速だったと言っていい。ところが、ことし春からはこれに米中貿易戦争の悪影響が加わった。このため7-9月期のGDP成長率は6.5%にまで低下している。

政府はこれ以上の減速を食い止めようと、個人と法人に対する大幅減税を実施。金融面でも預金準備率を3回にわたって引き下げ、多額の流動性を市中に放出した。しかし株価は年初来22%も下げ、なお下げ止まらない。その半面でインフレや不動産バブルの崩壊も心配されている。海外企業のなかには、生産拠点をタイやベトナムへ移す動きも出始めた。

米中貿易戦争が終結しない限り、こうした状況は深化する可能性が強い。中国経済が不調に陥れば、東南アジア各国の輸出は減る。それがいつまで続くのか、見通しが立たない。経営者は先行きに不安を感じ、守りの経営に徹するようになる。こうして“世界同時不況”の温床が、徐々に作られて行くことになる。

                                  (続きは明日)

       ≪30日の日経平均 = 上げ +307.49円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

世界同時不況の 足音 (上)

2018-10-30 07:10:20 | 景気
◇ 頼みのアメリカ経済にも注意報 = ニューヨークの株式市場では、いま奇妙な現象が起きている。好決算を発表した企業の株価が、急落してしまうのだ。その好例はアマゾン。7-9月期の決算発表で純利益が前年の11倍になったという驚くべき好成績を発表したが、株価は大幅安となった。こうした事例は枚挙に暇がない。なぜ、こんな現象が起きるのだろうか。

それは投資家の多くが過去の好業績よりも、将来の見通しを最重視するようになったからだ。決算発表に際して、多くの企業経営者が慎重な見通しを公表したことで、投資家が神経質になってしまった。そして経営者が慎重になったのは、アメリカ経済の将来に不安を持ち始めたからに他ならない。

アメリカ経済の現状は、決して悪くはない。7-9月期の実質GDP成長率は3.5%で、なお高い水準を維持している。9月の失業率は3.7%で、49年ぶりの低さだ。景気の拡大期間は11月で113か月目に入る。だが、ここへきて高金利と米中貿易戦争の悪影響が少しずつ表面化してきたことも確か。経営者は不況の足音に、耳を傾けるようになった。

高金利で住宅や自動車のローン金利が上昇、これが中古住宅や新車の販売に響き始めた。また貿易戦争の結果として、物価が全般的に上がってきている。鉄鋼や木材などの原材料に加えて、輸送費などの上昇も目立っている。これが企業のコストを引き上げ、個人消費にブレーキをかけることは避けられそうにない。さらに来年になると、トランプ減税の効果が消滅する。長く続いた景気と株価の上昇局面も、間もなく終わりを迎えるのでは。こんな警戒論が、急速に高まってきた。

                              (続きは明日)

       ≪29日の日経平均 = 下げ -34.80円≫

       ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

今週のポイント

2018-10-29 07:24:39 | 株価
◇ 下降局面に入った世界の株価 = 世界中の株価が一斉に下げ始めた。ダウ平均は先週756ドルの値下がり。終り値は年初の水準を割り込んでいる。日経平均は先週1347円の大幅安。一時は2万1000円を下回る場面もあった。ヨーロッパ各国、中国、その他の新興諸国でも株価は値下がりし、世界中を見渡しても株価が年初より高いところは見当たらない。要するに、世界同時株安の状態に陥った。

アメリカやヨーロッパ、日本の景気動向は、そんなに悪くない。企業は相変わらず、記録的な高収益をあげている。にもかかわらず株価が下げ始めたのは、世界経済の将来に対する警戒感が膨れてきたからだ。これまで現在の景気と企業業績を重視する強気派と、将来を警戒する弱気派のせめぎ合いが続いてきた。それがここへきて、弱気派の勢いが強まったとも言えるだろう。

リーマン破綻のようなショックではない。したがって好調な企業業績の発表を手掛かりに、株価は一時的に反発する可能性も大きい。しかし世界経済の悪化という外部環境が、じわじわと利いてくる。このプレッシャーによって、株価は上下しながら下降して行くことになりそうだ。その道程は、今週から少しづつ見えてくる。

今週は29日に、9月の商業動態統計。30日に、9月の労働力調査。31日に、9月の鉱工業生産と住宅着工戸数、10月の消費動向調査。1日に、10月の新車販売台数。アメリカでは30日に、10月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。1日に、10月のISM製造業景況指数。2日に、10月の雇用統計と9月の貿易統計。またEUが30日に、7-9月期のGDP速報。中国が31日に、10月の製造業と非製造業のPMIを発表する。

       ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-10-28 07:35:00 | SF
第6章 ニッポン : 2070年代

≪56≫ 大活躍 = 名古屋の銀行に3人組の強盗が拳銃を持って押し入り、人質を取って立てこもった。ところが、この銀行のフロアには、マヤ工業製のガードマン型ロボットが配置されていた。強盗が「床に伏せろ」と威嚇しても、ロボットは言うことをきかない。そこで犯人の1人がロボットに向けて拳銃を発射。その瞬間、ロボットの頭から光線が出ると、強盗団はみな意識を失って倒れてしまった。

オランダのアムステルダムでは、夜間に有名な宝石店のガラスが破られ、軽機関銃を持った男たちが侵入した。だが、ここでも店内に配置されていたロボットが、光線で男たちを眠らせてしまう。ロボットは軽機関銃の乱射もはね返したと、現地の新聞は大々的に報じていた。

2070年代の初め、世界中の国が治安の悪化に悩まされていた。長く続いた不況のために、人々の心が荒れてしまったためだろう。日本も例外ではなかった。しかし高齢化の進展で、若い警察官は集まらない。財政も苦しいから、警察力の増強もままならない。

ある晩、マーヤがこんなことを尋ねてきた。「貴方はなぜ、ガードマン型と農水産型のロボットしか造らないの。ダーストン国のように、医療型や教育型のロボットも造れるのに」

――いまの世相をみていると、人々がいちばん求めているのは治安の回復だと思うんだ。それで、まずガードマン型の普及に力を入れる。銀行や店舗に配置するだけでなく、街のなかを巡回する“お巡りさん”ロボットも増やせば、犯罪だけでなく、事故や火災を早く見つけて通報できるだろう。

「海外ではマヤ製ロボットの内臓プログラムをコピーして、同じようなガードマン型を造り始めたらしいわ。特許を取ってないから、仕方がないけれど」

――ああ、ぼくらの生産台数には限りがあるからね。海外でも独自に造れば、それだけ治安の回復が早くなるだろう。ただ海外の製品には、ダーストニウム合金が使えない。だから機関銃や手りゅう弾でやられれば、ロボットの方が負けてしまう。結局、日本製の方が品質がいいことに、いずれ世界中が気付くだろうね。

「素晴らしい。でも貴方も相当の悪になったみたい」  こう言って、マーヤはぼくの腕のなかに飛び込んできた。

                            (続きは来週日曜日)  

軽減税率の 複雑怪異

2018-10-27 07:42:59 | 消費税
◇ 外食は贅沢なのか? = 消費税が来年10月、現行の8%から10%に引き上げられる。その際、政府は軽減税率制度を導入する方針だ。軽減税率というのは、生活必需品である食品と飲料については、税率を8%のままに据え置く仕組み。庶民にとっては、嬉しい政策である。ところが酒類と外食は“贅沢”だから、例外とすることになった。これで話はいっぺんに解りにくくなる。いったい、外食って何なんだろう。

国税庁によると、外食とは「飲食設備のある場所で、飲食料品を飲食させるサービスの提供」である。なるほどレストランや寿司屋やソバ屋が、これに該当することは理解できる。だが社員食堂や屋台のおでん屋も、この定義に当てはまるから消費税は10%になるという。どうして社員食堂や屋台のおでんやが、贅沢なのだろう。

コンビニには、店内にイートイン・スペースを設けているところが多い。弁当を買って持って帰れば税率は8%だが、イートインで食べれば10%になってしまう。お客が8%の税率で弁当を買い店内で食べたら、店員は「あと2%分の税金を払ってください」と請求するのだろうか。店の外にあるベンチで食べたら、店内で立ち食いしたら。疑問は尽きない。

寿司やソバを店内で食べたら10%、出前を取ったら8%。列車のなかで食堂車に行けば10%だが、座席でワゴン販売を買えば8%になる。ところが座席にメニューが置いてあり、それを注文すると10%になるというからご用心。たかが2%の差だと言うなかれ。積み重なれば、年に何万円にもなるかもしれない。

       ≪26日の日経平均 = 下げ -84.13円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】  

Zenback

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