経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

「物価高を上回る所得増」は イバラの道

2024-02-01 07:19:30 | 政治
◇ 岸田首相の公約は達成できるのか = 岸田首相は30日の施政方針演説で「ことし、物価高を上回る所得を実現して行きます」と公約した。春闘での賃上げ、6月に予定する所得税・住民税の減税、それに物価の沈静に賭けた約束だと言える。また岸田首相は「賃金の上がることが当たり前だという前向きな意識を、社会全体に定着させてまいります」とも力説した。たいへん結構な政治目標である。だが、その実現はかなり難しいことも確かなようだ。

昨年の春闘では、平均3.6%の賃上げが実現した。岸田首相は「ことしはそれ以上の賃上げ」を強く期待しており、民間の予測も3.85%という高い数字を出している。また政府は6月に、1世帯当たり4万円の所得税・住民税の減税を実施する方針。さらに物価も最近は沈静化の動きをみせている。したがって、首相の公約は達成されそうにみえないこともない。

だが、その道は険しい。まず春闘の数字は、主として大企業の結果しか表していない。中小企業や零細企業で働く約7割の雇用者が、もっと低い賃上げ率になることは避けられない。また非正規雇用者を多く抱えるサービス業は、賃上げ分を価格に転嫁しないとやって行かれない。すると物価が押し上げられてしまう。

さらに岸田首相は、医療や福祉の分野で働く人の公的賃上げについても触れたが、これらの雇用者に対する賃上げ率は明らかに物価上昇率を下回っている。それに4000万人も受給している年金は、実質減少となった。岸田首相の任期は9月で切れるが、そのときには「年内に物価高を上回る所得」が実現できそうかどうか、見通しが付くだろう。

        ≪31日の日経平均 = 上げ +220.85円≫

        ≪1日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
 
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崖っぷちの 岸田内閣 : パー券不正処理

2023-12-12 07:32:17 | 政治
◇ リクルート事件と重なる政権崩壊の構図 = 自民党5派閥によるパーティー券収入の不正処理事件。岸田首相は自らが派閥を離脱、また派閥によるパーティーの開催を禁止するなど、防戦に必死となっている。しかし1000万円以上の裏金を作ったといわれる松野官房長官と高木国会対策委員長の更迭は避けられない情勢。政治資金規正法の違反者は10人以上にのぼるとみられ、自民党内では国会終了後に検察が誰に対して事情聴取を行うかに最大の関心を寄せている。

この今回のパー券事件は、1988年に起きたリクルート事件と酷似している。リクルート事件は当時の江副社長が上場前の未公開株を、政治家や財界人などにばら撒いた贈収賄事件。宮沢蔵相ら数人の閣僚が辞任、竹下内閣の支持率は20%を割り込んだ。結局、竹下首相は89年4月に退陣、そのあと7月の参院選で自民党は大敗。野党に政権を奪われることになる。

ただ当時の検察は、政治家については藤波官房長官ともう1人の議員を起訴しただけ。すべてを立件すれば大混乱に陥るし、2人でも有罪に持ち込めば社会的制裁は達成されると判断したようだ。しかし今回も検察が、同様の判断を下すかどうかは判らない。裏金が1000万円でも10万円でも、規正法に違反した犯罪であることに変わりはないからだ。

岸田首相は「自民党が一致結束して対応しなければならない重要な課題」と述べている。ところが、この発言はリクルート事件に際して竹下首相が発した文言とそっくり。その時点で竹下内閣の支持率は19%にまで落ちている。岸田内閣の支持率は、どうなるのだろうか。とにかく、いまは検察の動きと、それが政局に与える影響に注目が集中している状態だ。

        ≪12日の日経平均 = 上げ +51.90円≫

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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所信表明演説は 落第点!

2023-10-25 07:04:53 | 政治
◇ 国民の知りたい点をすっぽかした = 「経済、経済、経済」と連呼した岸田首相の所信表明演説。経済を‟一丁目一番地”にしようという意欲は、よく伝わった。だが結論から言うと、残念ながら落第点を付けるしかない。というのも、その結果として日本経済はどんな姿になるのか。国民の生活は、どうなるのか。みんなが知りたいと考えている点に全く触れなかったからである。だから演説は空回り、岸田首相の独りよがりになってしまった。

経済の部分は、①供給力の強化②国民への還元--の2つに分かれる。このうち供給力の強化では「低物価・低賃金・低成長だったコストカット型経済を、持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済に変革する」と表明。このため賃上げ減税や投資減税を行う。またAI、自動運転、宇宙などの技術開発を支援して行くと述べた。一方、国民への還元は減税とガソリン・電気・ガスへの補助金を継続することが中核となっている。

だが国民が本当に知りたいのは、その結果どうなるかということ。たとえば平均2%の実質成長率を持続できるようになるのか。常に賃上げ率が物価上昇率を上回るようになるのか。そして、かつて岸田首相が唱えていた所得倍増論は、消えてしまったのか・・・。こうした疑問に答えていないから、あの演説を聞いても日本経済の将来像は全く浮かんでこない。

さらに財源の問題。防衛費や少子化対策費には、巨額の財源が必要だ。しかし財源の話は先送りのまま。いま減税されても、1-2年後には大幅な増税が待ち構えているのではないか。国民は不安を感じているが、所信表明演説では何も触れなかった。こうした国民の将来に対する不安を払拭することこそが、経済の活性化に直結する。岸田首相の演説には、この観点が欠けていた。

        ≪24日の日経平均 = 上げ +62.80円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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‟先”が読めませんね! 岸田さん

2023-10-24 07:10:34 | 政治
◇ 期限付き減税の危うさ = 岸田首相は20日、自民・公明党の幹部に対して「所得税の期限付き減税と低所得者への給付金支給」を検討するよう指示した。これを受けて政府・与党は、政策懇談会を26日に開いて議論を始める。税制改正法案を通常国会に提出、年度内の成立を図る方針だ。減税については与党内からも疑問の声が出ているが、岸田首相は所信表明演説でも明言。強行突破する姿勢を見せている。

減税の規模はまだ不明だが、5-10兆円程度。すべての納税者に一定の金額を還付する定額減税になるとみられる。期間は自民党の宮沢税調会長が述べたように、1年間となりそうだ。また所得税を納めていない低所得者に対しては、数万円の給付金を一律に配布する。所得税減税は実現すれば、小渕内閣が1999年に実施した定率減税以来のこと。ただ今回は、岸田首相がなぜ突然の形で持ち出したのか。疑問が続出している。

ふつう所得税減税は、景気の浮揚策として実施される。しかし今回は、物価高対策が目的。それなら年収が高い人にまで減税する必要があるのか。大半は貯蓄に回るだけだろう。インフレを助長する。国債の格下げにつながる。いや、選挙目当ての単なるバラマキだ。たしかに岸田首相は、衆院長崎4区と参院徳島・高知の補欠選挙の直前に、この減税政策を打ち出している。

たしかに減税は、選挙の票集めには有効かもしれない。年内にも可能性がある総選挙で「減税をします」と、叫びたいのかもしれない。しかし1年後のことを考えたら、どうなるか。来年秋には自民党総裁の任期が切れる。そのとき減税の期限切れが迫れば、それは増税になってしまう。いま仮に内閣の支持率が5%上がったとしても、1年後には10%下がりかねない。岸田さんは、そこまで‟先”を読んでいますか。

        ≪23日の日経平均 = 下げ -259.81円≫

        ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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バラマキ政策の 限界

2023-09-30 07:31:57 | 政治
◇ それでも内閣の支持率は上がらなくなった = 岸田内閣は10月末までに、新しい経済対策を作成することになった。総選挙に備えて、なんとか国民の支持率を上げようという意図が見え隠れしている。だが、この対策で内閣の支持率をどのくらい上げられるだろうか。おそらくは岸田首相が期待するほど、上がらないのではないか。その理由は国民がこの種のバラマキに慣れてしまい、あまり評価しなくなった。経済学でいう収穫逓減の法則が働き始めているためだ。

岸田首相は対策の大枠として、5つの柱を掲げた。そのトップが物価高対策。ガソリンや電気・ガス代の高騰を抑えるため、政府が補助金を支給する。当面の痛みを和らげることは出来るが、コトの本質はなにも改善しない。だからバラマキと評される。しかし消費者にとっては有難いことだから、内閣の支持率は上がる。だが何回もバラマキを実施したため、消費者は慣れてしまい、「もっと物価が下がってもいいのでは」とさえ思うようになってきている。

またガソリンを使わない人、補助金が出ないプロパンガスの利用者などからは、不公平だという不満も高まってくる。しかし財源の問題もあって、政府としてはこれ以上バラマキを広げられない。そこで今回は半導体や蓄電池などに対する投資減税なども、対策に追加した。これは歓迎すべきことだが、その具体策はまだ不明。

かつての自民党は、こうした成長投資を重視してきた。世帯への現金給付や補助金といった政策は、どちらかと言うと野党の専売特許。それが最近は自民党の常套手段に。このため野党は主張すべき政策を失い、元気がない。内閣に対する支持率が落ちても、自民党への支持率があまり変わらない原因だと言ったら、言い過ぎだろうか。

        ≪29日の日経平均 = 下げ -14.90円≫

        【今週の日経平均予想 = 1勝4敗】     
  
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